REPORT◉藤原よしお(FUJIWARA Yoshio)
PHOTO◉田村 弥(TAMURA Wataru)/市 健治(ICHI Kenji)
※本記事は『GENROQ』2019年3月号の記事を再編集・再構成したものです。
毎度のように「もうこれでおしまい」という噂が立ちながらも生きながらえてきたメルセデス・ベンツGクラスが、39年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたのは、間違いなく2018年のビッグニュースだった。
そんな新型Gクラスで最初に目に止まったのは、平面に見えるフロントガラスが微妙なアールを描いていたことだった。「ほかに見るべきところがあるだろ!」というツッコミは承知だが、キープコンセプトが“ウリ”でありながら、わざわざそんな細部にまで手間をかける姿勢に、メルセデスの新型にかける意気込みが伺えた気がしたのは事実だ。
恥ずかしながら、過去にGクラスをドライブしたのは、十数年前に80年代のショートモデルをチョイ乗りした一度きり。本気のオフロード性能にピントが合いすぎている気がして「まっすぐ走らない、曲がらない、遅い、ブレーキペダルが重い、インテリアがそっけない、うるさい」と、街乗りでは散々だった思い出しかない。
しかし先代との共通項は、見た目だけ。特に585㎰を発揮する4.0ℓV8DOHCツインターボを搭載するAMG G63は“Gクラスの姿をしたサイボーグ”と言っていいほど、別物に仕上がっていた。
まずはガラリと進化を遂げたインテリアだ。なにより12.3インチ×2の巨大なモニターを配した最新のメルセデス・フォーマットとなったコクピットに目が行くが、ひとまわり大きくなったボディはフロントで38㎜、リヤで150㎜もレッグスペースが拡大していることもあり、広くゆったりしている。
個人的には、コーナーでサイドが自動で膨らむ電動ランバーサポートシートだけは最後まで馴染めなかったものの、ここに足りないものはない! と言い切れるほど安全&快適装備は充実している。
ステアリングは伝統のボール&ナットから電動パワステのラック&ピニオンになったことで軽くなめらか。ステアリング越しに伝わる接地感やレスポンスも、Eクラスと何ら変わりのない自然なものとなった。
加えて4リンク式となったフロントサスペンション、リジッドながらトレーリングアームが片側2本となったリヤサスペンション、そして格段に剛性の上がったシャシーもあいまって、先代のトラックのような大味なフィーリングはどこにもない。
きっと170㎏の軽量化を果たしたボディの効果も大きいのだろうとスペックシートを見てみると、G63の車両重量は先代のG550とほぼ変わらない2530㎏。90年頃のロングボディと比べると逆に200㎏以上重くなっているのだ!
にもかかわらず、走り出しから「軽くなった!」と感じるのは、V8ツインターボと9速AMGスピードシフト、そしてそのパワーをしかと受け止める懐の深いシャシーと各種電子デバイスが、見事にバランスしているからなのだろう。
もちろん、このクルマにコーナリング性能を求めるのはナンセンスだが、オンロードの実力はそんじょそこらのサルーン以上。この味を一度知ってしまったら、もう昔のGクラスには戻れない。
SPECIFICATIONS
メルセデスAMG G63
■ボディサイズ:全長4665×全幅1985×全高1975㎜ ホイールベース:2890㎜
■車両重量:2530㎏
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ ボア×ストローク:83×92㎜ 総排気量:3982㏄ 最高出力:430kW(585㎰)/6000rpm 最大トルク:850Nm(86.7㎏m)/2500~3500rpm
■トランスミッション:9速AT
■駆動方式:AWD
■サスペンション形式:Ⓕ4リンク Ⓡ5リンク
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク
■タイヤサイズ:Ⓕ&Ⓡ275/50R20
■パフォーマンス 最高速度:220㎞/h 0→100㎞/h加速:4.5秒
■環境性能(EU複合モード) CO2排出量:299g/㎞ 燃料消費率:13.1ℓ/100㎞
■車両本体価格:2076万円