ノーベル賞受賞の報せでますます着目のリチウムイオンバッテリー(LIB)。これまでの二次電池に比べてエネルギー密度が優れているのが車載用バッテリーとして選択される理由のひとつである。そのLIBのエネルギー密度をさらに高めた開発品がトヨタ紡織のブースに展示されている。

 開発品のLIB出力は他社比較で最大8.3倍(他社優秀品比較では2.2倍)、容量も同等以上を実現。さらに充放電回数3万回以上をクリアする長寿命性能を誇り、低発熱のためバッテリーパックとしたときにも空冷で性能を発揮できる。なんとも隙のない優等生ぶりだが、なぜ実現できたのかと問うと、意外な答えが返ってきた。セパレータが細かいからである。




 こちらはLIBの性能を左右する負極に何か新技術が盛り込まれたから、なんて想像をしていたので拍子抜けしたが、よくよく考えてみるとここはトヨタ紡織ブース、超微細繊維の生成を何より得意とする会社である。




 LIBの充放電の仕組みはほかに譲るが、正負極間でイオンの授受がスムースになされれば電池としての性能向上が見込める。「これまでのセパレータは繊維径が大きすぎたんです」という説明からもわかるように、イオンが通りたいけど柱(大径繊維)に阻まれて通れないという状況から、細い繊維径でスルスル移動できるようになれば、LIBも持てる力を存分に発揮できるというわけだ。化学の力に頼っていると思っていたLIBの世界に、微細加工技術で貢献するところが非常にユニークであり、心強い。




 トヨタ紡織としては、出力密度に優れる性状を存分に活かし、高出力を誇る300kW級のハイブリッド車への適用を企画しているという。小さくて軽くて強いLIBが日本から登場する日を心から楽しみに待ちたい。

302kWとしたときの、従来品サイズとの比較。LIBパックの敷いてある黒いアクリルが、これまでの大きさという。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタ紡織:微細繊維技術が電池を高性能化させる【東京モーターショー2019】