アメリカのフリーウェイには一部、“HOV(High-occupancy vehicle) lane”と呼ばれる車線が用意されています。別の呼び方である“Carpool lane”(カー・プール・レーン)の方が一般的ですので、今回はそちらで統一したいと思います。カー・プール・レーンとは、簡単に言えば一定の条件を満たした車両だけ走行できる優先レーンのことです。走行可能な条件は州によって少し変わりますが、今回は全米で最もカー・プール・レーンが整備されているカリフォルニア州の例をご紹介したいと思います。




TEXT&PHOTO●小林秀雄(KOBAYASHI Hideo)

片側5車線も珍しくないアメリカのフリーウェイ。カー・プール・レーンは一番左側に設置されています。日本と同じようにオレンジのラインを跨いで車線変更するのはNGなので、写真のようにラインに切れ間が出たところを見計らって移動します。

2名以上で乗車すれば渋滞知らずの神の道!?

 カー・プール・レーンの誕生は1970年代まで遡り、そもそもは渋滞緩和を目的にバス専用レーンとして整備されたのがはじまりだそうです。できるだけ1台のクルマにみんなで乗り合って交通量を減らしましょう、という発想ですね。それが徐々に大気汚染や温暖化ガスの排出抑制とも絡んで、90年代から各地で本格的に整備が進められました。実質的に効果が上がっているかどうかは賛否両論あるようですが……。




 カリフォルニア州の場合は、サンフランシスコを中心とする北カリフォルニア(NoCal)とロサンゼルスを中心とする南カリフォルニア(SoCal)で運用面に少し違いがあります。NoCalの場合は月曜から金曜の平日、渋滞がピークを迎えるラッシュアワー(例:6時〜10時、15時〜19時)のみの運用で、その日時以外はどんなクルマでも走って構いません。一方、SoCalの場合は24時間365日フルタイムの運用で、条件を満たしていない車両は常に走行してはいけないことになっています。

隣の車線が混んでいてもカー・プール・レーンだけは流れがスムーズということも多く、ちょっとした優越感に浸れます。ただし、フリーウェイの降り口は反対の一番右側に設けられていることがほとんどなので、調子に乗っているとうっかり出口を通り過ぎてしまうこともしばしば……。

 では、どんな車両がカー・プール・レーンを走行できるかといいますと、2輪車、2名以上の人が乗っているクルマ(一部の路線では3名以上)、そしてDMVことDepartment of Motor Vehicles(車両管理局)から発行されるステッカーを貼ったエコカーとなっています。つまり2輪車と上記のエコカーの場合は、ひとり乗りであってもカー・プール・レーンを走行していいということです。

カー・プール・レーンを走行中のホンダ・クラリティ。リヤバンパーに貼られた赤いステッカーがDMVから走行を認められた証です。

 エコカーとは具体的には電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッドカー(PHV)などが当てはまり、従来はEVとFCVにはホワイト、PHVにはグリーンのステッカーが交付されていました。その有効期限は2019年1月で満了となりましたが、新たに期限の延長措置が取られ、現在では2022年まで有効なレッド、2023年まで有効なパープルのステッカーが発行されています。余談ですが、かつて普通のハイブリッドカーに交付されていたイエローのステッカーは2011年で有効期限を終了しています。

ステッカー(正式名称はClean Air Vehicle Decals)には、カー・プール・レーンのシンボルであるダイヤモンドマークとともに、“ACCESS OK CALIFORNIA CLEAN AIR VEHICLE”の文字がプリントされています。

 我々のようにビジターとしてアメリカを訪れ、レンタカーでカー・プール・レーンを走る場合は、該当するエコカーを借りるか、2名以上で乗り合って移動する必要があります。僕は幸いなことに、いつもカメラマンと一緒に2名で行動していますので、常にカー・プール・レーンの恩恵を享受することができます。あえてレンタカーでEVやPHVを借りるというのも現実的ではありませんので、特にカー・プール・レーンが多いカリフォルニアでは、ペアで行動していることに余計にありがたみを感じます。

違反者に401ドルの罰金を課す旨を示す標識。罰金が高額ということもあり、わりとみんなルールを守って走行しています。

 ちなみにカー・プール・レーンを違反して走行した場合は、最低でも400ドル(約4万3000円)近い罰金が課されます。取り締まりは巡回中のパトカーや白バイが行っていて、我々も以前カー・プール・レーンを走行中、後方から近づいてきたジョン&パンチのような屈強な白バイ野郎に車内をジロリと覗かれました。当然違反はしてなかったのですが、あれはちょっとゾッとしましたね、はい。




 とはいえ、使い方さえちゃんと理解していれば重宝することこの上ないカー・プール・レーン。みなさんも旅行や出張でアメリカを訪れる際には、ぜひ活用してみてください。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 カー・プール・レーンを制する者がフリーウェイを制す!<ライターHideoのアメリカ取材珍道中:連載 第4回>