PHOTO:◉渡辺昌彦/三浦孝明 REPORT◉ノア セレン
カブの遊びは無限大!ってことは先月号(月刊モトチャンプ3月号)の雪中走行でもアピールしたばかりだけど、まぁアレはちょっと特殊なのに対して、梅の香りがツーリング心をくすぐる今の時期、ちょっと「奥の方」まで踏み入れてみたくなるじゃない? 集落の奥の方だとか、行き止まりだと思っていた道の奥の方、アスファルトが切れるところ……。
アスファルトが切れるとその先はオフ車の領域、と思いがちかもしれないけど、よっぽどハードじゃなければ不整地だって十分「カブ圏内」。だってカブは趣味として楽しめるバイクである以前に、世界中のあらゆるシチュエーションで人々のモビリティーを支える究極の実用車だもの。そりゃ多少の不整地走行だってしっかりと考慮された作りなわけで、その部分を積極的に楽しんでも良いじゃない!
てなわけで、スーパーカブ110(ビトッチ改)と、よりオフロード能力が高そうなクロスカブ110で連れ立って未舗装林道へいざ! もうちょっとだけ「奥の方」まで進めるようにキャラメルパターンのオフロードタイヤ(雰囲気も抜群!)を履かせた以外、オフ能力はあくまでノーマルな二台。ま、もう無理! ってなったらUターンも容易な軽量なカブだもの引き返せばいいし!
親子ほど年の離れた二人で、日常の延長線上にある気軽なオフロード走行。身の丈に合ったトコトコ冒険をしてきたぞ!
完全なるイコールコンディションではないのは、スーパーカブの方はビトッチチューンで13ps仕様ということ! アクセルを開けた時のレスポンス、フケ上がり感、車体の押し出され感がフルノーマルのクロスカブより完全に一回り上で、そのレスポンスの良さがメリハリになってオフロードでも活きた印象。
でももちろんスーパーカブは基本的にオンロードがメインの設計。ハンドル幅やサスストロークは舗装路を走ったり、すり抜けをしたりする際に重宝するパッケージで、コンパクトなサイズ感や超良好な足着き性含めて、例え今回のようにオフタイヤを履かせても乗り味は「街の実用車」というイメージ。逆にハイトの高いタイヤを履かせてもオンロードでの操作性、快適性が変わらないことがエライ。
アスファルトが切れたその先では、いわゆる砂利道程度の路面だったら何のその。トルクフルなエンジンでビトッチもニッコニコ。「全然問題ない。さすがカブ。ゆっくり走るには最高だね! っていうか、こんな素敵な林道があるんだねー。最高だ!」と春の息吹を感じさせてくれる林道冒険にご満悦。そうなのです、砂利が切れてただの土の路面になっても、フラットなうちは全然問題ナシ。トコトコと楽しいツーリングを楽しめるのは舗装路と同じ感覚。カブってやっぱり懐深い!
でもあんまりペースを上げちゃうのはご法度だ。「飛ばそうとするととたんに怖くなるね!特にスーパーカブはハンドル幅が狭いから轍に入ったりして暴れたら抑えが効かない。ムリすると破綻に直結する! のんびりペースは守りたいな」と言うビトッチに「一定以上のペースでのオフロード許容度は少なめ。ヤバいかも!?から立て直すのが難しいかもしれませんねぇ」と賛同するノア。「自分のペースを守って、景色を楽しむのがカブ林道ですよ。タイヤを換えたことで、さらにスーパーカブのフィールドを広げられたと思う。こんな楽しいことはないね!」
ビトッチからの大人の意見で「無理しない」裏山散策を続けた。景色を楽しみ、倒木をくぐり、時に少しだけリヤが滑るのを楽しむオフ走行。スーパーカブでも十分濃密な時間が楽しめるし、低重心ゆえ安心感はどこでもありがたい。究極の実用車は林道だって幸せにこなすのだ。
現行のスーパーカブ110とクロスカブ110では純正ジャストサイズのオフロードタイヤが存在しない。そこで今回の林道ツーリングでは、2台とも前後に2 3/4-17(2.75-17相当)のシンコーのSR241を装着。どちらもフェンダーやフロントフォーク、スイングアーム等に干渉したりせず、問題なく林道を走り回ることができた。SR241はトライアル車用タイヤと同様のキャラメルパターンを採用し、舗装路から林道までさまざまなシチュエーションに幅広く対応。勾配のきつい未舗装路をグイグイ登るグリップ力を見せた。林道ツーリングの強い味方だ。
見た目のオフテイストだけでなく、幅広のハンドルや長いサスストロークなどからスーパーカブに比べたら絶対オフロードが得意だろう!な、クロスカブ。さらにオフタイヤを履いてるんだからこりゃ盛り上がっちゃうぞ、と気分をアゲて走り始めたら……オットット。キャラメルタイヤは高さがあるからもともとシート高の高いクロスカブの重心がさらに高くなって、舗装路ではハンドリングもちょっとクセがありましたね。スーパーカブでは全然感じなかったのに、不思議です。
そんな特性に慣れた頃、舗装路にさようなら。不整地に入るとスーパーカブに比べてサスが良く動くし、何よりもハンドル幅が広いから抑えが効く! 多少の外乱があっても安心感が高くて、「オフロードを楽しんじゃおうかな!」という気持ちがムクムクムク。オフタイヤのグリップも活かしやすくてついついペースが上がっちゃいます。
そうなると小枝などを巻き上げやすくなってエキパイやブレーキペダルにすぐ絡まっちゃうし、ちょっとした岩にエンジン底をヒットしちゃいそうなことも心配。クロスカブはなまじ「その気」になっちゃうだけに、例えノンビリペースでもアンダーガードは装着したいところ。転ばぬ先の杖。スタイリング的にもカッコ良いし! ……そんなエキサイトしてるノアをビトッチが諭します。「いやいや、アプローチが間違ってるよ! 確かにスーパーカブに比べたら盛り上がっちゃうオフロード性能や走破性を持ってて魅力的だけど、オフ車ではないからね。いくらオフタイヤを履いてたってペース上げ過ぎて岩にぶつけでもしたらインナーチューブが裂けて修理不能・走行不能になっちゃうのはスーパーカブ同様。大人のペースで、ね!」
おっしゃる通りです。あくまで裏山遊びであって、アタックじゃないからね。速さやエキサイティングさの追求ではなく、オフタイヤを履いたことによる一枚上手の走破性を実感しつつ、カブとの濃密な対話を楽しむ気持ちを忘れちゃイケナイ。「カブは常識の範疇を出なければ何でもこなす素晴らしいモデルだよ。特にこの新型JA44/45型はエンジンも最高。燃費が良いから奥まった林道でガス欠の不安がない。クロスカブはレッグシールドがないのがちょっと寒いけど!」とビトッチ。「楽しさを身近に感じさせてくれるカブってやっぱり偉大。実用的なんだけど、趣味的用途も幅広くこなすから、こりゃ正義ですよ! いやー楽しかった!」とノア。
オフタイヤ装着により林道という新たなフィールドにも楽しみを広げることができた疑似親子カブツーリング。「やっぱりカブは間違いない」の結論で楽しく終えました!
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