初代カタナ=GSX1100S KATANAでは、ライディングポジションが前傾姿勢となるセパレートハンドルが標準装備されていましたが、国内仕様のGSX750Sでは当時の自主規制から“セパハン”の装備が見送られ、アップハンドルが採用されました。これは「耕耘機ハンドル」などと呼ばれ、不評に。オーナーらはこぞってセパハン化し、これに対し警察が取締り(“刀狩り”と恐れられました)をおこなう事態となってしまいます。そんなエピソードが残るカタナのハンドル。新型のアップハンドルにも注目が集まっていますが、開発テスト担当者の意見を聞くことができました。




REPORT●青木タカオ(AOKI Takao) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)



このアップハンドルは積極的に振り回すのに不可欠な存在です

従順で懐の深い乗り味のために

 新型カタナの走行テストを担当したスズキ株式会社 二輪カンパニー 二輪管理部 技術品質評価グループ、通称“テスト課”の大城光さんは、「ワインディングから街中までこなせるセッティングで、サーキット走行も楽しんでいただけると思います」と、完成度の高さに胸を張ります。




 また、「初代カタナを知るリターンライダー世代にも関心を持っていただきたい」と、「とっつきやすく、マイルドな乗り心地の印象に間口を広げています」と、幅広い層に支持されるよう意識し、開発テストを繰り返したことを教えてくれました。




 さらに大城さんは「ハンドリングについて、とても多くの時間を議論と走行テストに使いました」と明かします。その結果たどり着いたのが、ワイドでアップライトなハンドルだったのです。




「幅広なハンドルと、ハンドルに近い位置に座るライディングポジションにより、ライダー操作に対して従順で、懐の深い乗り味に仕上がりました。余裕のある乗車姿勢はライディングに自由度を与え、積極的に振り回したり、バイクを操る楽しさを感じてもらえると思います」




 ハンドルについて、さまざまな意見が飛び交っていますが、開発陣がこだわり抜いた渾身作であることがわかりました。報道向け発表会では、他媒体の記者から「ハンドルの交換はしてほしくないですか?」という質問が出ましたが、「はい、してほしくないです」とキッパリ。




“自在に操れる”という狙いがあり、何度も何度も試作とテストを繰り返した結果、誕生したハンドルバーなのです。



余裕ある走りを生むための電子制御

 新型カタナには、モード1、2、3、そしてOFFが選べるトラクションコントロールシステムが搭載されていますが、大城さんはこれにより、「カタナとライダーとの距離が一気に縮まった感覚を感じていただけ、心に余裕ができることでライディングを楽しむ時間が増えると思います」と、言います。




「走行テスト中は、制御の自然な介入と一般道でも使えるトラクションコントロールシステムを目標に開発しました。もし制御が介入することで車体の挙動が乱れたら、ライダーのイメージから外れる動きをすると、バイクを信用できなくなってしまいます。それがツーリングの場合であれば、1日を楽しめませんよね」




 さらに、大城さんは続けます。




「雨天でも制御してくれるようセッティングしましたので、これ(トラクションコントロールシステム)は重宝していただける装備だと思います。エンジンと車体が素直であるからこそ、トラクションコントロールシステムと調和がとれました」




 新型カタナのアップハンドルは、操る楽しさを感じてもらうため。そして、トラクションコントロールシステムの装備は、心に余裕をもたらすためであることが、大城さんの話しでわかりました。



スズキ株式会社 二輪カンパニー 二輪管理部 技術品質評価グループ、大城光さん(写真右)。写真左は新型カタナのチーフエンジニア 寺田覚さん。

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情報提供元: MotorFan
記事名:「 耕耘機ハンドルなんてもう言わせない! 新型カタナのアップハンドル採用には理由があった。/スズキ