ディアベルの登場には誰もが驚かされた。初代デビューは2010年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)。ドゥカティが投入した新ジャンルモデルの存在感はとても衝撃的だったからだ。そして今年、第二世代へとフルモデルチェンジ。6月に千葉みなとで開催された発表イベントで披露され、その進化の大きさは見る者を改めて驚嘆させた。




REPORT⚫️近田 茂(CHIKATA Shigeru)


PHOTO⚫️山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

サンドストーン・グレイ(フレームはチャコール・ブラック)

◼️ドゥカティ・ディアベル 1260S.......2,755,000円

ダーク・ステルス/スリリング・ブラック(フレームはドゥカティ・レッド)
ディアベル 1260.......2,365,000円(サンドストーン・グレイ)


開発当初、いくつものデザインスケッチが描かれる。

最終段階に近いデザイン画。
デザインの検討は2次元から3次元へ。CADやCGも活用される。写真は実際に作られた1分の1クレイモデル。


 のっけから誤解を恐れずに書いてしまうとこれはもう「デザイン先にありき」で開発されたモデル。贅を極める造りにこだわった上質な商品に仕上げられているのが印象深い。あえて国産車で例えるのならヤマハ・V-MAXのような存在で、見るからに圧倒されるド迫力なスタイリングと高級感漂う別格の存在感は只者ではないのである。


 


 パワークルーザーと呼ばれるジャンルでリヤには240/45ZR-17 の極太タイヤを装着。マッシブかつ独創的なスタイルから当初社内ではメガモンスターと呼ばれていたと言う。スポーツネイキッド、スーパーバイク、そしてクルーザー。それら3つのデザインを融合したたデザインスケッチを忠実に表現することでディアベルが誕生した。


 


 今回の新型は、そんな初代のイメージを踏襲しながらもよりダイナミックで洗練、ハイテク投入も併せて大きく進化させている。標準モデルの1260と上級の1260S。カラーバリエーションも併せると3機種をリリース。そのデザインセンスは改めて評判を呼び、2019年3月にイタリアで「レッド・ドット・デザイン賞」を受賞。ミラノ・デザインウィークのイベントに出展される等、大きな注目を集めた。なにしろ約3年ものデザインプロセスを経て完成されたこだわりの逸品。見る者を圧倒するフォルムのみならず細部に至る仕上げの良い上質さも魅力的である。


 


 スチールパイプ製トレリス・フレームにはテスタストレッタDVT の水冷Lツイン1262ccエンジンを搭載。デスモドロミック可変タイミングの4バルブデュアルスパーク式。13.0対1というハイコンプレッションを得て159psもの高出力を誇る。


 ブレーキもサスペンションも有名ブランドの高級ユニットが奢られている。そして最新ハイテクを象徴するボッシュ製6軸慣性測定ユニットを搭載。同コーナリングABS EVOやトラクションコントロールEVO ウィリー・コントロールEVO、パワー・ローンチEVO、クルーズコントロール、クイックシフト アップ/ダウン EVO、マルチメディア・システム等、最高級、最高峰の最新ハイテクデバイスの数々が満載である。

ほぼ全域にわたる著しいトルク向上を達成。特に実用域での太さが目立つ。

豪傑パワーと軽快な操縦性、そして美しさとの調和

 見るからに重量感がある。いかにもドッシリとたたずむディアベルに跨がり車体を引き起こしてみる。両足はベッタリと楽に地面を捕らることができ、アップライトなポジションと少しワイドなハンドルを握る扱いに、不安感は感じられない。さらに、スタートすると何とも軽くスムーズな操縦フィーリングに驚かされた。


 見た目の印象は初代の雰囲気が活かされているが新型では軽快な乗り味へと劇的な変身を遂げていた。そのフレンドリーな感覚が大きな進化であり魅力的なのである。


                     


 アクセルを大きく開けて行くと、以前よりも増して強力なスロットルレスポンスを発揮する。それはもう怒濤の加速力である。しかも、そんな高トルクに負けじと大地を蹴りだす極太タイヤのグリップ力も凄い。ハイテク電子機器の制御が巧みに介入してくれる安心感もあるが、頼り甲斐のある駆動力の高さも一級である。




 しかも峠道を素直に切り返してスムーズに走れるグッドハンドリングはとても扱いやすい。初代モデルは重量級である事と共に、少々手ごわい感覚や倒し込みに抵抗感のある癖を覚えたものだが、新型は、ごくさりげなく普通に走れてしまう。つまり持てるポテンシャルを高いレベルまで発揮しやすくなっている。直線もコーナーも凄味のある性能を柔軟にかつイージーに楽しむ事ができるのだ。


 ちなみにアイドリングは1500rpm。ローギヤで5000rpm回すと速度は47km/h。トップギヤ100㎞/hクルージング時のエンジン回転数は約3700rpmだった。クルーズコントロールを効かせて走る様は、大きなパワーを秘めて走る悠然とした心地良さが堪能できる。前後サスペンションの仕事ぶりも作動性に優れたフットワークを披露し、とことん上質な仕上がり具合は流石である。




 でもディアベルの価値は走りの進化だけではない。やはりデザイン! 細部までこだわって開発された仕上げの良さにいちいち感心させられるところが見逃せない。


 バイクを構成する部品それぞれに吟味された素材と美しい加工技術が投入されている様が、そこかしこに認められる。一例を上げるとフロントフォークを支持する三叉はフォークに対して直角ではなく、地面に対してほぼ水平に見える斜めデザインを採用。他では見られないそんなコダワリにいちいち感心させられてしまうのである。


