REPORT●青木タカオ(AOKI Takao)
スポーツクルーザーであったりメガクルーザーなど、いろいろな言われ方をするドゥカティ「ディアベル」。“クルーザー”というひと言では表現しきれない独創的なものが、そこにはたくさん詰まっているからなのだと筆者は思います。筋肉質なスタイルなのに、テールエンドは軽快であるなど、唯一無二の姿があるのです。
イタリアの方言で“悪魔”を意味するディアベル。初代は2010年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で発表され、翌11年に発売されると、その独創的なフォルムと強烈なほどに加速力のあるエンジンで瞬く間に人気モデルとなりました。
今回の新型『ディアベル1260』は2代目となりますが、ドゥカティジャパン PR&マーケティング 五条秀巳さんは、8年前を振り返って初代開発における経緯をまず教えてくれました。
「モンスターやスーパーバイクファミリーは連綿と続く歴史があったのですが、ディアベルにはそれがありません。まったく白紙の状態からつくっていきました。まず開発陣が考えたのは、威風堂々としたモンスターをつくりたいという想いです。じつは今まで社外に漏らすことはありませんでしたが、開発当初ではディアベルのことを“メガ・モンスター”と呼んでいたのでした」(五条さん)
まず、スポーツネイキッド「モンスター」から取り入れたのが、隆起した燃料タンク、高くスリムなテールエンド、低く身構えたハンドルバーとヘッドライト、そして露出したフレームとエンジンなどです。
次に「スーパーバイク」からは、後方にせり上がったテールエンドやフェアリングのスタイルを受け継ぎます。
一方で「クルーザー」からは、ローシートであったり、ハンドルバーからリアホイールへのライン、フロントホイールからリアホイールへのライン、2本のラインが描き出す緊張感が取り入れられました。
以上3つのデザインエッセンスを“ブレンド”し、重ね合わせることで『ディアベル』のスタイルが生まれたのです。独特のフォルムはこうして誕生したのでした。
そして、今回フルモデルチェンジとなった新型『ディアベル1260』には、「マッスルカー」「コミックのスーパーヒーロー」「ハイテク」という3つのデザインコンセプトがあります。
3つの要素を取り入れることで、ボリューム感あふれるフロントエンドやシャープでスリムなテールエンドなどを初代から踏襲しつつ、より大胆で力強く、流線形で洗練されたラインとなったのです。
大刷新された新型ですが、ひとつだけ変化していないモノがあります。それはアップライトなライディングポジションです。ハンドル位置とミッドマウントのフットペグ、そして足着き性に優れるローシートは、世界中のディアベル・オーナーの声をフィードバックしたもの。「そのままであって欲しい」という要望に応えたのでした。
この新型ディアベル1260はプロダクト・デザイン分野において最も権威のある国際的な賞の1つ、「レッド・ドット・デザイン賞:ベスト・オブ・ザ・ベスト」を受賞しました。
1955年から毎年開催されている「レッド・ドット・デザイン賞」は、デザインと革新性の点で、最も独創的で価値のある製品に授与されてきました。国際的に有名な専門家から構成される40人の審査委員会が、世界中の5,500を超える製品を評価した結果、新型ディアベル1260 に「レッド・ドット・デザイン賞:ベスト・ オブ・ザ・ベスト」の称号が与えらたのです。
ドゥカティにとって、この権威あるアワードの受賞は「1199 パニガーレ」(2013年)、「XディアベルS」(2016年)に続き3回目。ドゥカティ・スタイル・センターのマネージャーを務めるアンドレア・フェラレッシのコメントは次の通りです。
「プロダクト・デザイン分野にとって非常に重要かつ権威のあるレッド・ドット・デザイン賞を受賞することは、決して容易なことではありません。ドゥカティは、アイコン・モデルのディアベル1260によって、3 度目の栄誉に輝くことができました。これは、弊社の創造性と革新性が高く評価されたことを証明するもので、大変光栄なことです」
まずは一新されたスタイル。デザインをクローズアップしましたが、新しくなったシャシーやエンジンもまた紹介していきます。お楽しみに!!