毎年恒例の【MFi テクノロジー・アワード】。自動車をテクノロジーから読み解く雑誌Motor Fan illustratedが優れた自動車技術、そしてその技術を開発したエンジニアの皆さんを讃えるために創設したのが【MFi テクノロジー・アワード】です。自動車技術に詳しい識者、MFi編集部、MFi制作チームメンバーに加えて、今回、初の試みとして一般読者の皆さま(このMotorFan TECHの読者の皆さま)にも投票いただくことにしました。“テクノロジー・オブ・ザ・イヤー” のノミネート15技術について、紹介をご覧いただいた後に「次ページ」で投票できるようなっています。ぜひ2018年に心に残った技術、注目に値する技術について一票を投じてください!

“テクノロジー・オブ・ザ・イヤー” とは……


2018年に実用化・製品化された技術で、いままでにない視点で開発された技術、実用化され自動車業界に多大な影響を与えたと思われる技術を選考対象しています。


選考過程はMFi 編集部と選考委員が2018年中に発表された自動車技術のなかからノミネートに値する15の技術を選出しました。


その、15のノミネート技術について紹介しますので、あなたの、もっとも評価する技術をひとつ選んで投票ください。




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【 ホンダ/大同特殊鋼 】高性能重希土類フリーモーター

課題となる耐熱性を磁石サイズの適正化と軸心冷却で実現




モーターのローターにはレアアースと呼ばれる重希土類を使った磁石が使われるが、ホンダはインサイトの駆動用モーターに重希土類元素(ジスプロシウム、テルビウム)をまったく使わないネオジム磁石を採用。フィットなど1モーターハイブリッドではすでに採用済みだったが、2モーターの「SPORT HYBRID i-MMD」としては初となる。ローターの回転中心であるシャフト内に冷媒であるATF を供給し、遠心力を利用して磁石を直接冷却する軸芯冷却を取り入れ、ステーター上部からATFを滴下する従来方式と合わせて冷却性能を向上させている。

【 AGC 】eXeview フロントガラス

車内空気中の水分を吸収することでガラスの曇りを抑える




軽自動車スポーツカーのコペンに追加された、CFRP 製ハードルーフを備える限定車「コペン クーペ」は、AGC旭硝子が開発した特殊な樹脂膜コート材付きのフロントガラスeXeview(エグゼビュー)を備える。自動車用ガラスに要求される高い耐久性を確保しつつ、表面のコート材が車内の水分を吸収するので曇りが防止され、デフロスターなど空調の使用頻度が低下し実燃費や利便性が向上する。また車外からのライトなどの光がガラスの結露によって散乱するのを防ぐ効果もあり、夜間走行時の安全性にも貢献。

【 トヨタ 】Direct Force Engine 2.0ℓ

超軽量ピストンや徹底的なフリクション低減で熱効率40%を達成した新世代ユニット




レクサスUX に搭載されてデビューした直列4 気筒ガソリンエンジンM20A 系は、バルブ狭角を拡大し吸気ポートからバルブまでの形状をより直線化。混合気のタンブル流を強化することでさらなる高速燃焼を実現した。


またスカート部のショート化と複雑な形状の肉抜きでピストンの重量を低減。1気筒あたり3本のオイルジェットで冷却にも気を配っている。短パルスレーザーによる昇華でスカート部分にクロスハッチ状の微細な溝を作り、オイル保持性を向上させるなど各部のフリクション低減にも注力した。

【 マツダ 】G-Vectoring Control Plus

ブレーキ制御を追加することでステアリング戻し時の姿勢を安定




新世代車両運動制御技術「スカイアクティブ ビークル ダイナミクス」の第二弾として、CX-5 /CX-8 商品改良時に投入されたのがG-Vectoring Control Plus(GVC+)。従来はステアリング操作に対応しエンジン出力をわずかに絞ることで前荷重の姿勢を作り出していたが、GVC+はステアリング戻し時に旋回外輪フロントにわずかにブレーキをかける制御を追加。直進状態へと戻すモーメントを与えることで安定性を向上させる。ブレーキングでサスペンションに力が加わり、ピッチとロールの動きがスムーズになるという効果もある。

