特に欧州においては、2018年8月にポルトガルの自動車向け複合材料部品メーカーであるInapal Plasticos社(イナパル社)を買収した他、2017年1月に買収した北米最大の自動車向け複合材料部品メーカーであるContinental Structural Plastics社(CSP社)のフランス現地法人であるCSPヨーロッパでSMC*1の工場新設を決めるなど、自動車向け複合成形材料事業の拡大を推進している。
こうした中で帝人は、欧州における提案力の強化、ならびに販売チャネルのさらなる拡大を図るため、ドイツをはじめとする多くの有力自動車メーカーが生産拠点を構える中東欧の中心部にあたるチェコに本拠地を持ち、幅広い採用実績を有するベネット・オートモーティブ社を買収することとした。
ベネット・オートモーティブ社は、自動車メーカーに部品を提供するTier1メーカーであり、炭素繊維複合材料(CFRP)やガラス繊維複合材料(GFRP)の成形技術、および自動車部品の塗装や組み立ての設備などを有している。
成形技術においては、オートクレーブ成形*2やRTM成形*3に加え、リム成形(RRIM:Reinforced Reaction Injection Molding)と呼ばれるポリウレタンを用いた低圧での射出成形技術などに特徴があり、フォルクスワーゲン、メルセデス、BMW、アウディ、シュコダなど、欧州の自動車ブランドへの幅広い採用実績を誇っている。
■ベネット・オートモーティブ社の概要
社名:Benet Automotive s.r.o.
拠点:チェコ ムラダー・ボレスラフ市(本社・工場2拠点)、チェコ ミロヴィツェ市(工場)、ドイツ インゴルシュタット市(工場)
売上高:35.2百万ユーロ(2019年3月期)
従業員数:約720名
事業内容:自動車向け複合材料/部品の設計・成形・加工
帝人はこのたびの買収を、イナパル社の買収に続く、自動車向け複合成形材料事業における欧州展開強化の布石と位置づけており、欧州の自動車メーカーへの部品供給パートナーとしてさらなる展開を図っていく。
かねて強力に推進しているマルチマテリアル戦略においては、現在開発中のテーマにベネット・オートモーティブ社の知見を加え、さらに、帝人ならびにCSP社が有する素材や成形に関する技術や人財との融合を図る。これにより、軽量性、強度のみならず、デザイン、生産性、コスト効率といったさらなる顧客ニーズにも応えるべく、ソリューション提供力を拡充していく。
こうした展開により、2030年近傍には、帝人グループの自動車向け複合材料製品事業として、売上2,000百万米ドル規模へと拡大していくことを目指す。
*1 SMC: Sheet Molding Compoundの略。熱硬化性樹脂をガラス繊維に含浸させシート状にした成形材料。
*2 オートクレーブ成形: 型にプリプレグを積層してバッグで覆い、オートクレーブと呼ばれる耐圧性の加熱装置内でバッグやプリプレグ内の空気などを除去して真空化し、加熱・加圧により硬化させる成形方法。
*3 RTM成形: Resin Transfer Moldingの略。金型の中に炭素繊維シートを配置した後に樹脂を注入し、加熱により硬化させる成形方法。