1999年にホンダ初のハイブリッド車として登場した初代インサイトは独自のハイブリッド技術“ ホンダIMAシステム” で低燃費なHVを低価格で提供した。2009年に発売された二代目も同様のコンセプトで性能を進化させ人気を博す。そして今回の新型は、ハイブリッドシステムを最新の“ SPORT HYBRID i-MMD” に刷新。走りを支えるボディにも軽量・高剛性な最新プラットフォームが採用され、燃費性能だけでなくプレミアムな上質さをも獲得し、より深化することとなった。




TEXT◉安藤 眞


図版解説◉安藤 眞/編集部


新型ホンダ・インサイトとトヨタ・プリウスのボディサイズとラゲッジスペースを比較してみる

精密管理で実現したダブルステッチ

助手席側のダッシュボードトリムには、本物のステッチが入ってい る。このカテゴリーでは型押しで済ませるケースも少なくないが、インサイトは本物にこだわった。形状が立体的なので、表皮は手作業で貼られる。

8インチナビを標準装備

8インチ大型ディスプレイのカーナビを全車標準装備。スイッチ類も含めて専用設計だ。Hondaインターナビ+リンクアップフリーに対応しているのはもちろん、Apple CarPlayにも対応している(Android Autoには非対応)。

細やかな配慮で使いやすい大型コンソールトレー

12V電源ソケットと2つのUSBジャックを備えるセンターコンソールには、大型のスマホも収まるトレーを配置。傷つきや滑りを抑えるラバーマット上面には凸形状のラインが施され、スマホの取り出しを容易にしている。

HVながらゆとりのある室内空間を実現

ハイブリッド車はモーターや駆動バッテリーなどを設置する特性上、室内空間の確保には不利となる。しかしインサイトでは関連部署の連携に加え、空間効率が徹底的に追求された空間設計とシステムのコンパクト化により、大人4人がくつろげる空間とトランク容量を確保した。(単位=mm ※数値はVDA方式によるHonda測定値)

スタイリッシュフォルムは後席乗員の視界にも貢献

「コートの襟を立てたような」前席シートのフォルムは、後席乗員の視界にも配慮されデザインされたという。先代モデルに対し座面長とシートバック高を延長。肩まわりは薄型化により、ゆったり感を高めた。

補機用鉛バッテリーを室内に設置

通常はエンジンルームやトランク内に設置される補機バッテリーをセンターコンソール内に配置。各種機能が集中する場所だけに、シミュレーション用のモデルをつくり、メンテナンス性や安全性の検証なども行なわれた。

室内空間を犠牲にしないIPUの配置



後席下に最大深さ180㎜のパン(左図赤色部)を設けてIPUを搭載。IPUをフロア下の室外方向に配置し室内空間を確保。またシートクッションもウレタン密度のチューニング等により、快適な座り心地を提供する。


【新旧比較】新型インサイトと初代&二代目のボディサイズを比べてみる〈HONDA INSIGHT〉

新世代プラットフォームを最適化

軽量・高剛性・低重心・低慣性が追求された新世代プラットフォームを採用。図の赤い部分が基本骨格を共有するシビックからの主な変更点で、安全性や静粛性を確保し、i-MMD搭載に対するネガ要素の払拭を行なっている。

高張力鋼板を積極的に採用したボディ

軽量で強度の高い高張力鋼板を積極的に採用し、世界トップレベルの衝突安全性と、優れた運動性能を発揮する土台となるボディが構築された。

インナーフレーム構造

ボディ全体の骨格部材を組み立ててから外板パネルを溶接する、インナーフレーム構造を採用。主要なフレームの結合効率を高め、強固なボディ骨格を形成することで、補強材を最小限にして軽量化を実現した。

環状リヤバルクヘッド

サスペンションからの入力を効率良く分散させるため、リヤシート後方のバルクヘッドに閉断面部材を環状に配置する構造を採用。剛性を大幅に高めるとともに、トランクスルー時の開口を広く確保して使い勝手を向上。

高剛性・低振動フロア構造

大断面のセンタートンネルと井桁状に配置された骨格部材により、フロアの剛性を大幅に向上。これにより低重心化や低いドライビングポジション、低全高化を可能とした。フロア振動を抑えられるため、重い制振材も不要となり軽量化にも貢献。

フロントサブフレーム・リンク構造

ブラケットとボルトによるリンク構造(リンクブラケット)を介してフロントサブフレームをボディに締結。前面衝突時にリンクブラケットはボルトを支点に回転し、サブフレーム後端部を脱落させてステアリングギヤボックスのキャビンへの侵入を防ぐ。