【 アイシン・エィ・ダブリュ 】先読みエコドライブナビ

経路上の勾配なども考慮した効率的なハイブリッド車の充放電制御を実現




ナビで設定された目的地までのさまざまなルート情報を先読みし、ハイブリッド車のエネルギーマネジメント制御と連携して、実燃費をさらに高める機能を持つナビをトヨタと共同開発、レクサスUXに搭載した。ルート上に充電が期待できる下り坂がある場合はそこに到達する前からEV 走行を積極的に行ないエンジン作動時間を減少、下り坂の走行中に回生充電する。またバッテリー残量を使い切ってしまう長い渋滞が先に予測される場合は、渋滞に到達する前から積極的に充電を行なってEV 走行の頻度を高める。

【 NTN 】超低フリクションシール付き玉軸受

表面形状を見直すことでシールの引き摺りトルクを大幅低減




シールリップのすべり接触部に、円弧状(半円筒状)の微小突起を等間隔に設けた新構造が特長。これにより接触タイプシールベアリングでありながら、回転トルクを従来品比で80%も低減し非接触タイプシールに匹敵する低トルク化を実現した。回転時には微小突起によるくさび膜効果により、シールと内輪の摺動面の間に油膜を形成。この油膜によりシールの引き摺りトルクを大幅に低減する仕組みだ。シールリップの突起は極めて微小なため、潤滑油を通しても軸受に有害な硬質異物の侵入を防ぎ軸受寿命も充分に確保できる。

【 トヨタ 】デジタルアウターミラー

量産車で世界初となるカメラ映像を利用したドアミラー




レクサスESに用意されたデジタルアウターミラーは、フロントドア外側のカメラで撮影した車両左右後方の映像を、フロントピラー内部に設置された5インチディスプレイに表示。カメラ部の形状は雨滴が付着しにくいものとし、ディスプレイを室内に搭載することで天候の影響を受けにくい。さらにウインカーやシフト操作と連動させ、表示エリアを自動的に拡大したり、乗員の操作で任意に表示エリアを広げることも可能。従来のミラーを小型カメラに置換することで、斜め前方の視界も拡大。風切音低減による高い静粛性も実現した。

【 トヨタ/アイシン・エィ・ダブリュ 】 Direct Shift-CVT

発進専用のギヤをCVTに加えることで損失を低減しつつ変速比を拡大




その構造上、ベルト効率がどうしても悪化するロー側使用時の伝達効率を向上させるため、乗用車用CVTとして世界初の発進用ギヤを採用した意欲作。入力負荷が軽減されたことで、ベルトとプーリー部の小型化が可能となった。ベルト角度も11度から9度に狭角化することで、変速速度を従来ユニットから20%向上させパワフルでリズミカルな加速フィーリングを得ている。発進用ギヤと合わせたオーバーオールの変速比は15%向上し、2.0ℓクラストップの変速比幅7.5を実現した。燃費性能は6%向上と発表されている。

【 スバル 】2モーターハイブリッドトランスミッション

THSⅡ機構を踏襲しつつ縦置きボクサーエンジンに対応




発電用のMG1、駆動用のMG2、そしてエンジンを遊星歯車による動力分割機構でカップリングする、トヨタのハイブリッドシステムのスバル版といえるのがこのユニット。北米で販売されるクロストレック(日本名XV)のPHEVモデルに搭載されている。モーターやPCU、駆動用バッテリーなどはトヨタから供給。前輪出力位置や全長、エンジン取り付け部分は既存のリニアトロニックCVTと同じにすることで、プラットフォームに大きな変更を行なわずに組み込むことができた。前後輪のトルク分配は電子制御の多板クラッチで行なわれる。

【 メルセデス・ベンツ 】 MBUX

ユーザーの好みや行動を学習し進化する対話式インフォテインメントシステム




「ハイ、メルセデス」と話しかけるだけで起動し、「少し寒いな」と言えば暖房を、「レストランに行きたい」と言えばナビが立ち上がるなど、普通に会話するだけで車両設定やナビゲーション、オーディオなどが使いこなせるシステムがMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)。音声認識はネットを使ったクラウドで動作するため学習能力も高く、使えば使うだけユーザーの使い方にマッチした結果が得られることも特長だ。またディスプレイもグレードアップされており、アニメーションの滑らかさやタッチ入力へのレスポンスも優れている。

