REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)
PHOTO●藤村のぞみ(FUJIMURA Nozomi)
「ローライダー」は70年代に世界で流行したチョッパー・スタイルを源流に持つ、いわばメーカーズカスタムモデルである。ちなみにチョッパーとは往年の名画「イージー・ライダー」に出てきたような角度を寝かせた長いフォークやロー&ロングなシルエットが特徴のカスタムのこと。ちょっとアウトロー的な香りが漂う、ハーレーならではのスタイルが魅力だ。以来、ローライダーはダイナファミリーを代表する人気モデルとして君臨。そして2018年、新ソフテイルとの統合により伝統を受け継ぎつつも完全新設計のニューモデルとしてハーレーの歴史に新たな一頁を記すことになった。参考までにダイナとはスポーツスター系の走りの良さにビッグツイン系のパワーを併せ持つ、ハーレーの中核を担ってきたシリーズである。その中でもアイコン的なモデルがこのローライダーだったのだ。
エンジンは従来型のツインカム103の1689cからミルウォーキーエイト107の1745ccへと排気量がアップされ、エンジンは力強さを増した。新ソフテイルではエンジンマウント方式をラバーブッシュからリジッドへと変更したことで鼓動感もよりダイレクト伝わってくる一方、バランサーによって振動は見事に打ち消されている。高めのギヤでドコドコ感を味わいながら高速道路をクルーズするのがなんとも楽しい!
フロントブレーキがシングルディスクになり車重が11kg軽量化されたこともあり、フロント19インチの安定感はそのままに軽快さが増した感じ。片やリヤタイヤが160から180サイズへとワイド化されたことでコーナリングは安定感がアップ。ハンドルがより近く、ステップは前方寄りのミッドフォワードに見直されるなど、本来のカスタムクルーザーに似合ったライポジに仕上げられた感じだ。従来モデルが持っていた豪快な走りはそのままに、デザインや装備は現代的に洗練された、まさしく正常進化したローライダーの姿だと思う。
前後16インチに深いフェンダー、サドル型シートにフットボードなど1950年代のハーレーを彷彿させるノスタルジックな雰囲気を持つ「ヘリテイジ・クラシック」。新型では伝統を受け継ぎつつも、軽快感のあるモダンなスタイルへと生まれ変わった。
試乗したのはミルウォーキーエイト114仕様。最新の空冷Vツインは排気量1868ccから最大トルクで従来から25%アップの155Nm/3000rpmを吐き出す。排気音はジェントルだが迫力があり、より低速からトルクが弾けている感じ。分厚いトルクで巨体を押し出していくハーレーならではの気持ち良さはより深まった。
ライポジも脱着式のシールドがコンパクトになって目線にかからなくなり、ハンドルバーも極端に高くない自然な位置にセット。車重も330kgと従来から17kgも軽くなり、取り回しもだいぶ楽になった。
走りは見た目によらず軽快でハンドリングも素直で穏やか。雰囲気はクラシカルだがハンドリングはいたって現代的なのだ。理由としては、前後16インチの小径かつ細めのタイヤ(フロント130/リヤ150)を履いていることも挙げられる。キャスター角も立ち気味でディメンションが元々スポーティな設定なのだ。だからワインディングも大の得意。よく動くリヤショックは乗り心地も良く、ABS付きブレーキも扱いやすく確実に止めてくれるなど、高速クルーズでは大船に乗ったような安心感もある。
大型スクリーンやどっかり座れるシート、レザー風サイドバッグにクルーズコントロールも標準装備されるなど、古き良き時代のハーレーの姿を再現したツーリングモデルである。豪華装備ではあるがサイズ的にツーリングファミリーほど大きくないのが美点。普段使いからロングツーリングまで幅広く使えそうなモデルだ。
ファットボブは新ソフテイルの中でも最も大きくイメチェンしたモデルだ。元々ダイナ系のパフォーマンスクルーザーの位置付けだったが、新型は一転して現代的でスポーティなデザインになった。従来の2灯ヘッドライトはコンパクトなLED単眼となり、巨大ファイターを思わせるアグレッシブなフォルムへと一新されている。
今回は試乗したのは排気量1745ccのミルウォーキーエイト107仕様。114仕様の爆発的なトルクに比べるとやや大人しい感じだが、逆にエンジン回転がスムーズでスロットルも開けやすく、扱いやすさにつながっている。若干だが高回転まで回せるので、見方によってはよりスポーティな走り方もできる。僅かな排気量の違いだがキャラクターがけっこう異なっていて興味深い。
ファットボブが走りにこだわったモデルであることは装備を見れば分かる。ハーレーでは珍しいカートリッジ式倒立フォークとダブルディスクが装備され、リヤショックもロングストローク仕様が採用されるなど足まわりも充実。キャスター角も28度とネイキッド並みに立っている。ハンドリングもユニークで、フロント150に対してリヤ180サイズというタイヤの組み合わせから、倒し込みでは前輪がゴロっと転がるような独特の手応えが楽しめる。前後16インチタイヤのおかげで旋回性も高く、コーナリングではスロットルを開けさえすれば後輪が路面を蹴ってグイグイ向きを変えていく。
従来のハーレーのイメージから大胆に飛び出したデザインや走りにこだわった装備など、あえてハーレーらしくないバイクを作ったチャレンジ精神も称えたくなる。それでもやはり根底に流れるスピリットは不変であり、荒々しいエンジンの鼓動と重厚感あふれる走りの魅力はハーレーそのものである。