先代と同様にボディスタイルはクーペとコンバーチブルが用意されるが、両車の「屋根が開く」という相違点は、クルマ本来の魅力にどのような影響を与えているのだろうか。
REPORT●山崎元裕(YAMAZAKI Motohiro)
PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)
※本記事は『GENROQ』2019年10月号の記事を再編集・再構成したものです。
VWグループに収まったベントレーからコンチネンタルGTが誕生したのは2003年のこと。現行型はここから数えてサード・ジェネレーションにあたるモデルだ。その現行コンチネンタルGTに、オープン仕様のコンバーチブルが追加設定されたので、クーペとともに走りを楽しんでみることにした。
現行型のコンチネンタルGTは、ポルシェの主導で開発が進められた新世代のモジュラー型プラットフォーム、「MSB」を採用したモデルだ。初代、そして2代目のコンチネンタルGTが用いていた「MLB」プラットフォームと比較してベントレーにとって好都合だったのは、唯一固定されるフロントアクスルの位置がMLB世代より前方に移動したこと。これによって2ドアクーペ&カブリオレとしてのさらに魅力的なプロポーションや、エンジンを始めとする重量物の配置を最適化することが可能になったのだ。
コンバーチブルのソフトトップは、約19秒でオープン&クローズが可能だ。ベントレーによれば、この時間さえ先代モデルから6秒ほどを短縮したという。また50㎞/h以下ならば走行中でも開閉が行えるようになったのは嬉しいところだ。先代はこれが30㎞/h以下だった。
4層構造のソフトトップをオープンすると、コンバーチブルは素晴らしく流麗な、さらに走りへの期待感を高めてくれる姿に変貌を遂げる。一方クローズ時はどうかといえば、今回一緒に連れ出したクーペと比較すると、ソフトトップとトランクリッドで、とても上手くクーペのスタイルを再現しているのが分かる。個人的にはこれまで、ラインナップにクーペとオープンがあれば、必ずクーペをチョイスしてきたのだが、今回ばかりはスタイリングを見た段階でコンバーチブルの方に心が動く。
フロントに搭載されるエンジンは、635㎰の最高出力と900Nmの最大トルクを誇る、6ℓのW型12気筒ツインターボ。組み合わせられるトランスミッションは8速DCTで、駆動方式はサード・ジェネレーションのコンチネンタルGTでは、後輪駆動主体型の傾向を強めたフルタイム4WDとなる。前輪へのトルク配分は通常時には0に近い比率とされ、最大でも38%が伝わるのみ。初代モデルが50対50、続く2代目が40対60の駆動力配分であったことを考えると、4WDに対する概念はベントレーの中で大きく変わったといえる。
センターコンソール上にあるダイヤルスイッチで、標準モードとなる「B」=ベントレーをチョイスし、まずはコンバーチブルから試乗を始める。まず印象的なのはオプションの22インチタイヤを装着しているにもかかわらず、3チャンバー方式のエアサスペンションが、しなやかに、そしてフラットに路面からのショックを受け止めていることだった。オープンボディの弱さを見せる場面などまったくなく、ワインディングではさらに48Vの回生システムを組み合わせ、瞬時にそのセッティングを変化させるアクティブスタビライザーが、ロールを最適化してくれる。これが本当にオープンモデルの走りなのか。ベントレーがいかにこのモデルの開発にストイックな取り組みを見せたのかが想像できる。
■ボディスペック
全長(㎜):4880
全幅(㎜):1965
全高(㎜):1405
ホイールベース(㎜):2850
車両重量(kg):2260
■パワートレーン
エンジンタイプ:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量(cc):5950
最高出力:467kW(635㎰)/6000rpm
最大トルク:900Nm(91.8㎏m)/1350~4500rpm
