「兄よ、ジェイテクトって大丈夫?」のTVCMでお馴染みのジェイテクトは、ベアリングの会社、工作機械の会社が一緒になり、持ち前の技術を生かしてEPS (電動パワーステアリング)のパイオニアとして、No.1サプライヤーとなった会社だ。高耐熱リチウムイオンキャパシタは、ニーズから生まれた技術がシーズになり、新たな需要を生み出した好例だ。




TEXT:世良耕太(Kota SERA)


PHOTO:山上博也(Hiroya YAMAGAMI)

 ジェイテクトは2017 年の「人くる展」で、高耐熱リチウムイオンキャパシタを初出展した(18年も同技術を展示)。同社は軽自動車から大型セダンまで、さまざまなタイプの電動パワーステアリング(EPS)を供給しているが、もっと大きな、例えば車重が3t を超えるようなSUV やピックアップトラックにEPS を適用しようとした場合、12V 電源では充分な軸力を発生させることができない。そこで、リチウムイオンキャパシタの6V を加えて18V に昇圧し、大型車にEPS を適用できるだけの出力を得ようという発想である。当初、ジェイテクトは外部に開発を依頼したが、耐熱性の問題をクリアできず(冷却システムレスにしたかった)、自社で開発する決断を下した。




 自社での高耐熱リチウムイオンキャパシタができ、発表をすると、大きな車両への適用範囲の拡大だけでなく、バッテリーが失陥した際のバックアップ電源としての用途が見いだされた。また、高耐熱性能が注目を集め、建設機械や鉄道からも引き合いがあった。-40℃の極低温特性を兼ね備えていることから、除雪車やスノーモービルへの適用も期待できる。「まぐろの冷凍倉庫の中で動かせる自動搬送ロボットを作りたいという話もあります」と技術者は説明した。過酷な環境に耐えられる電源が出てきたことで、さまざまな分野でブレイクスルーが期待できる。高耐熱リチウムイオンキャパシタは、多様な可能性を秘めた新技術だ。




 バス・トラック用ADAS 対応ステアリングシステムは、バス・トラックを自動運転化するために構築したシステムだ。現行の油圧パワーアシスト機構は残し、ハンドル操作をモーターが受け持つ仕組み。バス停にピタリと寄せる高精


度な操舵制御がこの技術のハイライトである。




 レアアースの使用を抑えた重希土類フリーモーターは今回が初出展。高い磁束密度を実現する構造を開発したのに加え、工程の簡略化により製造コストを抑えたのが特徴である。

現行ネオジム焼結磁石に含まれる重希土類(ジスプロシウム、テルビニウム)を用いずに成立させた重希土類フリーモーター(右)。従来の構造では充分なトルクが出ないため、磁石素材を頂点がラウンドしたVの字に成形することで磁束密度を高め、高トルク化を図っている。6工程あった工程を2工程に減らすことで、製造コストを大幅に低減。

バス・トラック用 ADAS対応 ステアリングシステム。ADAS の社会的ニーズは乗用車だけでなく、バスやトラックといった大型輸送車にもある。課題は車重が大きいため、大きなラック軸力を発生する必要があること。24V 電源であってもEPS化は難しいため、既存の油圧アシスト機構は残し、ドライバーのハンドル操作を、コラムに組み込んだラック同軸モーターが肩代わりする。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 高温はもちろん、-40℃の極低温特性を兼ね備え、除雪車やスノーモービルへの適用も可能