REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
1978年(昭和53年)に登場したゴリラは、モンキーと同じレジャーモデルながら、コンセプトはやや異なる。
モンキーは、「車に積み込んで目的地で遊ぶ」というコンセプト。一方、ゴリラは目的地までの自走を前提に作開発されている。
フレームや前後8インチを採用した足周りはモンキーと共通だが、大容量の9Lガソリンタンク、重量感溢れる肉厚シート、長距離走行もラクラクの運転しやすいアップ型バーハンドル、荷物が積載できるフロントキャリア、大きめのリヤキャリアなど、独自の外装で構成。
エンジンも基本的にモンキーと共通。1978年当時、モンキーには「自動遠心式クラッチ+3速ミッション」と「マニュアル式クラッチ+4速ミッション」の2種類がラインナップされていたが、ゴリラはスポーツ性の高い「マニュアル式クラッチ+4速ミッション」のみが発売。
1979年(昭和54年)には、外装類に贅沢なメッキ処理を実施した、メッキ仕様の「ゴリラリミテッド(当時の発売価格:13万8000円)」も発売されて人気を呼んだ(モンキーリミテッドと同時にリリース)。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:875mm/乾燥重量:59kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:2.6ps/7000rpm/最大トルク:0.3kgm/5000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):10万8000円
エンジンの各部を下記の通り変更。
・シリンダーヘッドの燃焼室形状をコンパクト化
・フラット型ピストンを採用
・ロングコンロッドの変更
・バルブ周りを変更
これにより、圧縮比が8.8から10.0にアップ。最高出力も2.6psから3.1psにアップされた。
1985年モデルより、モンキーにも採用のハンドル左側にウインカー、ホーン、ヘッドライト機能を集約した集合スイッチを導入。なお、外装や足周りに大きな変更はない。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:875mm/乾燥重量:59kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):12万5000円
外観のカラーリングを変更してイメージを一新。左バックミラーも新たに追加採用された。その他に大きな変更はない。6Vエンジンを搭載したこのモデルを最後に、ゴリラは1998年まで“冬眠”することとなる。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:875mm/乾燥重量:59kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):12万8000円
1988年には、パールミルキーホワイトの清楚な特別仕様車も登場。専用シートやメッキパーツの増加など、豪華さに磨きをかけた贅沢なつくり。エンジンや外装パーツ、足周りに大きな変更はなし。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:875mm/乾燥重量:59kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):13万1000円
10年ぶりに復活を遂げたゴリラ。メンテナンス性に優れたCDI点火のエンジンに加え、12Vバッテリーを搭載しているため、「12Vゴリラ」とも呼ばれる。
立体エンブレム採用の9Lガソリンタンク、メッキフェンダー、メッキライトケースなど、外観は前モデルよりも豪華なイメージ。大型のリアキャリア、肉厚のシートなどは健在だ。
足周りはモンキーと共通。ゴリラの象徴的アイテムだったフロントキャリアは廃止されている。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:880mm/乾燥重量:62kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):19万4000円
限定3500台のスプリングコレクション。ライトカバー、前後フェンダー、チェーンガード、マフラーガード、フレーム、フロントフォーク、スイングアーム、リヤサス、ホイールなど、全身にメッキパーツを採用。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:880mm/乾燥重量:62kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):24万9000円
排ガス規制に対応させるため、エンジンに「ブローバイガス還元装置」を設置。エアクリーナーやマニホールドなどの吸気系、ピストンやピストン回り、キャブレターもPA型からPB型に変更された。
モンキーと同じく、このモデルよりフレーム・エンジンの番号は「Z50~」ではなく、「AB27~」で開始。型式も「A-Z50J」から「BA-AB27」に変更。
