ManiaxCars的に言うと、今回の特集でプレリュードを取り上げるつもりはなかった。


なぜなら、”プレリュード=人気モデルの代表格”みたいな存在だし、そんなのManiaxCarsでやってもしょうがない…と思ってたから。


ところが、ちょっと調べていくうちにオレは気づいてしまったのだ。「あれ? プレリュードにもヘンなのがあるじゃん!」ということに。


なわけでメジャー車種の珍グレード、プレリュード編をお届けしよう。




TEXT&PHOTO◉廣嶋健太郎

2代目AB型の追加グレードとして登場。内外装が細かく違う2ℓDOHC搭載モデル。

 リトラクタブル式ヘッドライトを採用し、FFスペシャリティカーの座を確固たるものにした二代目プレリュード、AB型が登場したのは1982年。




 搭載エンジンは1.8ℓ直4SOHCのES型で1気筒当たり3バルブの12バルブ仕様、燃料供給は2連装されるCVキャブが担当し、5速MT車で125ps、4速AT車で120psを発揮。足回りはフロントに操縦性と高速安定性を高めるダブルウィッシュボーン式を、リヤには長いロワーアームを持つストラット式を採用するなど、シャシー性能にも磨きがかけられた。




 グレード展開は上からXX、XZ、受注生産のXC。XXとXZには日本初となる4WALB(4輪アンチロックブレーキ)が、またXXのみカラーフィルター式液晶デジタルメーターもオプション設定されるなど、FFスペシャリティカーの名に恥じない装備を誇った。




 85年6月、そんな2代目プレリュードに加わった新たなグレードがBA1型2.0Si。それまで1.8ℓエンジンだけで展開してたところへ、3代目アコード譲りとなる2ℓ直4DOHCのB20A型を搭載。燃料供給にはPGM-FI(電子制御燃料噴射装置)が導入され、5速MT車、4速AT車ともに160ps/19.0kgmというハイスペックを誇った。FFスペシャリティカーというキャラクターはそのままに、スポーティさも身につけたのが2.0Siというわけだ。




 ちょっとややこしいのはAB型の追加グレードでありながら、BA1という車両型式が与えられてること。本来、BA型とは87年に登場する3代目プレリュード全般(91年登場の4代目の一部グレードも)を指すんだけど、2.0Siだけは2代目なのに例外的にBAを名乗っていた。たしかに、前ダブルウィッシュボーン式、後ストラット式の足回りなどシャシー設計は2代目そのままだけど、のちに主力エンジンとなるB20A型を搭載し、外装デザインも見直されるなど、2.0Siは3代目への橋渡し的なモデルだったと考えられなくもない。だとすれば、BA1という車両型式を持つことにも納得がいく。




 事実、外装デザインはAB型から結構な変更を受けている。前後バンパーを始め、ヘッドライトカバーやフロントグリル&コーナーレンズ、ボンネット、フロントカウルトップ、リヤコンビネーションランプなど。このうち中央がくぼんだボンネットやセンターガニッシュを持つリヤコンビネーションランプは3代目にも見られたりする。




 ドアを開け、あからさまに着座位置が低い運転席に腰を下ろす。ペダルを基準にドライビングポジションを合わせてもステアリングホイールが遠くならないから、背もたれを倒し気味にしてみる。背もたれを起こさないと適正なポジションを取りにくいクルマが多い中、プレリュードは寝かせ気味でそうなるように設計されてるんじゃないか?と思う。意外だったのはボンネット上のパワーバルジが目立つことだ。




 ボディは思いのほかしっかりしてる。80年代のホンダ車はボディ剛性がないという先入観は捨てなきゃダメだ。もちろん、個体差があるから一概には言えないけど、走行距離は年式からすると非常に少ない6万6000kmで、それが影響してるのは間違いない。




 B20A型エンジンは2000rpmも回ってればトルクは十分。実用域で扱いやすいことに加え、3000rpmからはアクセルペダルを操作する右足の動きに連動した鋭い吹け上がりを見せるなど、スポーツユニットとしての楽しさもちゃんと持ち併せている。




 組み合わされる5速MTはストロークが短めでタッチも良好。ギヤの確定に曖昧さがなく、積極的に操作したくなる。クルマとしてはGTカー的な性格だけど、B20Aとのコンビでスポーティな走りにもしっかり応えてくれる。




