パワフルで使い勝手抜群の80㏄モデルを、キッシー岸田がサーキットで徹底試乗。
どうやら双方のキャラクターは大きく異なるみたい!
PHOTO◉渡辺昌彦 REPORT◉モルツ RIDER◉キッシー岸田
取材協力◉TDF(車両)⁄ サーキット秋ヶ瀬 ☎048-855-7862
レーサーレプリカが全盛の80年代後半にカワサキとヤマハから特異な小径ホイールミッションが発売された。「ついにカワサキからミニレプリカがデビュー?」「ヤマハからYSRの後継車がいよいよ登場か?」、打倒NSR50を掲げて闘志を燃やしていたであろうヤマハ&カワサキのミニフリークは浮足立つとともに面食らったに違いない。フルカウルマシンとは真逆のオフ車ルックにロード寄りの足周りを装備したモデルが発売されたのだから。
まずKSRだがこちらはスーパーバイカーズミニという触れ込みで87年にリリースされたKS-Ⅰ/Ⅱのモデルチェンジ版。エンジンは、空冷から水冷になり信頼性をアップしている。対してTDR50/80は、兄貴分のTDR250を忠実にデフォルメした完成度の高いスタイルが特徴。余談だがTDR250はファラオラリーなどで活躍した実績を持つ。しかし、時代は彼らに味方しなかった。当時は皆が前傾姿勢でカウルに身をうずめ、ヒザを擦りながらコーナーを駆け抜けたかったのである。
まずKSR−Ⅱ。パワーバンドは6000rpm〜8000rpmと、回転馬力に頼らずトルクで走らせる印象。とにかく低中速域がパワフルで、フラットな出力特性は非常に扱いやすい。ただ高回転域では一旦回転が落ち込むとリカバリーに時間がかかったのが気になった。これは、KSR-ⅠとⅡでマフラーが共通なため、排気量が大きいⅡには容量不足なよう。社外製チャンパーに替えてしまえば、解決するだろう。
車体は重心が低めで高速域でも安定している。タイトコーナーではフロントを支点にして切り込んでいける。対してリヤは安定感にやや欠けた。これは試乗車がワンサイズ広いタイヤを履いており、タイヤのラウンド形状が変わったためだ。
一方のTDR80は、フレームの剛性感たっぷりだし、サスはソフトだけどストローク量は十分。ブレーキは、リヤを積極的に使っていけるから安心感は高い。しかし、エンジンがクセもの。常に高回転をキープし続けないと”速く”走れない当時のヤマハらしい味付け。とにかくシフトチェンジがシビアで、よく言えば玄人好み。まぁ1万rpmまでビンビンに回るから、チューン好きには魅力だろう。
ともあれ、レーサーレプリカとは違ったオフスタイルの12インチ2ストマシンは、普段使い、林道ツーリング、スポーツ走行まで幅広いステージで活躍する貴重な存在。これほど個性的なミニバイクは、今後出てこないんじゃないかな。
世界を股にかけて活躍しているミニバイクレーサー。20年以上も本誌に携わり、新車・カスタム車問わず数百台のインプレをこなしてきた。近年はアドバイザーとして若手育成に励む。
MT・AT 問わず、ミニバイクの旧車に造詣が深いバイクショップTDF 代表(☎045-786-0404 ※留守電対応)。マニアックな車両に興味のある人はお問い合わせを。
■全長×全幅×全高:1660㎜×720㎜×960㎜
■乾燥重量:77㎏
■エンジン種類:水冷2スト単気筒
■総排気量:79㏄(ボア47㎜×ストローク45.8㎜ )
■圧縮比:7.0:1
■最高出力:10㎰/8000rpm
■最大トルク:0.95㎏m /7000rpm
■燃料タンク容量:8.0ℓ
■ブレーキ(前・後):ディスク
■タイヤ(前・後):100/90-12
■当時価格:24万9000円
KS-Ⅰ/Ⅱの後継機として90年に登場。エンジンは水冷式となりクロス気味に振った6速ミッションと合わせて滑らかかつトルクフルな走りを実現。それを支える足周りは、剛性に優れるφ30倒立フォークを採用し、12インチに大径化。さらに前後ディスクブレーキとなってポテンシャルを大幅に強化。試乗車は、KSR110PRO純正のアルミホイールを組んで軽量化を実現し、フロントはブレンボ製2ポットキャリパーで強化。さらにボルトン製の15㎜アップステップでバンク角を稼ぐなど、スポーティさに磨きをかけている。
リヤサスの固着に注意:「リヤショックのリンク部分の樹脂製カラーやシャフトが固着している車体がかなり多い。メンテナンスで本来の動きを取り戻そう!」
■全長×全幅×全高:1720㎜×720㎜×1045㎜
■乾燥重量:80㎏
■エンジン種類:水冷2スト単気筒
■総排気量:79㏄(ボア49㎜×ストローク42㎜)
■圧縮比:6.6:1
■最高出力:10㎰/8500rpm
■最大トルク:0.88㎏m /7750rpm
■燃料タンク容量:8.0ℓ
■ブレーキ(前・後):ディスク
■タイヤ(前・後):3.50-12・100/90-12
■当時価格:24万9000円
デュアルパーパス12インチスポーツであり、ボリューム感のあるフォルムが印象的。φ25.4㎜の大径鋼管セミダブルクレードルフレームにRZ50系エンジンを搭載。足周りは前140㎜、後ろ130㎜と豊かなストロークを確保し、アルミホイール、φ203㎜ディスクを採用してターマックからダートまで、ステージを問わない高い走破性を獲得している。さらにキャブヒーターやタコメーターを標準装備するなど、ワンランク上の機能を有する。こちらの車両には純正オプションのナックルガードやキャリアを追加し、オフ車成分を増量。
タンクのサビに注意:「エアプレーン式のフューエルリッドはかっこいいけど、ここからサビが発生しやすい。電装は6Vなので、灯火類が暗いのはがまんすべし!」
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