REPORT●渡辺敏史(WATANABE Toshifumi)
PHOTO●Daimler AG
※本記事は『GENROQ』2019年10月号の記事を再編集・再構成したものです。
メルセデスAMGのラインナップにおいては唯一の横置き4気筒エンジンのモデルとなる45シリーズがフルモデルチェンジを迎える。現在ラインナップされているのはベースモデルがフルモデルチェンジを迎えたAクラスとCLAクラスのみ。そして、その最大の注目はリッターあたり200㎰を軽くオーバーする421㎰を発揮する2ℓユニットだ。マクラーレン・セナに搭載される4ℓV8でも800㎰とあらば、その過激さが伝わるだろうか。
M139と名付けられたそれは、既存の2ℓユニットとボア×ストロークは同じだが、設計からまったくの別物となる。シリンダーのクローズドデッキ化やムービングパーツの鍛造化など、高回転に対応した強度が確保されるほか、大径タービンは後方排気化によってバルクヘッド側に置かれ、インタークーラーのパイピングをストレート化するなど高出力化の術を幾つも重ねている。本国仕様にはブースト圧を2.1から1.9に落として387㎰とするベースモデルも存在するが、日本仕様は421㎰のA45SとCLA45Sと潔いラインナップとなる。
ドライブトレインは先代と同じく、最大50%の駆動力を後軸へと伝えるオンデマンド型の4WDを採用。それに加えて後左右輪の差動を0〜100%の間で無段階可変するAMGトルクコントロールが新たに採用された。その差動は速度や舵角、ヨーレート等を総合判定し、ドライブモードによって旋回側にも安定側にも寄与することになる。トランスミッションは8速DCTのみの設定だ。
このM139ユニットは今日びのダウンサイジングユニットと異なる高回転指向ゆえ、パワーの乗りに懐かしい刺激を感じる一方で、低回転域のトルク感には乏しい。それを8速DCTがカバーする算段だが、山道などを気持ちよく走ろうと思えばドライブモードはスポーツ以上の方がピタッとハマる。一方の中高回転域では強烈なパワー感はもちろん、吹け上がりの鋭さや音・振動といった官能的な要素に至るまで文句のつけようがない。AMGが内燃機出自のコンストラクターであることを久々に感じさせてくれる仕上がりだ。
凝った駆動システムを持ちながらも両車のサーキットスピードでのマナーは至ってニュートラルだ。アンダーステアを自然に抑え込みながら、テールをじわじわと押し出してクルマをインへと向けていく、その挙動には安心感がある。厳密に比べればA45Sはやはり元気の良さが、CLA45Sは落ち着きが動きに現れるのが面白い。新しいこの2台はタウンスピードでの乗り心地も望外に優れているから、特にCLA45Sはコンパクトなスポーツサルーンとしての新たな境地を拓ける仕上がりになっているように思う。
【SPECIFICATIONS】メルセデスAMG CLA 45 S 4マティック+〈A 45 S 4マティック+〉
■ボディサイズ:全長4693〈4445〉×全幅1857〈1850〉×全高1413〈1412〉㎜
ホイールベース:2729㎜
トレッド:Ⓕ1605〈1597〉 Ⓡ1585 〈1558〉㎜
■車両重量:1675〈1625〉㎏
■エンジン:直列4気筒DOHCターボ
ボア×ストローク:83×92㎜
総排気量:1991㏄
最高出力:310kW(421㎰)/6750rpm
最大トルク:500Nm(51㎏m)/5000~5250rpm
■トランスミッション:8速DCT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕマクファーソンストラット Ⓡ4リンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ&Ⓡ255/35ZR19(9J)〈245/35ZR19(8.5J)〉
■パフォーマンス 最高速度:270㎞/h
■環境性能(EUモード)
CO2排出量:189~186〈192~189〉g/㎞
燃料消費率:8.3~8〈.1 8.4~8.3〉ℓ/100㎞