先行発売された燃料電池車と同じボディだが、使い勝手をチェックしてみるといくつか異なる部分がある。最大の違いは荷室が広くなりトランクスルーも活用できること。それ以外にもメーター表示やホンダインターナビのメニュー内容など、PHEV独自の部分が存在する。




REPORT●工藤貴宏(KUDO Takahiro)


ASSISTANT●森脇亜紗紀(MORIWAKI Asaki)(身長160㎝)


PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)




※本稿は2018年7月発売の「ホンダ クラリティPHEVのすべて」に掲載されたものを転載したものです。車両の仕様が現在とは異なっている場合がありますのでご了承ください。

〈取材車のプロフィール〉EX

ボディカラー:コバルトブルー・パール インテリアカラー:ホワイトアイボリー

〈ゆったり座れる後席〉リヤシートは3名掛けで、中央に人が座らない時はセンターアームレストを活用できる。ショーファーカーとしても使えるように設計された、居住姿勢に優れ、広さも十分でゆったり座れる後席だ。

〈Bluetooth接続にも対応〉燃料電池車ではインターネット接続だけに限定されていたスマホと車両の操作時の接続は、PHEVではBluetoothにも対応(ホンダ初採用)。車両の周囲で車両連携機能を使う際に便利。

〈運転席まわり〉先進的なレイアウトで細部をPHEV用に最適化

デザインは基本的に先行して発売しているクラリティFUEL CELLと同様だ。左右に広がるパネルを組み合わせたダッシュボードは開放的。一方で下部はシフトセレクターの操作性を求めて高くしたセンターコンソールによって、足元は左右のセパレート感が強い印象だ。スイッチの配置などは燃料電池仕様と異なる部分もある。

フルデジタル式で先進性をアピール。表示はシンプルで見やすい。中央の外周はハイブリッドシステムの出力/回生状態を示すエネルギーメーターで、内側はマルチディスプレイ。その右が燃料計、左はバッテリー残量だ。



シフトセレクターは、乗用車では珍しいボタン式(レジェンドやNSXと同じ)。前方に3つ並ぶスイッチは走行モード切り替え。後方は電動パーキングブレーキで、慣れると自然な操作感が扱いやすい。エスカッションを高く配置したハイデッキセンターコンソールとし、木目の導管を凹凸感で表現したウッド調パネルなど、上質な素材をふんだんに使用することにより、あたたかみや安心感を演出している。



右はクルーズコントロール操作&車線維持アシストのオン/オフ。左はメーター内ディスプレイの切り替えとオーディオ操作だ。音声入力など、ナビや接続したスマホの一部操作もできる。

ハンドル右下にはETCやトランクリッドオープナーのほか、ホンダセンシングの機能をオン・オフするスイッチも備わる。

左後方の安全確認をするレーンウォッチ作動ボタンが右側レバー先端に装備される。実際の映像など詳しくは次ページで。

クラリティFCVにはなかったパドルは、アクセルオフ時の回生ブレーキの効き(減速度)を調整するもの。

運転席ドアのドライバー足元付近にあるボタンは、ガソリン、急速充電、そして通常充電のリッドオープナー。

アクセルペダルは、それ以上踏み込むとエネルギー消費が大きく増えるポイントを伝えるクリック感が付けられている。

マルチインフォメーションディスプレイ

〈タイマー充電設定〉PHEV専用コンテンツのひとつ。充電ケーブルをつないでも常に充電するわけではなく、充電する時間を指定できる。
〈HVモード ON〉スイッチをONにすると、HVモードに切り替わりバッテリーの残量をキープしハイブリッド車として走行する。


〈SPORT ON〉峠道などで積極的に運転を楽しみたいときは、アクセル操作に対してよりリニアに反応するスポーツモードが魅力だ。
〈航続可能距離〉航続可能距離は「EV航続可能距離」「ハイブリッド」そして「トータル」と3つの項目に分けて 表示する。


〈ナビ・AV〉ホンダインターナビを標準装備

各種情報を表示するディスプレイは8インチと大きめ。PHEV専用コンテンツが用意されていて、写真はエネルギーフロー画面。エネルギーの流れとバッテリー残量、航続可能距離を示す。

