4代目プリウスに搭載された2ZR-FXE。世界で初めて最大熱効率40%を達成した量産ガソリンエンジンである。しかもトヨタ方式のHEVは効率の高い領域を多用する運転だから、受け取る燃費効果は大きくなる。


TEXT:牧野茂雄(Shigeo MAKINO)

プリウス、熱効率40%への道程(上)から続く

「いちばんの功績はEGRです。EGR量を従来の15%から25%へと拡大しました。熱効率に大きく寄与したのはEGRです」




 吸気マニフォールドを見せていただいた。素材はガラス繊維30%混入のPA(ポリアミド)だ。分解すると内部にEGR通路がある。さらにそのEGR通路を分解すると、まるでエンジンの排気管のように4-2-1になっていた。




「気筒ごとのEGR量のばらつきを抑えるため、このようなトーナメント型の通路設計にしました。通路を構成する樹脂部品の組み立ては振動による溶着です。水冷式のEGRクーラーを使うためEGRガスの温度は水温と同じ程度まで下がっており、通路は耐熱温度120°CのPAで十分です」



上は吸気マニフォールドを分解したもの。4気筒分の吸気出口の真上に横長のトーナメント型EGR流路が2分割の別部品で取り付けられている。その通路の上にを吸気マニフォールドの部品が載って下の写真のようになる。EGR量の増加が熱効率向上にはもっとも大きな効果を発揮したという。

 吸気マニフォールドの気筒ごとの出口にEGR通路が見える。その通路出口の形状も気筒ごとに違う。




「出口形状もチューニングしました。気筒ごとに均一なEGR流量を確保できたことで、EGRガスが少ない気筒でノッキングが起きることを回避しています。ノッキングが起きてしまい、その対策で遅角させるということがなくなりました」




 通路形状はCFD解析で決めたのかと思ったら、すぐさま否定された。




「解析だけではできませんでした。試作してみると結果が違うのです。最後は粘土で現物を作って確認しました」




 そう。エンジン開発の現場では、CFDが進化した現在でも必ずアナログ手法が用いられる。解析は万能ではない。答えに近づけてはくれるが、最後に答えを見つけるのはエンジニアの知見である。2ZR-FXEでは最大EGR量を従来の約1.6倍にできたことが今回の熱効率40%へのもっとも大きなジャンプだったと言う。ちなみに、今回は三元触媒を通過した排気をEGRに使用しており、EGR配管内にデポジットがたまることを回避している。

排気管(画面右側)を出た排気を三元触媒直後で取り出し、この写真の水冷式EGRクーラーを経て温度を下げ、樹脂製マニフォールド内の分配機構へとガスが流れる。トヨタはいち早くクールドEGRの効果に着目し、先代2ZR-FXEに採用した。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 トヨタ・プリウス、熱効率40%への道程(下)EGR、燃焼室、そして……