パワートレーン系ノイズの低減

エンジン振動を、エンジンサイドマウントやサイドフレームなど伝達経路の源流で抑制。また、エアコンホースなど振動伝達成分を細部まで解析して対策が施された。さらにエンジンルームまわりに高性能な吸遮音材を配置し、エンジンやモーターの放射音を低減している。

ロードノイズの低減

上記パワートレーン系の施策はロードノイズにも効果を発揮するが、低振動な高剛性ボディをベースに、軽量な吸音材と遮音材を適所に採用。特にロードノイズの侵入を防ぐエンクロージャーを遮音性に優れるウレタンタイプにするなど、ノイズの侵入を大幅に低減した。

異強度ホットスタンプ材を採用

センターピラーとリヤフレームには、ひとつのフレーム内に曲げ強度に強い1500MPa級部分と、エネルギー吸収に優れる550〜650MPa級部分をつくりだす「ソフトゾーンテクノロジー」を採用した異強度ホットスタンプ材を採用。

燃費と操安性に寄与する空力

新世代プラットフォームはボディ骨格レベルで空力に有利な特性を備える。さらに、新型インサイトではCFD(流体解析)や1/1モデルによる風洞実験を重ね優れた空力性能と外装デザインを両立している。

加速と登降坂時のEG回転数を抑制

アクセルの踏み込み量や加速Gに対し、加速感と一体となったエンジン音を実現する制御技術を新採用。登降坂時にはHVバッテリーの残量をマネージメントして不要なエンジン回転の上昇を抑制し、静粛性の向上に貢献している。

回生ブレーキをパドルで操作

ステアリングホイールの裏には、パドル式の減速セレクターを設定。回生ブレーキの強さ=アクセルオフ時の減速度合いを3段階に切り替えることができる。緩減速の際に、ストップランプを点灯させることなく減速できるため、後続車が反射的にブレーキを踏むことが無くなり、渋滞要因になりにくいというメリットもある。

LEB型1.5ℓ 4気筒DOHCエンジン

クラリティPHEVのエンジンを基本に吸排気システムを専用設計。優れた燃費性能を実現するため、アトキンソンサイクルとi-VTECに加え、燃焼効率向上技術とメカフリクション低減技術を投入。

進化を続けるSPORT HYBRID i-MMD

2013年発売のアコードハイブリッドへの初搭載以来進化を続ける「SPORT HYBRID i-MMD」だが、新型インサイトではHVのさらなる普及を目指し、モーター磁石の希土類フリー化やPCU、IPUの小型化などを実現している。

ペダルクリック機構

エンジンの高回転稼働抑制のため、ハード側も対策を実施。アクセルには、踏み込み量が約75%となる位置にクリック感を生じさせる機構を追加している。この手前までの踏み込み量では、エンジン回転数の立ち上がりを抑えた静かな走行を可能とし、その先ではパワー優先のエンジン制御となる。

熱効率向上のための数々の施策

最大熱効率40.5%を達成するための施策として、急速燃焼を促す強いタンブルを生成する絞り形状のインテークを採用。また、スキッシュエリアの拡大や浅皿形状のピストントップの採用で燃焼室のコンパクト化。冷却損失低減を図っている。

新材料と新工法を採用した軽量ピストン

ハイプレッシャーダイキャスト製法とそれに適した新材料を開発。最適設計による斜め鋳抜きなどで、従来では考えられないほどの薄肉化を実現。同ボア径サイズとして世界トップレベルの軽量化を実現している。

フリクションを低減する進化型の加工

油膜保持性能を維持しながら摺動抵抗を低減する、進化型のホーニングを採用。砥石や加工の仕方をさまざまに試行錯誤して導き出されたシリンダー内の最適な面性状が、フリクションを低減する。

走行状況に応じて3モードを切り替え

モーターによる駆動を基本としながら、必要に応じてエンジンを始動する「SPORT HYBRID i-MMD」は、走行状況やドライバーの意思を考慮して 「EVドライブモード(左)」「ハイブリッドドライブモ ード(中)」「エンジンドライブモード(右)」から最適なものをシームレスに切り替えて走行する。

走りと燃費、低コストを実現する新モーター

ステーターの構造は踏襲して生産効率を向上しつつ、ローター形状を刷新して磁気回路を最適化することで、高効率化を低コストで達成。また、重希土類フリーの磁石の採用で耐熱性向上と部品調達リスクを回避した。

