この新しい法律のもとで公表された2018年3月時点でのホワイトリストには、最大手である寧徳時代新能源科技(CATL)の名前が掲載されていなかった。その代わりサムスングループの三星環新動力電池、LG(金星)グループの南京楽金化学新能源電池、SKイノベーション傘下の北京電控愛思開科技の韓国資本3社がリストアップされていた。それまでのホワイトリストとよく比較すると、かなりの違いがあった。韓国は中国企業の電池独占を猛烈に非難し「韓国系企業をホワイトリストに掲載しないのはおかしい」と言い続けてきた。うるさい韓国を黙らせるためにホワイトリストに追加したのか。中国にある韓国系合弁3社も半分は中国資本だから認定してもいいし判断したのか。あるいはもう行政が関知しない有名無実のリストだからどうでもよかったのか。
その一方で、中国政府が推薦するNEV目録、補助金の対象になるNEVの車名リストを見ると、そのLiB購入先はCATLがもっとも多く46モデルにのぼる。ホワイトリスト掲載企業である北京国能製LiB搭載車は22モデル、同じく合肥国軒高科製LiB搭載車は19モデル、力神動力製LiB搭載車は16モデルであり、圧倒的にCATL製を採用した自動車メーカーが多かった。ホワイトリストとNEV目録の両方を読み解けば、もはや中国政府が2次電池調達先を指示していないという点は明らかである。
旧知の中国メディア記者は私にこう言った。
「韓国出資企業はリストに掲載されたが日系出資企業は掲載されていない。しかし、中国の自動車メーカーが本当に欲しがっているのはパナソニックやGSユアサ製の高性能高信頼LiBだ。中国の2次電池製造企業もこれからは厳しい競争にさらされ、淘汰される」
中国政府もそれは折り込み済みなのだろう。筆者が思うのは、ホワイトリストはLiB価格の下落が目的であり、中国政府がNEV補助金を打ち切ったときにNEVが価格競争力を持てるよう2次電池市場を誘導する。そのためには供給過剰になると思わせることが重要であり、だからCATLのような企業を広告塔に使った。すでに中国政府は2020年でNEVへの補助金を打ち切ることを決めている。状況証拠に過ぎないが、中国政府がLiB価格下落を誘導していることは間違いない。
それと、前回お伝えした「外資合弁は2社まで」という規制の緩和だ。NEVも結局は車両生産であり、車両工場を呼び込まなければならない。中国企業から電池を買わせる代わりにNEV専門の合弁会社設立を認めたわけだが、外資の2次電池メーカーが中国に工場を立てたとしても中国勢の優位は揺るがないと判断したのか、とにかく国内でのNEV生産が増えれが結果オーライだということを中国政府が態度で示したのがホワイトリスト管理の業界移管だったと筆者は見ている。