YZF-R25にファン待望の新型が登場。エンジンと車体は従来型を踏襲したマイナーチェンジという位置付けだが、その実はカウルやタンクなどの形状を全面的に見直すことで空力性能を向上。倒立フォークを初採用するなど足まわりも強化されてコーナリング性能もさらに高められている。開発背景を踏まえつつ実走テストによって新R25の実力をチェックしてみた。


REPORT●ケニー佐川(SAGAWA Kentaro)


PHOTO●重松浩平(SHIGEMATSU Kouhei)/山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ヤマハ・YZF-R25……599,400円~



サーキット性能を向上

 YZF-R25は“毎日乗れるスーパーバイク”をコンセプトに2014年にデビュー。R1を筆頭とするRシリーズのエントリーモデルとして若者層を中心に人気を博してきた。その後、CBR250RRやニンジャ250などの強力なライバルの出現。これに対抗する次世代モデルへの期待が高まる中、まさに満を持して登場したのが新型R25である。




 250ccスポーツは今やグローバルモデルとしてアジアを中心に世界中で人気が沸騰しているクラスである。生産拠点のインドネシアでも「もっとレーシーにしてほしい」とか「MotoGPマシンレプリカが増しい」という要望が非常に多いという。こうしたファンの期待に応えつつ、従来のR25が持つ扱いやすさや素直な乗り味を追求した結果が今回のマイナーチェンジなのだ。つまり、見た目は思い切りレーシーに振りつつ、中身は基本的に変えない中で最大限にパフォーマンスを引き出していく。そこで取り組んだ2019年型の狙いは主に3つに集約される。




 まず徹底的に空力を追求した。MotoGPマシンのM1を思わせる精悍なフロントマスクはカウル形状を全面的に見直し、スクリーンもレーサー形状にするなどCD値を7%向上することで最高速度を8km/hアップ。2つめはコーナリング性能の向上だ。具体的には倒立フォークを新採用することで、ブレーキングからコーナー進入時でのフロントまわりの剛性感や接地感を格段に高めている。想定しているのはサーキットレンジでの戦闘力アップで、タンク形状を改めハンドル位置も下げることで旋回中のライダーのホールド感も高めている。そして3つめは高級感だ。新採用のフル液晶メーターには精密なバーグラフ式タコメーターを採用し走りのエキサイトメントを演出。ヘッドライトも今回からLED2眼タイプが採用されるなど、よりスポーティに洗練されている。


 ちなみに開発者の話では、従来のR25がストリートとサーキットの比重を「5:5」とすると、新型では「3.5:6.5」程度にイメージしたということだ。

コーナーでより突っ込める

 低く構えた眼光鋭いフロントマスクやM字型ダクトなど、R6やR1につながる正統派スーパースポーツルックは文句なくカッコいい。このスタイルを待っていたというファンも多いと思う。R25本来のしなやかな乗り味やスムーズで扱いやすいエンジン特性はそのままに、走りはよりスポーティさを増している。乗ってすぐにしっくりくる感じ、ライダーの感性に寄り添う感覚はヤマハならではだ。




 ライポジはハンドルが22mm低くなったが違和感はなく、サーキットでは逆にピタッと決まる。倒立フォークが採用されてフロントまわりに剛性感が増したことで思い切ってブレーキングできるし、コーナーに向けての倒し込みでもフロントの接地感が増して安心して飛び込んでいけるようになった。従来よりも明らかに高い速度で進入できる気がするのだ。タンクも20mm低くなったことでストレートでも上体を伏せやすく、またエッジ部分が張り出した形状になっているため、ハングオフしたときに肘や外ヒザでタンクをホールドしやすい。結果、マシンとの一体感も増している。シフトフィールも非常にスムーズかつ正確でエンブレもきれいに逃がしてくれるのでシフトワークが楽しくなる。


 新型R25は元からのユーザーフレンドリーな持ち味は活かしつつ、軸足をストリートからサーキットへと少しだけ移動した感じだ。今回タイムは計測していないが、サーキットでは最新ライバルともいい勝負だと思う。きっとスペック以上の速さを見せてくるはずだ。

