REPORT●佐野弘宗(SANO Hiromune)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
※本稿は2017年7月発売の「新型VV350キャラバンのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様が現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。
失ったシェアの奪還を狙うNV350キャラバンの本気
日産NV350キャラバン プレミアムGX
■2500ディーゼル 2WD
5速AT ロングボディ・標準ルーフ
直列4気筒ディーゼルターボ/2488㏄
最高出力:129㎰/3200rpm
最大トルク:36.6㎏m/1400-2000rpm
JC08モード燃費:12.2㎞/ℓ
最小回転半径:5.2m
車両本体価格:350万4600円
■2000ガソリン 2WD
5速AT ロングボディ・標準ルーフ
直列4気筒/1998㏄
最高出力:130㎰/5620rpm
最大トルク:18.1㎏m/4400rpm
JC08モード燃費:9.8㎞/ℓ
最小回転半径:5.2m
車両本体価格:290万9520円
徹底したハイエース対策でキャラバンが巻き返し
トヨタ・ハイエースバン スーパーGL
■3000ディーゼル 2WD
4速AT ロングバン・標準ルーフ
直列4気筒ディーゼルターボ/2982㏄
最高出力:144㎰/3400rpm
最大トルク:30.6㎏m/1200-3200rpm
JC08モード燃費:9.8㎞/ℓ
最小回転半径:5.0m
車両本体価格:338万914円
ドライビングプレジャーと「楽しさ」はNV350優位
エンジンの直上に座らせられるキャブオーバーだから、NV350もハイエースも前席は決して静かではない。まして、今回のようにディーゼルとなればなおさらだ。
どちらのディーゼルも4500rpm付近のリミットまでスムーズに回ることは回るが、ハイエースの3.0ℓは高回転域では少しばかり苦しげで耳ざわりな音質なのが欠点といえるだろう。対して、NV350はスペックから想像されるとおり、日常域でのピックアップは総じてハイエースより鋭く、体感的な動力性能ではよりパンチのある感触なのがうれしい。5速ATの健気な働きも含めて、ドライビングプレジャーは僅差だがNV350に軍配である。
ただ、日産の2.5ℓはリミット付近まで回しても音質はあまり不快ではないのはいいが、ディーゼル特有の振動は全域でハイエースより強め。計測上の音量はともかく、日常的な低回転で使うかぎり、ディーゼルならハイエースのほうが静かでスムーズと感じる人が多いだろう。
今回はあくまで乗用ドライバーズカー目線で、空荷状態に近い状態で試乗したが、そうしたシーンでの乗り心地や操縦安定性でも、ハイエースが明確に負けていないのは2年前のマイナーチェンジ効果だろう。整備された高速道での上下動の少ないフラットさは、設計が新しいNV350をしのぐ面もある。
それでも、サスペンションがより滑らかで積極的に働いている感触を如実に伝えてくるのはNV350。上屋の動きがハイエースより大きくなることもあるが、それもダンピングがきっちり効いたもので、荷重移動による自然でリニアな挙動だ。その結果として、タイヤの接地感がよりリアルに把握できるのがうれしい。
また、ステアリングホイールはNV350のほうが約20㎜小さく、ステアリングギヤボックスもNV350のほうが明確にクイックな設定である。独特のコツを体得すればハイエースの優しくスローな身のこなしもそれなりに快適だが、乗用車に慣れきった身体により素早くシンクロして、小気味よく取り回せるのはやはりNV350である。
エンジンが重いディーゼルでは、両車ともアンダーステア傾向が明確に強い。さらにドライバーがフロントオーバーハングに座っているので、アンダーステアに陥ると運転席ごと外に膨らんでいく。そんなキャブオーバーではタイヤのご機嫌が把握しやすいNV350の接地感は強い味方となる。路面を問わず、より安心して走れるのはNV350だろう。
たった2台がこれほど完全なガップリ四つで組みあって対峙するクラスはほかにない。まして、これらはあくまで商用車。「荷物を積む」とい