【 トヨタ/アイシン・エーアイ 】 BK6(6速MT)

TNGAによる開発体制から生まれた軽量コンパクトなマニュアルミッション




カローラスポーツなどに対応した、新世代の中容量FF車用6速MTがこのBK6である。通常、MTは一度設計されると長期間に渡って生産されるものだが、BK6は先代にあたるBH6の誕生からわずか10年で刷新された。開発目標はまず小型化と軽量化で、ケースなどの解析を積極的にCAEで行なって最適化を実施。世界トップレベルのコンパクトさを実現し車両レイアウトの自由度を高めた。また重量も7kg低減し、燃費性能に貢献。加えて後退側にもシンクロ機構を追加し、リバース操作時のギヤ鳴りを抑えるなど快適性にも考慮されている。

【 デンソー/トヨタ 】 後付けペダル踏み間違い 加速抑制装置



販売店装着の純正用品として設定 予防安全装備の追加が可能に




すでに所有しているクルマに、ディーラーでの作業でアクセルとブレーキのペダル踏み間違いによる衝突被害を低減する機能を付加するシステム。車両の保有期間が長期化することを受けて開発されたもので、ボディ前後に取り付けた超音波センサーと車内に設置する小型モニターで構成される。前方、後方の約3m以内にある障害物に向かって急発進した場合、加速を抑制。後退時に約5km/h以上の速度が出ている際もそれ以上の加速を抑制する。先代プリウス、2011年~18年に生産されたアクア用がまず販売され、今後は対象車種を広げていく予定だ。

【 豊田合成 】 LED照明付き エアコンレジスター

複雑な動きを行なう小型パーツに磁界による共振で電力を供給




エアコンの風向や風力を調整するノブに、ワイヤレスで給電されるLED照明を内蔵。上下左右に動きさらに回転もするため、従来のワイヤー式ではノブの繰り返し操作によるハーネスの破断などの懸念があったが、送電側と受電側の回路の磁界(周波数)を共振させて電力を伝送するワイヤレス給電では、こうした問題をクリア。加えてデザインの自由度も高めた。初搭載されたレクサスUXではLED照明のレンズ内部を合わせ鏡とすることで、光の輪が立体的に見える演出を行ない先進性もアピールしている。

【 アイシン・エィ・ダブリュ 】 1モーターハイブリッドシステム

有段ATのダイレクトな走りにEV走行による燃費性能をプラス




通常のプラネタリーギヤによる多段ATをベースとしつつ、トルクコンバーターをモーターとエンジン切り離しクラッチに置き換えたシンプルな構造のハイブリッド・トランスミッション。通常の走行では8速ATによる滑らかな走りを実現しつつ、切り離しクラッチによりエンジンを停止したまま80kWの最高出力を持つモーターによるEV走行も可能。サイズはベースとなるATと同等であり、生産面においても既存のATの生産設備がそのまま活用できるメリットもある。DS7クロスバックE-Tenseに搭載されてデビューを果たした。

【 帝人 】 PC樹脂製ピラーレス フロントウインドウ

耐衝撃性能はガラスの200倍!広い視界と軽量化を両立




通常のガラスではなく、ポリカーボネート(PC)樹脂のフロントウインドウを帝人が開発し、スポーツEVであるトミーカイラZZが採用。特殊なコーティングにより、傷つきやすいポリカーボネートの耐摩耗性を大幅に高めることで、2017年7月から適用された新しい自動車保安基準を満たしている。ウインドウメイン部分の厚さは6mmだが、窓枠に該当する外側部分は10mmとして強度を確保。ガラス窓とAピラーの組み合わせと比較して36%の軽量化を実現し、視界を遮るものがない爽快なドライビングが楽しめる。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 あなたの一票でもっとも注目すべき自動車技術が決まる! “テクノロジー・オブ・ザ・イヤー”【MFi テクノロジー・アワード2019】