軸芯冷却の追加で霊薬性能を向上



高出力に伴う発熱への耐熱対策は磁石サイズの適正化と軸芯冷却で対応。軸芯冷却はローターの回転中心であるシャフト内にATF を供給し、磁石を直接冷却する方式。従来の滴下方式と併用している。

後席下配置を可能としたIPUの小型化

従来IPUに内蔵していた12V DC-DCコンバーターをPCUに移設したことに加え、冷却ファンの省スペース化やバッテリーの2段積みなどにより大幅な小型化を達成。これにより、後席下配置を実現した。

主要デバイスの小型化でPCUにDC-DCコンバーターを内蔵

PCUの主要デバイスであり電流を直流から交流へと変換し、2つのモーターをコントロールするパワードライブユニットと、必要に応じてバッテリー電圧をモーター駆動電圧に昇圧するVCUを小型化。従来と同等サイズながら12V DCーDCコンバーターを内蔵した。

ハンドリングと乗り心地を両立する

フロントにはマクファーソンストラット式サスを採用。L型ロワアームと剛性サブフレームで高い接地点横剛性を確保。ジオメトリー変化の少ない実現。前後方向の入力に対しては液封ブッシュで微細な振動を吸収して上質な乗り心地を提供する。

操安性に優れたリヤサス

リヤにはマルチリンク式サスペンションを採用。すべてアームを高剛性なサブフレームに取りつける構造で、横力によるトーイン特性を最適化することで、高い操縦安定性を発揮する。また、フロント同様に液封コンプライアンスブッシュが優れた乗り心地を実現。

引きずり抵抗を徹底排除する新キャリパー

燃費性能の向上のために僅かな抵抗も問題視されるが、新型インサイトではブレーキローターとパッドを引き離す機構により、接触による引きずり抵抗を排除する新型ブレーキャリパーが採用された。

デュアルピニオンEPSを採用

ステアリングの回転を直線方向の動きに変換するピニオンを入力側とアシスト側の2ヵ所に設置することで俊敏なレスポンスと、滑らかな操舵感を両立する。さらに、可変ギヤレシオとすることで、切り始めはスムーズな操舵量に応じてリニアなフィールの特性とした。

アジャイルハンドリングステアリングアシスト

操舵時や転舵速度からドライバーが意図する走行ラインを想定し、前輪のブレーキを左右独立制御して車両挙動をコントロールし、スムーズな運転を支援。限界領域手前での回頭性やライントレース性、緊急回避時のより確かな操縦性に貢献する。

空力を意識したホイールデザイン



16インチホイール(左)と17インチホイール(右)ともに空気抵抗の低減を意識して設計された専用デザインを採用する。タイヤは16インチが転がり抵抗低減や快適性に配慮されたミシュラン製の専用品。

電動ブレーキサーボシステム

ブレーキブースターにはホンダ独自の電動サーボ式を採用。その特性から回生ブレーキと油圧ブレーキの協調制御を繊細に行なえるのが特徴。高精度制御により、ドライバーの操作に忠実なブレーキフィールを提供しながら、より多くの減速エネルギーを電気エネルギーとして回生する。

歩行者事故低減ステアリング

約10㎞/h〜40㎞/hで走行中に 車線を外れ、路側帯の歩行者と衝突しそうな際に、音とマルチインフォメーショ ン・ディスプレーの表示でドライバーに警告。ステアリングも制御して回避操作を支援する。

標識認識機能

走行中に単眼カメラで「最高速度」「はみ出し通行禁止」「車両進入禁止」「一時停止」の道路標識を認識してマルチインフォメーション・ディスプレーに表示し、標識の見落としを抑制して安全運転を支援。

渋滞追従機能付きACC

ミリ波レーダーと単眼カメラで先行車を認識し、自動で加減速を行ない適切な車間距離を保つよう支援。前走車が停止すれば合わせて停車する。前走車がいない場合は、設定車速を自動で維持する。

オートハイビーム

前走車や対向車を検知してハイ/ロービームを自動で切り替える。良好な視界の確保に貢献するとともに、切り替え操作頻度も低減する。

ブラインドスポットインフォメーション

リヤバンパー内に設置したレーダーで後側方に接近する車両を検知し、ドアミラーのインジケーターで知らせる。この状態でウインカーを作動させるとインジケーターの点滅と同時に警報音で注意を喚起。


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情報提供元: MotorFan
記事名:「 新型ホンダ・インサイトのメカニズムを徹底解説!