■トランスミッション
タイプ:8速DCT
■シャシー
駆動方式:AWD
サスペンション フロント:ダブルウィッシュボーン
サスペンション リヤ:マルチリンク
■ブレーキ
フロント:ベンチレーテッドディスク
リヤ:ベンチレーテッドディスク
■タイヤ&ホイール
フロント:265/40ZR21
リヤ:305/35ZR21
■運動性能
最高速度(km/h):333
0→100km/h加速(秒):3.7
■車両本体価格(万円):2581万2000円
ソフトトップをクローズすると、走りはほとんどクーペのそれと変わらなくなる。5層式のトップは遮音性にも優れており、よって室内は常に静かで快適な空間に保たれるし、外観からそのシルエットを見ていた時には多少心配だったリヤシートの居住性も、実際には十分にそれが確保されていることが分かる。唯一気になるのは、やはり後方の視界がかなり遮られてしまうことだろうか。
W型12気筒エンジンは、驚くほどにスムーズだ。ソフトトップをクローズしたので、そのサウンドはよりダイレクトにキャビンへと届くようになったが、それは適度なボリュームで好ましい。改めて感動したのはその吹け上がりで、アクセルペダルを軽く踏み込めば、瞬時にエンジンはその動きに反応してくれる。もちろんフルスロットルで加速を要求すれば、900Nmものトルクがわずか1350rpmから発揮され、2.5tにも達しようかという重量を感じさせないままに、スムーズな加速を体験させてくれる。8速DCTの動きは、まさにシームレスといった印象。パドルを使用したマニュアルシフトもスポーティで楽しい。
コンバーチブルから、今度はクーペに乗り換える。いつもならばここで安心感のようなものを感じるはずなのだが、今回は不思議とコンバーチブルとクーペの差というものを大きく感じない。それはコンバーチブルが予想以上に素晴らしい仕上がりを見せたモデルだったからなのだろう。もちろん走りにおいては、最終的にはクーペが有利であることは間違いない。ボディ剛性と重量の関係などはその最も象徴的な例で、だから個人的にはこれまで同様の比較でオープンカーを選ぶことはなかったのだ。しかもコンチネンタルGTコンバーチブルは、近年の主流であるリトラクタブル・ハードトップではなく、クラシカルなソフトトップを使用したモデルなのだから。
そのようなことを考えながらドライブするクーペのコンチネンタルGTも、やはり素晴らしいモデルだった。キャビンで自分を包み込むのはクラフトマンシップを感じる豪華なインテリアトリムやシート。センターコンソールの中央にはナビ画面のほかに、3つのアナログメーターを表示する面、そして駐車時にはシンプルなウッドパネルとなる、3面式のロータリーパネルが備わることなど、最新のコンチネンタルGTには話題性が満載だ。その豪華絢爛なキャビンを見るのも、やはりコンバーチブルの方が良いということか。クーペは常にオープンに勝る。この自分勝手な定説は、ベントレーの最新作によって見事に打ち砕かれてしまった。コンチネンタルGTコンバーチブル。それは間違いなくオープンカーの世界を極めた1台だ。
■ボディスペック
全長(㎜):4880
全幅(㎜):1965
全高(㎜):1400
ホイールベース(㎜):2850
車両重量(kg):2450
■パワートレーン
エンジンタイプ:W型12気筒DOHCツインターボ
総排気量(cc):5950
最高出力:467kW(635㎰)/6000rpm
最大トルク:900Nm(91.8㎏m)/1350~4500rpm
■トランスミッション
タイプ:8速DCT
■シャシー
駆動方式:AWD
サスペンション フロント:ダブルウィッシュボーン
サスペンション リヤ:マルチリンク
■ブレーキ
フロント:ベンチレーテッドディスク
リヤ:ベンチレーテッドディスク
■タイヤ&ホイール
フロント:265/40ZR21
リヤ:305/35ZR21
■運動性能
最高速度(km/h):333
0→100km/h加速(秒):3.8
■車両本体価格(万円):2831万7600円