REPORT●塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)
PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)/塚田勝弘(TSUKADA Katsuhiro)
まずプレスデー初日に伺った解説員の方はおそらく中華系の方。中国からのプレスやお客さんにも対応する必要があるのだろう。もちろん筆者には流暢な日本語で答えてくれた。
なお、東京モーターショーに限らず、こうした解説員は頭の中に回答(想定問答集)が叩き込まれているはずで、プレスリリースやプレスカンファレンスなどの広報発表を超えるような内容については、お答えいただけないか(答えようがない)、あるいはオフレコという条件付きの場合もある。その辺りの境界線は曖昧でもあるのだが、今回のレポートもアナウンスされている範囲に収まった内容になるはず。ただし解説員の方でも専門分野はあるはずで、つい根掘り葉掘り聞きたくなってしまうのは毎度のことだ。
Q「マイナーチェンジを受けたフリードと同じような顔つきですね? これが今後のホンダ顔になるのですか」
A「そうしたルールはないということなので、車種(コンパクトカー)に相応しい親しみやすい顔としています」
Q「プラットフォームは新規開発ですか?」
A「そこは今はお答えできません。今回は目に見える範囲のお話ということで」
Q「フロントマスクだけでなく、リヤコンビランプも特徴的のように思えます」
A「今まで縦基調でしたが、フィットはキャビンが大きいため、安心感を出すため重心(見た目の)をグッと下げています。ベルトラインを下げて、リヤコンビ内のU字アクセントも重心を下げるための配置にしています。また、モノフォルムは前にAピラーがあるとどうしても視界に入ってくるため、視界を確保するためにロードパスを手前(乗員側)に持ってきて、前は樹脂だけで支え、極細と呼んでいるAピラーの細さにしています。見た目は量産車そのものです。今まではカッコいいいスケッチからそれに向けて市販車を作るというアプローチでしたが、今回はよりユーザーの心地良さを重視して、ひとつひとつ地道にデザインされています」
Q「フロントスクリーンが大きくて、かなり傾斜しているように見えます。フューエルリッドの形状もかなり個性的ですね」
A「そうですね。機能重視(視界)でありながらもデザインとの両立が図られています。またベルトラインが下がったため、センタータンクの高さがある程度必要で、こうした特徴的なラインにして、ベクトルがすべて台形になるようにしています。リヤのカットラインも外に行くようにしていて、長尺物が積載しやすいようにデザインされています。また、面も360度すべてつながっているような仕上がりになっていて、例えばお子さまと一緒に洗車しても指が引っかかって指が痛くならないような(笑)、チリ合わせや面の構成になっています」
続いて話を伺ったのは日本人の解説員の方で、主にBASIC(ベーシック)、HOME(ホーム)、NESS(ネス)、CROSSTAR(クロスター)、LUXE(リュクス)という5つのバリエーション展開について質問してみた。
Q「フリードと同様に、CROSSTAR(クロスター)が設定されましたが、こちらも5ナンバー枠に収まるのですか?」
A「いえ、ノーマル仕様が5ナンバー枠ぎりぎりの全幅ですので、フィット(クロスター)の方は3ナンバーサイズになりますね。」
Q「5ナンバーサイズに抑えたフリード・クロスターとは考え方が違うわけですね」
A「そうですね。今回はタイヤ径を一段大きいサイズにしてサスペンションで30mmほど車高(ロードクリアランス)が高まっています。こちらは中間グレードのようなイメージになると思います。とってつけたようなSUVではなく、より本格的なSUVになっています。グリルを専用につけることで、ほかのバリエーションとは異なる雰囲気になっています」
Q「クラスは少し違いますが、SUBARU XVのようなイメージでしょうか」
A「クロスターはそうですね、イメージ的にはSUBARUさんのXVに近いところもあるかもしれません」
Q「バリエーションの位置づけは?」
A「最上級は本革仕様のリュクスで、中心的なホームがあり、その脇にネスとクロスターが同じような位置づけになるはずです」
Q「新型もセンタータンク・レイアウトを採用されています」
A「従来からのコンセプトがご好評で、初代以来、Bセグメントの中でも後席が広くて、これだけゆったりと座れるというはありませんですし、後席のチップアップ&ダイブダウンも踏襲しています。その分、背が高くなってしまうのですが、今回は(そう見えないように)デザインも作り込んでいます」
Q「デザインはかなり大きく変わったような気がしますが」
A「どちらかというと、原点に戻ったといえます。最初の企画の段階から、フィットは生活にフィットするクルマだよね、という想いがありましたから。お客様の声を聞いてもそうで、心地よい、日常を豊かにする、贅沢ではないけれど、そんなクルマを目指しました。外観は、シンプルのように見えますが、たとえば面の陰影を強調したり、同じキャラクターラインでも前に行くほどラインを鋭く(後ろに行くほど柔らかく)したりしてアクセントを与えています。斜め前からテールランプを見ると、一瞬丸目に見えるのですが、横基調になっています。外板パネルはもちろん1枚ずつ離れていますが、ひとつの造形として陰影がでるように、つながり感が出るようにこだわっています。ベースがしっかりしているため、クロスターはボンネットとフェンダーは流用しながらも、フロントセクションを変えるだけで全然違った雰囲気になっています。ヘッドライトのデザインは同じなのですが、グリルをつけることでテイストを変えています」
Q「インテリアのこだわりは?」
A「とくに、ホーム・グレードが今回の中心です。一番の提案仕様です。シートの新開発に加えて、人が触れるところにソフトパッドを配しています。無駄にソフトパッドを使うのではなく、肘掛け、シフターの横、アッパーボックスのあたりにソフトパッドを配して、ルーミーで上質な空間に仕立てています」
筆者がドライビングポジションを決めた後席には、Cセグメントに匹敵するようなフットスペース、そしてクラスを超えた頭上空間が残されていて、前席座面下への足入れ性も抜群。ラゲッジスペースは開口高が低く、荷室高が高いというホンダらしい設計で、四代目フィットのパッケージ面も期待を裏切らない仕上がりになっているようだ。