ディテールチェック

ハンドルが22mm低くなり上体の前傾度はやや増したが、ステップとシートは従来どおり。街乗りでも十分いける感じの余裕のあるライポジだ。



サーキットを想定して上体を伏せると、カウルとスクリーンが作るストリームラインにちょうど上体が隠れる感じになる。走行風をうまく後方に流してくれるはずだ。

シート高は従来モデルと同じ780mm。シート前方が絞り込まれたスリムなライポジのおかげで足着きはすこぶる良い。ライダー身長179cm。

YZF-R25
YZF-R6


YZF-R1

Rシリーズ3兄弟をライポジで比較。R6、R1に比べるとだいぶ上体が起きて余裕がある。R6は車高が高く、R1はさらに長くなり、前傾度も増していくことが分かる。

R1イメージのフル液晶ディスプレイの採用によりグレード感を向上。精密なバーグラフ式タコメーターがレースマインドを盛り上げる。

インナーチューブ径φ37mmの倒立フォークを採用し、100km/h超での旋回安定性や安心感が大幅に向上。フルアジャスタブル式で細かいセッティングが可能だ。

YZF-R25/ ABS主要諸元

〈 〉内は「YZF-R25 ABS」


認定型式/原動機打刻型式:2BK-RG43J/G402E


全長×全幅×全高:2,090mm×730mm×1,140mm


シート高:780mm


軸間距離:1,380mm


最低地上高:160mm


車両重量:167kg〈170kg〉


燃料消費率*1


国土交通省届出値 定地燃費値*2:37.7km/L(60km/h) 2 名乗車時


WMTC モード値(クラス)*3:27.2km/L(クラス3、サブクラス3-2) 1 名乗車時


原動機種類:水冷・4 ストローク・DOHC・4 バルブ


気筒数配列:直列2 気筒


総排気量:249cc


内径×行程:60.0mm×44.1mm


圧縮比:11.6:1


最高出力:26kW(35PS)/12,000r/rpm


最大トルク:23N・m(2.3kgf・m)/10,000rpm


始動方式:セルフ式


潤滑方式:ウェットサンプ


エンジンオイル容量:2.40L


燃料タンク容量:14L(「無鉛レギュラーガソリン」指定)


燃料供給方式:フューエルインジェクション


点火方式:TCI(トランジスタ式)


バッテリー容量/型式:12V,7.0Ah(10HR)/GTZ8V


1 次減速比/2 次減速比:3.043(70/23)/3.071(43/14)


クラッチ形式:湿式、多板


変速装置/変速方式:常時噛合式6 速/リターン式


変速比:1 速 2.666/2 速 1.882/3 速 1.454/4 速 1.200/5 速 1.037/6 速 0.920


フレーム形式:ダイヤモンド


キャスター/トレール:25°00´/95mm


タイヤサイズ(前/後):110/70-17M/C 54S / 140/70-17M/C 66S (前後チューブレス)


制動装置形式(前/後):油圧式シングルディスクブレーキ/油圧式シングルディスクブレーキ


懸架方式(前/後):テレスコピック/スイングアーム


ヘッドランプバルブ種類/ヘッドランプ:LED/LED




*1:燃料消費率は、定められた試験条件のもとでの値です。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法、車両状態(装備、仕様)や整備状態


などの諸条件により異なります。


*2:定地燃費値は、車速一定で走行した実測の燃料消費率です。


*3:WMTCモード値は、発進、加速、停止などを含んだ国際基準となっている走行モードで測定された排出ガス試験結果にもとづいた計


算値です。走行モードのクラスは排気量と最高速度によって分類されます。

佐川健太郎

ライダープロフィール:


早稲田大学教育学部卒業後、情報メディア企業グループ、マーケティング・コンサルタント会社などを経て独立。趣味で始めたロードレースを通じてモータージャーナルの世界へ。


雑誌編集者を経て現在はジャーナリストとして2輪専門誌やWEBメディアで活躍する傍ら「ライディングアカデミー東京」校長を務めるなど、セーフティライディングの普及にも注力。株式会社モト・マニアックス代表。「Webikeバイクニュース」編集長。


日本交通心理学会員 交通心理士。MFJ認定インストラクター。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 【新型YZF-R25】ライポジが変わった? コーナリング性能はどうなった? サーキット走行で見えた真の実力。