TEXT: MFi FIGURES: MAZDA
大好評を博しているデミオの後を追ってデビューを果たしたCX-3。SUVとしての悪路走破性より市街地走行における快適性を重視して作られている印象が強い。デミオはガソリン仕様において高負荷域でリヤサスの挙動に少々の不安を覚えるシーンもあったが、CX-3はデミオに比べてパワープラントが大トルクで(200Nm以上)車重も増加したため、ボディ&シャシーにも強化が図られている。
パワートレーンは、デビュー当初は1.5ℓ直4ディーゼルターボ(SKYACTIV-D1.5)のみだったが、2017年にはガソリンの2.0ℓ直4エンジン(SKYACTIV-G2.0)が追加、その後、ディーゼルは1.5ℓから1.8ℓのSKYACTIV-D1.8に変更されている。
キャビン周りの強度を確保すべく、ハイテン鋼で環状構造を採るのは定石どおり。とくに、AピラーとBピラー接続部のサイドメンバーには1180MPa材を使用した。フロアパネルにも440MPa材を用いている。曲げ剛性を高めるためにフロアトンネルとサイドメンバーを高めに取り、万一の衝突時にはフロントメンバーからの入力をフロアの縦貫メンバーとサイドシルに伝え、衝撃を吸収する。フロントバンパービームには1800MPa材をおごった。
スポット打点間に接着剤を塗布、点に対して面で接合することで、CX-3の狙う高い減衰感と静粛性を実現する。具体的にはリヤホイールハウス接合面とダッシュロワー。後者についてはウィンドウの水を流す用途もあるため、接着工法が大きく寄与した。スポット増し打ちは板圧によって最小打点間距離が定まるため、そのギリギリまで追い込んでいる。
デミオに対して車重と重心が高くなったため、ボディがさらに補強された。赤がCX-3固有の補強施策、緑はデミオにもある部品(CX-3ではさらに素材や形状を変えている)。フロアトンネル前端面に開き方向の動きを抑制するためのブレースを追加。リヤのホイールハウスもサス取り付け部で倒れ方向の変形が生じないようにサイドメンバーを追加した。
大きい音が入ってくるフロアやフロアトンネル、ホイールハウスなどの部位は、板厚をワンランクないしはツーランク上げることで根本的に遮音を図った。それに加えて、制振材をフロアやトーボードに塗布(上)。ほか、測定器を用いながらドアパネル類に吸音材を装備し(下)、競合車に比べて高い静粛性を実現している。
サブフレームの取り付け部はおよそ25mm のアップ。板厚の向上と形状の工夫で強度 の確保に努めた。デミオよりも高速での直進安定性を図り、ステアリングはギヤ比を少 しスロー化。過敏な動きを抑制している。ほか、フロントロワーアームをトレッド拡幅化 に合わせて新設、ロールセンターを上げ、車両重心に近づけている。
■CX-3
全長 4275mm
全高 1765mm
軸距 2570mm
重量 1240-1330kg
■デミオ
全長 4060mm
全高 1695mm(2WD)
軸距 2570mm
重量 1030-1220kg
ヒップポイントが上がったネガ要素を打ち消すべく、上記各策を施した。リヤシートはフロントより37mmヒップポイントが高く、20mm分はウレタンの厚みで対処。均一な体圧分布を実現し、疲れにくいシートを作り出した。