一方、軽自動車の660ccエンジンは、依然として64psを上限とする自動車メーカー間の協定がいまだに存在する。
では、最初に国産エンジン高出力ランキングから紹介しよう。
エンジンの出力を上げるには、①排気量を上げる ②過給する というふたつの手法がある。したがって、ターボ過給された大排気量のエンジンが上位にくるのは当然だ。
1位は予想通り、日産GT-Rが搭載するVR38DETT3.8ℓV6ツインターボエンジンだ。それもGT-Rニスモが搭載するハイパワー版である。
エンジン形式:3.8ℓV6DOHCターボ
エンジン型式:VR38DETT
排気量:3799cc
ボア×ストローク:95.5mm×88.4mm
圧縮比:9.0
最高出力:600ps(441kW)/6800rpm
最大トルク:652Nm/3600-5600rpm
である。
2位は、日産GT-Rのレギュラーモデル。それでも570psだから、やはりモンスターエンジンと言っていいだろう。
3位のホンダNSXは、3.5ℓV6ターボにモーターを組み合わせるハイブリッドスーパースポーツだから、507psがNSXの真の意味での最高出力ではない。JNC型エンジンは、ターボ過給をしながらも最高出力を6500-7500rpmという高回転で発生させるのがホンダらしい。
エンジン形式:3.5ℓV6DOHCターボ
エンジン型式:JNC
排気量:3492cc
ボア×ストローク:91.0mm×89.5mm
圧縮比:10.0
最高出力:507ps(373kW)/6500-7500rpm
最大トルク:550Nm/2000-6000rpm
ここまでが「500ps級」である。
レクサスLC500が搭載する2UR-GSE型5.0ℓV8エンジンは、現在では少数派となっている大排気量自然吸気エンジン。ショートストロークで高回転まで回してパワーを出すエンジンだ。
エンジン形式:5.0ℓV8DOHC
エンジン型式:2UR-GSE
排気量:4968cc
ボア×ストローク:94.0mm×89.5mm
圧縮比:12.3
最高出力:477ps(351kW)/7100rpm
最大トルク:540Nm/4800rpm
給気方式:NA
5位は同じくレクサスのLS500が搭載する新しい3.5ℓV6ターボエンジンのV35A-FTS型だ。2基のターボで過給して422psを絞り出す。排気量はLC500の2UR-GSEより1.5ℓも小さいが、最大トルクは60Nm増しの600Nmである。
エンジン形式:3.5ℓV6DOHCターボ
エンジン型式:V35A-FTS
排気量:3444cc
ボア×ストローク:85.5mm×100.0mm
圧縮比:10.4
最高出力:422ps(310kW)/6000rpm
最大トルク:600Nm/1600-4800rpm
給気方式:ターボ
6位からは「300ps級」である。
まだ国内発表されていないが、トヨタ・スープラRZが搭載する3.0ℓ直6ターボエンジンが第6位。しかし、これはBMW製エンジンだから、「国産エンジン」とは言えないかもしれない。オーストリアのマグナシュタイヤーで生産されるから「国産車」でもないし……。
エンジン形式:3.0ℓ直6DOHCターボ
エンジン型式:B58B30B
排気量:2998cc
ボア×ストローク:82.0mm×94.6mm
圧縮比:11.0
最高出力:340ps(250kW)/5000-6000rpm
最大トルク:500Nm/1600-4500rpm
給気方式:ターボ
日産フェアレディZが搭載するV6エンジンは、長い系譜と豊富なバリエーションを誇るVQエンジンの高回転バージョン。3.7ℓはいまや大排気量と言っていいし、自然吸気で高回転まで気持ちよく回せる貴重なユニットである。
エンジン形式:3.7ℓV6DOHC
エンジン型式:VQ37VHR
排気量:3696cc
ボア×ストローク:95.5mm×86.0mm
圧縮比:11.0
最高出力:336ps(247kW)/7000rpm
最大トルク:365Nm/5200rpm
給気方式:NA
2.0ℓの排気量から320psを発揮するホンダ・シビックタイプRのK20C。タイプRを名乗るに相応しいハイスペックな直4ターボエンジンだ。
エンジン形式:2.0ℓ直4DOHCターボ
エンジン型式:K20C
排気量:1995cc
ボア×ストローク:86.0mm×85.9mm
圧縮比:9.8
