PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
ホンダ・モンキーの歴史は古く、実に1960年代まで遡ることができる。基本が変わらないまま50年も作り続けられたのは、70年代からカスタムベースとしての人気が高まったことも大きな理由。ノーマルでも可愛らしさに溢れるモンキーだが、カスタムすることでさらなる可愛らしさを追求したり、イカついスタイルに変身させることも可能だ。
カスタム人気を反映して、今でも数多くのメーカーから無数のカスタム&チューニングパーツが発売されている。自分好みのパーツを選ぶことができるし、単体で買えば考える以上に安価。しかも買ったパーツをDIYで取り付けれることだって可能だから、安く済ませることもできる。これほど楽しく自由な趣味なんて、そうそうないと断言できる。それがモンキー・カスタムの世界だ。
このモンキーを製作したオーナーの真柄さんも、お金をかけずに自分でできることはDIYで済ませる人だ。実は中古であらかじめ電装系を6V→12V化&エンジンがチューニングされた4Lモンキーを購入。これにコツコツと自分でカスタムを進めたので、車体込みで50万円もかかっていないというから驚きだ!
注目なのはカワサキZ2のような形状の燃料タンクとサイドカバー。タンクをよく見ればキャップが一段下がっているので、純正タンクの上にカバーを被せたのだと気づく。このタンクカバーはエイプ用に販売されている市販品。もちろんエイプのタンクに合わせた形状なので、そのままでは付かない。内部形状を加工することでモンキーのタンクでも使えるようにしているのだ。
しかもこのタンクカバーはサイドカバーとセットになった中古品。中古パーツショップに飾ってあったものを購入している。
もともとはCB400Fourのようなスタイルにしようと、スズキGSタイプのウインカーを買ったそうだが、中古タンク&サイドカバーが手に入ったことで方向転換。カワサキZ2スタイルを目指してカスタムが進んだ。シートはキタコ製が付いていたので、スチールベースを自分で折り曲げ、リヤを持ち上げている。
加工したシートの後ろに付くのは現行カワサキZ RS純正テールカウル。幅がピッタリで長さを短く加工することで装着可能になった。しかもこのパーツは懇意にしている東京・三鷹のカスタムショップ、ミッドナイトの金子代表が個人所有する車両から外したものをタダで譲ってもらったという。
テールカウル内にアルミ板から自作したステーを取り付け、ポッシュ製テールランプを装着。黄色いコイルのリヤショックは中国製で、別体タンクはダミー。組み合わせたスイングアームは16cmロング仕様の中古品でメーカー不明。それでも、いかにもチューニングされたZのような風情を手に入れている。
肝心のエンジンはどうだろう。モンキーを中古購入した時点でチューニングされていたが、そのままでは不安なので分解してみた。するとクランクシャフトを変更してボアアップシリンダーが装着されている。ヘッドはポート加工までされていて、106ccはあるタダモノではない雰囲気。そこでヘッドをオーバーホールして組み直し、φ20だったキャブレターをミクニ製VM26に変更。これで1万2000rpmまで回るパワフルなエンジンに仕上がった。
また、マフラーは近年復刻販売されていたカーカーのモンキー用。吸排気パーツと前後ホイール、そしてステップだけは新品パーツを奢った。そのステップはGクラフト製バックステップ。カッチリしたタッチで操作できるので、チューニングエンジンには最適だ。
パワフルなエンジンに合わせてフロントのスプロケットを17Tに変更。普通のモンキーエンジンでは16Tだって入らないのだが、購入時点でケースが削られていたからできたそうだ。
エンジンに装着されているカバー類は、純正をオーナー自ら加工して文字入りにしている。カバーにステッカーで文字を載せ、間にシールを挟んで立体的にしているのだ。意外に熱を持たないので、これで十分なのだという。
1万2000rpmまでパワフルに回るエンジンだから、タイヤ&ホイールは太いサイズが必須。前後ともSP武川製のホイールはフロント3.5Jに110/80タイヤを、リヤ4Jに120/70タイヤを組み合わせている。またショート加工したフロントフォークにはSP武川製ダンパーを忍ばせ、リヤをロング・スイングアームにしたことで、トップエンドまで回してもブレない車体になっている。
このスタイルと刺激的な走りが、車体込みで50万円以下でできると聞けば、挑戦してみたいと思う人も多いだろう。オーナーは旋盤やフライスなどはなく、電動工具とハンドツールを駆使して組み上げている。やる気になればできないことない。これがモンキーをカスタムする醍醐味なのである。