REPORT●北秀昭(KITA Hideaki)
>>道路交通法 第30条(追越しを禁止する場所)
1:道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾こう配の急な下り坂
2:トンネル(車両通行帯の設けられた道路以外の道路の部分に限る。)
3:交差点(当該車両が第三十六条第二項に規定する優先道路を通行している場合における当該優先道路にある交差点を除く。)、踏切、横断歩道又は自転車横断帯及びこれらの手前の側端から前に三十メートル以内の部分
■反則行為:追越し禁止違反
■罰則:3か月以下の懲役または5万円以下の罰金(道路交通法第119条1項二号)
■反則金:二輪7000円/原付6000円
■点数:2点
※前車が「原動機付自転車」の場合は、追越し禁止には当たらない。
「追越し」とは、道路交通法で以下のように定義されている。
>>道路交通法 第2条
21:車両が他の車両等に追付いた場合において、その進路を変えてその追付いた車両等の側方を通過し、かつ、当該車両等の前方に出ることをいう。
「追越し」とは、進路を変えて=ウインカーを出して、車線をまたいで他の車を追抜く行為。
※注:バイクの場合、物理的に車線をまたがなくても追越し→同じ車線で追抜きできる。
一方、「追抜き」は、進路を変えず=ウインカーを出さず、進行中の前の車両の前方へ出ること。つまり、車線を変更せず、車両を抜く行為が「追抜き」となる。
※注:バイクの場合、上記で記した通り、これが可能となる。
「追越し」と「追抜き」の決定的な違いは、【進路変更をするか・しないか】にあるといえる。
なお、横断歩道等及びその手前の側端から30m以内の道路では、「追越し」に加え、「追抜き」も禁止されている。
>>道路交通法 第38条(横断歩道等における歩行者等の優先)
3:車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(軽車両を除く)の側方を通過してその前方に出てはならない。
※注
バイクの「すり抜け」が違反になるか?ならないか?という大きなターニングポイントが、この点にある。
バイクの追越しは、右側の車線にはみ出ないことがほとんど。そのため、違反の対象となる「追越し」ではなく、違反の対象とならない「追抜き」に該当する場合が多い(もちろん、車線をはみ出したら違反となる)。
また、信号待ちや渋滞で停止している車両の前に出る行為は、基本的に「追抜き」ではなく、道交法にはない「すり抜け」として扱われる。
2019年4月現在、「すり抜け」を禁止する法律はない。そのため、安全が確保できる状況であれば、バイクは交差点付近でも、車両の前に出ることが可能となっている。
>>道交法第28条(追越しの方法)
1:車両は、他の車両を追越そうとするときは、その追越されようとする車両(前車)の右側を通行しなければならない。
2:車両は、他の車両を追越そうとする場合において、前車が第25条第二項又は第34条第2項若しくは第4項の規定により道路の中央又は右側端に寄つて通行しているときは、前項の規定にかかわらず、その左側を通行しなければならない。
>>道路交通法 第50条(交差点等への進入禁止)
1:交通整理の行われている交差点に入ろうとする車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、交差点に入った場合においては当該交差点内で停止することとなり、よって交差道路における車両等の通行の妨害となるおそれがあるときは、当該交差点に入ってはならない。
2:車両等は、その進行しようとする進路の前方の車両等の状況により、横断歩道、自転車横断帯、踏切又は道路表示によって区画された部分に入った場合においてはその部分で停止することとなるおそれがあるときは、これらの部分に入ってはならない。
■反則行為:交差点等進入禁止違反
■罰則:5万円以下の罰金
■反則金:二輪6000円/原付5000円
■点数:1点
>>道路交通法 第32条
1:車両は、法令の規定若しくは警察官の命令により、又は危険を防止するため、停止し、若しくは停止しようとして徐行している車両等又はこれらに続いて停止し、若しくは徐行している車両等に追付いたときは、その前方にある車両等の側方を通過して当該車両等の前方に割り込み、又はその前方を横切ってはならない。
>>道路交通法施行令第2条
2:車両等は、停止位置を越えて進行してはならないこと。
■反則行為:信号無視(赤色等)
■罰則:3ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金
■反則金:二輪7000円/原付6000円
■点数:2点
道路の一番左側にある白線の外側は、「歩道があるか・ないか」によって呼び名が異なるのがポイント。
「歩道が別途設けられた道路の、白線の外側」は、路肩と呼ばれ、道交法ではバイクの走行が禁止されていない(クルマは不可)。ただし、「左側追越し禁止」の原則に違反する可能性もあるので、取り締まる警察官によっては、取り締まりの対象となる場合もある。
一方、「歩道のない白線の外側」は路側帯と呼ばれ、歩行者優先のため、バイク(原付を含む)の通行が禁止されている(自転車の走行は可能)。
なお、高速道路にある路側帯は、緊急事態に対応するためのエリアであるため、クルマはもちろん、バイクも走行禁止。
渋滞中の高速道路で、バイクが時々、路側帯を走行しているのをみかけるが、あれは違反の対象となるだけでなく、パンク(釘や異物を踏んでしまうため)、また故障車との接触や衝突等、トラブルを招く危険があるため、絶対に避けるべし。
>>車両制限令第九条(路肩通行の制限)
歩道、自転車道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路を通行する自動車は、その車輪が路肩(路肩が明らかでない道路にあっては、路端から車道寄りの0.5m(トンネル、橋又は高架の道路にあつては、0.25m)の幅の道路の部分)にはみ出してはならない。
■反則行為:通行区分違反
■罰則:3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金
■反則金:二輪7000円/原付6000円
■点数:2点
以上、道路交通法を元に、バイクのすり抜けに関する事項を検証してきた。
「すり抜けは違反か?」という疑問は、インターネット上でもアレコレ議論&説明されているが、今現在(2019年5月)の結論からいえば、「違反といえば違反だし、違反でないといえば違反でない」。道交法において、バイクのすり抜けは、“違反とも、違反でないともとれるグレーゾーン”を多く含んでいるということだ。
とはいえ、上記で説明した道交法を完璧にクリアし、「すり抜け」するのは至難のワザだろう。
冒頭で紹介した「クルマが思わぬ動きをする場合があるので、事故を防ぐためにも避けていただきたい」という警察官の言葉の通り、すり抜けには、「歩行者が突然飛び出してくる」「停車中のクルマがドアを開けて転倒」「停車中のクルマが突如進路を変えて接触」「クルマのミラー等に接触する」「クルマのボディに擦る」等々、多くのリスクがある。
機動性の高いバイクは、渋滞時、すり抜けによって時間が節約できる。この点も、バイクの大きな長所だろう。ただし、すり抜けはドライバーを「イラっと」させる行為の上位にランキングされている。
すり抜けには、相手を不快にさせないマナーも必要。このことをくれぐれもお忘れなく。