 休日に、ドリップしたてのコーヒーカップを片手にガレージの扉を開ける。しばしゆっくりと愛車を愛でる。そんなシーンにおいて、ディアベルは、バイクライフの楽しさをより贅沢なひとときに変えてくれる事だろう。

⚫️足つき性チェック(ライダー身長168cm)



シート高は780mm。シートデザインも巧みでご覧の通り両足はベッタリと地面をとらえる事ができる。200kgを大きくオーバーする重量級バイクだが、足つき性が良いのでバイクを支える上で不安はない。


⚫️ディテール解説

スラントデザインの薄いデザインが印象的なヘッドランプ。フルLEDライティング・システムが採用されている。

イルミネーションを活用したライティング。オレンジのラインライトも格好いい。
スイッチ部分周辺を縁取るイルミネーション。透過光でスイッチの文字も綺麗に浮かび上がる。


ブレンボ製対向4ピストンのモノブロックキャリパーをラジアルマウント。倒立式フロントフォークはφ48mmオーリンズ製フルアジャスタブルタイプだ。

サイドカバーデザインのせいで2気筒のVバンクは120度程に見えてしまうが、中身はれっきとした横置き90度エンジン。吸排気共に連続可変式バルブタイミング機構のついた最新最強のLツインだ。

右側に短かく出されたツインテールパイプ。実際のマフラーはステンレススチール製のシングルタイプ。

リヤのスイングアームは鋳造アルミ製片支持方式。240幅の極太タイヤはピレリ製ディアブロ・ロッソ3。軽快なハンドリングへの貢献度は大きい。

ハンドルはテーパードタイプのパイプバーが採用されている。ブラケット等の部品も仕上げが美しい。

多彩な操作を可能にするハンドル左側のスイッチ。夜間照明の綺麗さはこれまでのバイクの常識に革新を与える。
ハンドル右側は赤いのがエンジンキルスイッチ。走行状態にすると始動用セルボタンが現れる。下の黒いスイッチはイグニッションスイッチ代りに使える。鍵はスマートキー方式で、メインはステアリングヘッド部の大きな押しボタンスイッチを使う。


大きめな液晶ディスプレイを採用したマルチインフォメーションメーター。様々な情報が目に飛び込んでくる。写真はツーリングモード。

ハンドルバーの上側には各種ワーニングランプが並ぶ。メーターは白黒反転もOK。夜間やトンネルでは自動反転できる。写真はスポーツモード。
アーバンモードにするとタコメーターが消滅する。スマホとの連携も可能になっている。


メニュー画面から各種制御のレベル変更や、好みの組み合わせ等、オーナーが自由自在にコントロールできる。写真画面はドラッグスターマシンとして最大のパフォーマンスを発揮させる設定を示している。
このメニュー画面からさらに下層へと進むと、様々な機能を活用できる。メーター表示の初期設定や時刻合わせもできる。


シート表皮も上質。座り心地も良く、尻へのフィット性も高い。急加速時のシートストッパーとしても機能的だ。

後席裏(下)側のテールランプ脇にあるキーロックを解除すると一体式シートは簡単に外れる。ETC機器は前シート下に収納されていた。
左の写真の後端部にあるT字ステーを後方に引き出すとタンデムライダー用のグリップに使える賢い仕掛けが採用されていた。


ヒップアップシートの下側にセットされたテール&ストップランプ。独創的でなかなか格好良いと思うが、直後を走る大型トラック等、高い目線からの被視認性は少々気になるところではある。

ボリューム感たっぷりなタンクまわりと、シンプルに仕上げられたテールまわりが対象的。

◼️主要諸元◼️

全長/全幅/全高:2,273mm/849mm/1,151mm


シート高:780mm


軸間距離 :1,600mm


最低地上高:121mm


乾燥重量:218kg


車両重量:244kg


燃料消費率:5.4L/100km(18.5km/L)




原動機型式:テスタストレッタDVT1262


原動機種類:水冷・4ストローク・DOHC・4バルブ(デスモドロミック可変タイミング)


気筒数配列:L型2気筒


総排気量:1262cc


内径×行程:106.0mm×71.5mm


圧縮比:13.0:1


最高出力 :117kW(159ps)/9500rpm


最大トルク:129Nm(13.1kgm)/7500rpm


始動方式 :セルフ式




燃料タンク容量:17L(無鉛プレミアムガソリン指定)


吸気・ボッシュ製電子制御燃料噴射、56mm径楕円スロットルボディ(φ56mm相当)


点火方式:デュアルスパーク




1次減速比/2次減速比:1.840/2.867


クラッチ形式:湿式多板 油圧セルフサーボ/スリッパー・クラッチ機構付


変速装置/変速方式:6速ドゥカティ・クィック・シフト(DQS アップ/ダウン)


変速比:


 1速:2.467 


 2速:1.765 


 3速:1.350 


 4速:1.091 


 5速:0.958 


 6速:0.880


フレーム形式:スチールパイプトレリスフレーム


キャスター/トレール:27°00′/120mm


タイヤサイズ(前/後):


 120/70 ZR17(チューブレス)/


 240/45 ZR17(チューブレス)


制動装置形式(前/後):


 油圧式ダブルディスクブレーキ(ボッシュ製コーナリングABS EVO)


 油圧式シングルディスクブレーキ(ボッシュ製コーナリングABS EVO)


懸架方式(前/後):テレスコピック/片持ち式スイングアーム


ホイールトラベル(前/後):120mm/130mm


乗車定員 :2名

◼️ライダープロフィール

元モト・ライダー誌の創刊スタッフ。同編集部員を経てフリーランスに。現在モーターファンjpのライターを担当。ツーリングも含め、常にオーナー気分でじっくりと乗り込んだ上での記事作成に努めている。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ジェントルな佇まいと怒涛の加速力。