燃料電池車の水素スタンド検索に代わり、充電スタンドを検索可能。場所や充電器の種類だけでなく空き状況や料金、現在地からの距離など、さまざまな情報も表示できる。

通信ユニットが標準装備されているので詳細で広範囲な渋滞情報を取得できるほか、ナビを通じてロードサービスや緊急コールにも連絡できる。

「Apple CarPlay」や「Android Auto」などスマホとの連携機能も備えている。車載のディスプレイを通じてメッセージの作成・送信も可能。

USBを通じて「Apple CarPlay」や「Android Auto」に接続できるほか、BluetoothやWi-Fiでもスマホをつなげられる。

スピーカーからの音で車内の騒音を打ち消す機能も搭載。イヤフォンのノイズキャンセリング機能と同じ原理だ。

バックモニターの表示は視点を3パターンに切り替え可能。ハンドル操作に連動して動く補助線(進路予測線)も表示される。

多方位から見守る安全運転支援システム



「Honda SENSING」として衝突軽減ブレーキのほか、路肩の歩行者を避けるようにハンドル操作をアシストする機能なども採用。燃料電池車のデビュー時よりもバージョンアップしたシステムを搭載している。

HDMIや1.5AのUSBも装備



センターコンソールに用意されるUSBアウトレットは、急速充電対応の1.5Aなのがうれしい。スマホの動画をナビ画面に映すHDMI端子も採用している。DC12Vアウトレットも備える。

左後方の死角をモニターで確認できるレーンウォッチ



助手席ドアミラーに取り付けたカメラを通じて、車両の斜め左後方の様子をナビ画面に映す「レーンウォッチ」が実に便利。ミラーでは見えない死角の様子が一目瞭然となる。

〈居住性&乗降性〉セダンとして不満のない居住性。後席足元も十分な広さ

〈前席〉


座面の沈み込みが少ない硬めの着座感。タイトな印象を抱かせないためかサイドサポートは大きくないものの、形状に優れるので効果的に身体を支える。Aピラーが寝ていてクーペ的な感覚である一方、アイポイントに対してインパネ上面は低く抑えられていて見晴らしは良好だ。

〈後席〉


後席空間も燃料電池車と同じだ。フロア下にもバッテリーが収まるから一般的なセダンに比べると床が高いが、それにも関わらずヒール段差が十分に確保されて着座姿勢に不自然さがないパッケージングが見事。つま先がフロントシートの下に入るので長時間乗車でも疲れにくい。

電動調整式の8ウェイパワーシートを標準装備し、2パターンのメモリー機能も採用。ドアハンドル脇にスイッチがある。

シート高:590mm ステップ高:375mm
シート高:620mm ステップ高:380mm


一般的なセダンに比べるとシート高は高め。乗降性はその恩恵を受けていて、着座位置が高い分だけ座ったり立ったりの姿勢変化が少なく済むのがいい。後席はBピラーと座面前端の間隔が広くて足の出し入れをしやすいが、座面に対してルーフは低めだ。

〈空調〉

エアコンは左右独立温度調整式で、温度調整は操作性に優れるダイヤル式だ。エンジンが止まっていてもしっかり冷たい風を送れるよう冷房には電動コンプレッサーを使う。専用の作動状態の表示ディスプレイはなく、ナビ画面に任せている。

インパネ上部エアコンアウトレットの間にある丸い穴は、プラズマクラスターの吹き出し口だ。



エアコンの作動状況はパネルの「CLIMATE」のボタンを押すとナビ画面に示され、タッチパネルで操作可能。シートヒーターはフロントに備え(後席は設定がない)、3段切り替え式だ。センターコンソールの後ろには後席用の吹き出し口も備える。

〈室内の収納スペース〉前席には高さを調整できるドリンクホルダーを用意

❶ ルームミラーの手前にあるオーバーヘッドコンソールは、レンズが立体形状のサングラスも入れやすい形状。
❷ サンバイザーのチケットホルダーは、角の部分に挟み込むスタイル。大きなカードも挟めるので実用的だ。


❸ プッシュオープン式のグローブボックス。ボックスティッシュの大型サイズと、標準サイズが収まる。
❹ センターコンソールは2段式で、シフトセレクターの下には大きなトレーがある。USB電源もすぐ脇にあり、スマホを置くのに最適だ。




