PHOTO●星野耕作(HOSHINO Kosaku)
誰もが予想しなかったニューモデルが、東京モーターショー2019でワールドプレミアとして発表された。H2をネイキッドマシンにした「カワサキZ H2」が発表されたからだ。
カワサキではZシリーズをスーパーネイキッドと定義している。それは1972年に発売したZ1、カワサキ900スーパー4に端を発する大排気量Zが代々歩んできたストリート最速マシンという歴史に裏付けられている。現在のラインナップではZ1000がそれに該当するわけで、2018年に発売されて話題をさらったZ900RSはどちらかといえば懐古的テイストモデル。かつての栄光はNinja1000やZX-10RR系が受け継ぎ、2015年からはNinja H2RとロードモデルであるH2が君臨した。
だが、カワサキにとって「Z」という名前は特別な存在で、ストリート最速のZを求めるユーザーの声も根強い。とはいえ、Zの名を冠したネイキッドに、スーパーチャージャーを搭載してしまうなんて、誰もが想像すらしなかったに違いない。
ではカワサキZ H2とはどんなマシンなのか?
簡単にスペックを紹介しよう。
全長×全幅×全高:2,085mm×770mm×1,130mm
車両重量:239kg
シート高:830mm
エンジン:水冷並列4気筒DOHC4バルブ+スーパーチャージャー
排気量:998cm3
内径×行程:76.0mm×55.0mm
最高出力:147.1kW(200ps)/11,000rpm
最大トルク:137.0N・m(14.0kgf・m)/8,500rpm
この数値は昨年に受注が開始された「ニンジャH2カーボン」と比較すると1kg重い車体に31psと0.4kgf・mずつパワー・トルクが低いことになる。スーパースポーツとしての性能では一歩譲るというのが実情。だが、H2カーボンと決定的に異なる点がある。それは「Z」としてストリート性能を重視したセッティングになっているということだ。
具体的にはフレームを見直している。H2にはハイテンスチール製トレリスフレームが採用されているが、これを新規に開発し直している。また控えめな出力とされたエンジンも低中速回転域におけるスムーズな加速感を実現するトルク特性にセッティングされ、超高回転域でのパワーより日常域での使用に主眼を置いている。つまり、最高速を競うようなシーンより、どちらかというと高速道路を含む公道でのパフォーマンスに振ったエンジン・シャーシ性能に特化しているのだ。
「Z」という車名に特別な響きを感じるのは、何も往年のファンだけではない。カワサキが求めてきたライダーとマシンの一体感、そして圧倒的なパフォーマンスを備えるストリートマシンが「Z」。その神話に新たな歴史が始まることを物語るマシンの登場なのである。
発売時期は2020年初夏。価格はまだ発表こそされていないが、同じスーパーチャージャー搭載車で現在販売中のNinja H2 SX SE(2,442,000円)ということを考えると……。