この規制対応以降のモデルは、ファンの間では「AB27ゴリラ」とも呼ばれる。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:880mm/乾燥重量:62kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):19万6000円
ブラック&シルバーのツートンからホワイトにカラー変更。タンクのロゴもウイングマークから「GORILLA」のみのシンプルなものにチェンジされた。エンジンや足周りに変更なし。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:880mm/乾燥重量:62kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):19万9000円
別売りの盗難抑止用アラームキット装着用の配線を標準装備。カラーは野性的な深緑/黒にチェンジ。エンジンや足周りに大きな変更はない。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:880mm/乾燥重量:62kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):19万9000円
盗難抑止用のU字ロック(U字ロックは別売り)が固定できるリヤキャリアを新採用。カラーはイエローにチェンジ。エンジンや足周りに変更はない。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:880mm/乾燥重量:62kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):19万9000円
50ccエンジンを搭載したゴリラの最終モデル。カラーはブラック。モンキーのようにFI(フューエルインジェクション)化されることなく、キャブレター仕様のまま生産終了となった。
●主要SPEC
全長:1365mm/全幅:625mm/全高:880mm/乾燥重量:62kg/燃料タンク容量:9L/エンジン形式:空冷4サイクルOHC単気筒49cc/最大出力:3.1ps/7500rpm/最大トルク:0.32kgm/6000rpm/変速機:4速リターン/クラッチ形式:マニュアル式/タイヤサイズ:前後3.50-8/発売価格(当時):21万5250円
試乗の前に、少し車体を上から眺めてみる。斜め横から、また、真横から眺めた時には、随分と小さく感じられたが、上から見下ろしてみると、あまり小ささは感じられない。
これは多分、幅広のガソリンタンクとシートのせいだろう。ゴリラのガソリンタンクは寸胴で、シート側の付け根部分までの絞り込みがまったくない。まるで、四角い弁当箱を、デンっと乗っけたような感じ。でも貫禄があって、「これぞゴリラ!」という感じに仕上がっている。
シートにまたがってみると……。この弁当箱タンクが、とっても二―グリップしやすい。意識しなくても、両ひざに無理なく馴染んでくれる。
おまけにシートが肉厚でデカいから、横綱級の相撲取り(はキツイか?)や、近所のオバちゃん級の巨大デカケツも余裕なんじゃないかな。
アップ型のバーハンドルも、ちょうどいい位置にセットされており、身長173cmの筆者にジャストフィットする。
エンジンはキックスターターで一発始動。始動が容易な12VのCDIマグネット点火を採用しているためか、始動性は良好。アイドリング時の振動もほとんどない。
シポシポ♪ と控え目なアイドリングの排気音を聞きながら、ギアを1速にシフトして発進。
実を言うと、ボクはモンキーを含め、ゴリラに乗るのは今日が初めて。スロットルを程よく吹かし、ゆっくりとクラッチをつなぐと……。
妙なクセなく、スルスルと滑らかに進んでくれる。回転が上昇するにつれ、4ストミニならではのサウンドも高まってきた! これは面白い!
2速3速へとシフトアップしてゆく。「電気モーターのような」という表現が一時流行ったが、このエンジンはまさにその通り。
トップギアの4速にシフトしてしばらく流す。すり抜けなどの低速域はもちろん、中速域においても、エンジンはストレスなくスルスルと回り、街乗りレベルではトルクも十分。走っていて、とっても楽しい。
というのも、ゴリラの足周りは基本的にしっかりしているから、ミニバイクにありがちな路面の凹凸による振動や、ハンドルのブレも、余程の段差を拾わない限り大丈夫。
ただ、2つだけ気になったことがある。1つめは、ブレーキの効きの甘さ。車間距離を十分とっておかないと、前の車が急なブレーキングを行ったら、テールに「ドカーン」となる可能性大。
2つめは、1速と2速のギア比。ちなみに1速は3.272、2速は1.937。1速から2速にシフトアップする時、1速で目一杯引っ張って、一気に2速につなげた場合、フロントが浮いてしまう。
クラッチミートに気を使ってあげたり、上体を伏せてフロント荷重にすれば問題ないんだけど、少しシンドイかも。
とはいえ、ノンビリ走るにはGOODなゴリラ。大型バイクに乗っていては気付かない風景が、ポンポンと飛び込んでくる。生まれて初めて、モンキー系の4ストミニに乗ったボクには、とっても不思議で魅力的な時間だった。
(モト・チャンプ 1998年5月号より抜粋、一部改訂)