さて、そのSKYACTIV-Xエンジンは、マツダ3から搭載が始まり、次にCX-30に載せられて国内に投入される。マツダ3が12月中旬、CX-30は年が明けてからデリバリーが始まる予定だ。当初の予定から2カ月ほど延期になったわけだが、その理由は、従来のレギュラーエンジン仕様からハイオク仕様に変更するため、と報道されている。ハイオク仕様に変更することで、セッティングや型式認証などの作業で発売延期が必要になったという。
このSKYACTIV-Xエンジン、欧州ではすでにデリバリーが始まっている。
欧州仕様のまま日本に持って来れば、それほど適応に時間はかからないと勝手に思ってきたのだが、圧縮比:15.0でハイオクとなると話が違うらしい。
これについて、エンジンに詳しい研究者に訊くと
「量産直前に不具合が発生したと考えるのがわかりやすいと思います。
容積比(圧縮比)16.3のプレイグニッションとノック制御(⇒ばらつきと制御の隙間による突然の異常燃焼・破損)が起こったのではないでしょうか。あくまでも推測ですが。低速のプリイグと高速の異常燃焼を避けるために、国内仕様は容積比を15.0に落としてトルクも控えめにセットしていたにもかかわらず、なにかのばらつきで量産直前にエンジンを壊したのではないでしょうか。マツダの特許を見てもスーパーチャージャーの過給で掃気を充分やるくらいしか、高速の異常燃焼を避ける手段は見当たりません」
という。また仕様変更については
「ヨーロッパ仕様を持ってきて、レギュラーで問題なく走るようなセッティングは短時間では不可能です」
という。
今回の仕様変更のポイントは、「指定燃料」と「推奨燃料」の違いである。
今回の仕様変更で日本仕様のSKYACTIV-Xはハイオクを「推奨燃料」とする。つまり、レギュラーガソリンを入れても問題なく走る、ということだ。ハイオクが「指定燃料」なら、レギュラーガソリンを考慮に入れなくてもいいが、「推奨燃料」となれば、ユーザーがレギュラーを給油することを想定しなくてはならない。
レギュラーガソリンのSKYACTIV-G2.0のスペックが
圧縮比:13.0
最高出力:156ps(115kW)/6000rpm
最大トルク:199Nm/4000rpm
使用燃料:レギュラー
だから、その差は
24ps/25Nmしかない。
もしその差が縮まるようなことがあれば、日本仕様のSKYACTIV-Xの商品性に影を落とすことにならないか?
まだ国内仕様のスペックは発表されていないが、どうやら
最高出力:180ps(132kW)/6000rpm
最大トルク:224Nm/3000rpm
と、同スペックになるようだ。
圧縮比が下がって同じスペックが出るのはおかしい、と思うだろうが、正解はこうらしい。
「欧州仕様のSKYACTIV-Xのスペックは、SKYACTIV-Xの実力を控えめに出しただけ。本当の実力はもっと上にある。だから、日本仕様は圧縮比15.0でも、圧縮比16.3の欧州仕様と同じパワースペックにできる」
ということなのだ。
となると、前出のエンジン研究者の推測通りではなく、「欧州仕様は、世界で初めてのSPCCIエンジン=SKYACTIV-Xを市場導入するにあたって、不測のトラブルを避けるためだいぶ余裕を持ったスペックで搭載を始めた」ということになるわけだ。
正解は、今後の実際の国内投入の際の取材で明らかになるだろうが、現在のところ、日本仕様のSKYACTIV-Xは
圧縮比:15.0
最高出力:180ps(132kW
最大トルク:224Nm
使用燃料:ハイオク(RON96以上。流通しているのはRON100)
となると予想できる。