REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●遠藤正賢、日産自動車、ジヤトコ
新型デイズ&eKはプラットフォームからエンジン、トランスミッションに至るまで、ハードウェアのほぼすべてが一新されているが、とりわけ大きいのはプラットフォームの一新によるホイールベースの65mm延長=エンジンルームの65mm短縮だろう。
新型デイズの開発を指揮した日産の齊藤雄之CVEは、「これを実現するためにはパワートレインをより小さくする必要があった」というが、その一環としてCVTにもメスが入れられることとなった。
そこでジヤトコはサイズや重量、コストなどの面でより軽自動車にマッチした、軽自動車専用のCVTを新たに開発した。それが新型デイズ&eKに採用された「CVT-S(JF021E)」というわけだ。
CVT-Sではまず副変速機を省略して、変速比幅を7.8から6.0へと縮小している。これは、140km/hでスピードリミッターが働くうえ、実際の使われ方としても高速道路より街乗りの方がメインとなる軽自動車においてはむしろ合理的だろう。
また変速比を、従来型デイズ&eKでは前進4.007~0.550、後退3.771、最終減速比4.575(NA車)または4.283(ターボ車)としていたところ、新型では全車とも前進2.411~0.404、後退2.295、最終減速比6.540に変更。
さらには低フリクションボールベアリングやプーリー油圧室タンデムピストン構造採用、ギア部へのバッフルプレート設定、潤滑配分やプーリー保持油圧の見直しなども加え、CVT7(JF015E)に対し全体のフリクションを約8%低減した。
また、トルク容量を100Nmとしたうえで、プーリー内径の軸を細くしたり、シーブ部や油圧室の部品を薄肉化するなど、トルクコンバーター以外の部品を見直し。65mm短縮されたエンジンルームに搭載できるサイズに収めると同時に、CVT7(JF015E)よりも約6%・4.2kg軽く仕上げている。
その一方、新型デイズ&eKでは静粛性向上も大きな開発テーマになったこともあり、CVT-Sにはダブルピニオンタイプの4遊星ギヤ構造を採用して、後退時のギヤノイズを低減。同時にハウジングの剛性を高め、エンジンと締結するドッキングボルトの点数を増やして結合剛性も高めることで、パワートレイン全体の振動を低減した。