❺ 左右に並ぶ前席用ドリンクホルダーは、アジャスターにより容器をしっかりホールド。スモール缶が沈み込み過ぎないよう、底を上げられるのも特徴だ。

❻ フロントドアは500㎖ペットボトルと小物を収納できるポケットのほか、アームレスト部のグリップも小物入れとして活用できる。
❼ 一般的なシートバックポケットを助手席と運転席の背中に備えるほか、運転席背中の上部にはスマホを入れるのに最適なポケットも用意。


❽ CDケースが入る深さを確保したセンターコンソールボックス。CDを入れてみると10枚以上も入る。大容量はやはりうれしい。
❾ 後席センターアームレストは先端にドリンクホルダーを内蔵。ドアポケットも含めると、合計4本の飲み物を置く場所が後席にはある。


❿ リヤドアポケットはボトルホルダーに特化。アームレストにあるドアハンドルにも底があり、小物入れとして使える。

後方視界向上のための機能

リヤウインドウの下に補助的な窓を装備。荷室高を稼ぐハイデッキゆえの苦肉の策と言えそうだが、役立つ仕掛けだ。

Cピラーに内蔵した窓は小さいとはいえ、斜め後方視界を大きく改善するアイテム。バックする時などにメリットを実感。

〈ラゲッジルーム〉容量は燃料電池仕様よりも大きくトランクスルーも活用できる

トランクの開口部下端の地上高は695㎜。見ての通り開口部の大きさは一般的なセダンとは比較にならないほどで、大型スーツケースなども難なく積み下ろしできる。残念なのは、トランクリッドを閉じた際にそのアームが大きく荷室内に張り出してしまうことだ。

〈通常時〉高さ:610mm 通常奥行き:1110mm

燃料電池車と同じではないのが荷室の広さ。水素タンクひとつ分のスペースが荷室として開放され、燃料電池車の394ℓに対して512ℓと大幅に拡大している。610㎜ある床から天井までの高さも、一般的なセダン(500㎜前後)では考えられない領域。ラージセダンと比較しても実用性は期待以上だ。

最小幅:1330mm 最大奥行き:2035mm

単に広いというだけでなく、トランクスルー(燃料電池車にはない)が使えるのも大きなトピックだ。開口部は幅が最大1120㎜×高さ520㎜と十分に広い。

後席背もたれは左右6対4分割。倒したシートは水平にはならず、荷室床との間には95㎜の段差が残るものの、従来の燃料電池車ではNGだった長尺物が運べるようになったのはうれしい。

床下にあるボックスは深くて広いのがいい。深さは190㎜、幅は570㎜で三角表示板やけん引ロープ、そして洗車道具などを収納し荷室内を整理整頓するのに最適だ。これは実用性が高い。

後席を倒すには荷室側からの操作が必要。荷室上部にあるレバーを引いた後に、後方から背もたれを押すことで倒れる。

荷室の助手席側壁にあるのが、電源がすべて遮断された際など緊急時に給油口のリッドを開ける手動オープナーだ。

パンク修理キットの上にあるリッドを外すと、バッテリーが上がった際などに充電口を開ける非常用のオープナーが現れる。

スペアタイヤは搭載せず、荷室壁面にパンク修理キットが格納されている。補修液と電動空気ポンプの組み合わせだ。

〈注目装備〉

〈ガラスも高機能〉高熱線吸収/UVカットガラスをすべての窓に備え、フロントウインドウとフロントドアには遮音機能付きのガラスを採用。

〈スマートクリアワイパー〉アームにウォッシャーノズルを内蔵し、ワイパーの進む方向に噴射するので液が目立たない。外気温や車速に応じて噴射力も自動調整する。



〈スマートキー〉身に着けているだけでドア解錠やシステム起動が可能。エアコンのオン/オフを遠隔操作できるボタンも内蔵している。

〈外部への給電も可能〉別売りのPOWER EXPORTER 9000を使用すれば一般家庭電力のおよそ6日分の給電が可能となる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 ホンダ・クラリティPHEVの使い勝手を徹底チェック!