最高出力:320ps(235kW)/6500rpm
最大トルク:400Nm/2500-4500rpm
給気方式:ターボ
超長寿ユニットであるEJ型水平対向4気筒のもっとも高出力版を積むのがWRX STI。圧縮比8.0もボア×ストローク:92.0mm×75.0mmというショートストロークも、今後はなかなか登場しないであろう極めて20世紀的な、しかし名機と言っても反論は出ないユニットだ。
エンジン形式:2.0ℓ水平対向4気筒DOHCターボ
エンジン型式:EJ20
排気量:1994cc
ボア×ストローク:92.0mm×75.0mm
圧縮比:8.0
最高出力:308ps(277kW)/6400rpm
最大トルク:422Nm/4400rpm
給気方式:ターボ
と言ったあたりが「エンジンの最高出力から見たランキング」である。
でも、これだけでは面白くない。次ページでは、コストパフォーマンスから見た最強エンジンランキングを紹介しよう。
コストパフォーマンスへ行く前に、まずは1psを何ccの排気量から生み出しているか計算してみた。
排気量(cc)を最高出力で割った指数である。
同様に、1ℓの排気量から何psを生み出しているか?という、よく「リッターあたり○ps」と表記される指標とともに見ていこう。
ここまでがリッター当たり150psオーバーのエンジンである。
5位 6.89cc/ps 145.2ps/ℓ:JNC(ホンダNSX)
6位 8.16cc/ps 122.5ps/ℓ:V35A-FTS(レクサスLS500)
7位 8.82cc/ps 113.4ps/ℓ:B48B30B(トヨタ・スープラRZ)
8位 10.4cc/ps 92ps/ℓ:2UR-GSE(レクサスLC500)
9位 11.0cc/ps 90.9ps/ℓ:VQ37VHR(日産フェアレディZ)
となる。
ちなみに、軽自動車の660cc直3ターボエンジンの最高出力は64psに制限されているから、これをこの指標にすると
10.28cc/ps 97.2ps/ℓ
となる。つまり、ホンダS660もスズキ・アルトワークスもターボエンジン搭載モデルは、このランキングでは8位にランクインすることになる。
さて、いよいよコストパフォーマンスから見た最強エンジンだ
コストパフォーマンスの指標は簡単だ。
1psをいくらで買えるか
である。この数字が低ければ低いほど「コストパフォーマンスが優れている」ことになる。
高出力エンジン搭載モデルといくつかのスポーツカー、スポーティカーを加えてランキングを作成してみた。
第13位 4万6746円/ps ホンダNSX
NSXの価格は2370万円。これを507psで割ったのがこの数値だ。しかし、NSXにはモーターという強い味方がいるので、厳密にはこのランキング、というわけではない……。
第12位 3万1167円/ps 日産GT-Rニスモ
GT-Rニスモの価格は1870万円! いくら600psでも、馬力コストパフォーマンスは低いと言わざると得ない。
第11位 3万949円/ps ホンダS660
S660が搭載するS07A型0.66ℓ直3ターボエンジンの最高出力は64ps。価格がほぼ200万円(198万720円)だから、1ps当たりの価格は高めになってしまう。
第10位 3万84円/ps レクサスLC500
第9位 2万3256円/ps レクサスLS500
第8位 2万294円/ps トヨタ・スープラRZ
スープラRZは、正式な価格は発表されていないが、690万円ですでに予約が開始されているらしいので、その価格から計算した。
第7位 2万216円/ps スズキ・アルトターボRS
第6位 1万9350円/ps マツダ・ロードスターS
ロードスターは、1.5ℓ直4DOHCエンジンのSKYACTIV-G1.5を搭載する。最高出力は132psである。
第5位 1万7949円/ps 日産GT-R(レギュラーモデル)
第4位 1万4064円/ps ホンダ・シビックタイプR
第3位 1万2939円/ps スバルBRZ
第2位 1万2553円/ps スバルWRX STI
栄えある1位は
である
第1位 日産フェアレディZ 1万1629円/ps
おそらく、3.7ℓV6自然吸気エンジンを搭載したスポーツカーが390万円そこそこで買えるというのは、現在ではある意味奇跡なのかもしれない。しかも、336psという高出力を誇るVQエンジンの完成形エンジンが積まれているのだ。