 また、ステアリングは当時のホンダ車らしく基本は軽いけど、それはアコード系のように指1本で回せる類いのモノでなく、適度な重さというか手応えが残されている。車種によってその味付けはちゃんと変えられてるようだ。




 結局87年6月から89年4月まで、2年弱しか生産されなかった2.0Si。




 それはエンジンやデザインなどから3代目登場を匂わせる前奏曲…まさに”プレリュード”を体現していたと思う。

SPECIFICATIONS


車両型式:BA1


全長×全幅×全高:4375×1690×1295mm


ホイールベース:2450mm


トレッド(F/R):1470/1470mm


車両重量:1040kg


エンジン型式:B20A


エンジン形式:直4DOHC


ボア×ストローク:φ81.0×95.0mm


排気量:1958cc


圧縮比:9.4:1


最高出力:160ps/6300rpm


最大トルク:19.0kgm/5000rpm


トランスミッション:5速MT


サスペンション形式(F/R):ダブルウィッシュボーン/ストラット


ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク


タイヤサイズ(F/R):195/60R14

ENGINE

クローズドデッキ構造のアルミ製シリンダーブロックや軽量高強度コンロッドなどが採用されたB20A。バルブ駆動に内側支点スイングアームを使うことで吸排気バルブとも1.0.mmというハイリフトを実現し、高回転高出力化を達成している。また、燃料供給のPGM-FIと点火システムのPGM-GIを組み合わせ、最適な空燃比とレスポンスを高める世界初のデュアルレンジCPUによるエンジン制御も行なわれている。

EXTERIOR



外装におけるプレリュードの特徴のひとつがリトラクタブル式ヘッドライト。ヘッドライト点灯に合わせてポップアップするのはもちろん、ヘッドライトスイッチとは関係なく開閉させることもできる。

フロントワイパーは1本でセミコンシールドタイプ。確かにスタイリッシュではあるけど、一般的な2本ワイパーに慣れてると拭き取りの速度と面積に違和感が残る。BA1はAB型プレリュードに対して、ボンネット形状やカウルトップ(エアインテーク)の形状も異なる。

INTERIOR



ダッシュボードを低く、薄く設計することで開放感を高めたインテリア。ステアリングホイールは革巻きタイプで、車速連動型パワーアシストを備える。細かいところだとメータークラスターの表皮がAB型とは異なり、BA1ではシボ加工が施されたものとなる。メーターはスピードメーターを中心に、左側にタコメーター、右側に水温&燃料計を設置。また、青いストライプが入った純正フロアマットにも注目。

コンパクトにまとめられたセンターコンソール。吹き出し口の間にエアコン操作パネルが設けられ、上から標準装備されるグラフィックイコライザー+パワーアンプ(20W×2)、オーディオスペース、灰皿が並ぶ。



メーターナセル右側にはヘッドライト開閉とサンルーフ開閉の各スイッチが付く。その下に写るのはクルーズコントロールのメインスイッチとメーターパネルの照度コントロールスイッチだ。また、ステアリングコラム左側に確認できるアナログなインジケーターはチルトステアリングの位置を示すもの。ま、なくても困らない装備だ(笑)。

LUGGAGE ROOM



想像していたよりも容量があり、実用的なトランクスペース。3段の脚立に90×60cmの白いパネルなど撮影用機材を無理なく積むことができた。後席背もたれはスピーカーボード中央のダイヤル式ロックを解除して前倒しが可能。トランクスルーとして機能する。

SEAT



前席はサポート部を大きくとったバケットタイプを採用。表皮はモケットで、運転席には上下調整式ランバーサポートが備わる。後席は前後方向がかなり狭いけど、大人2人が乗れなくはない。ヘッドレストが付くのはBA1と後期AB型。左右トリムはアームレスト形状とされ、それぞれに灰皿が設けられる。

TIRE&WHEEL

リム幅5.5Jのアルミホイールは純正オプションのメッシュタイプで足もとをエレガントに飾る。装着タイヤはプレイズ。標準同サイズとなる195/60R14が組み合わされる。

REAR VIEW

外装におけるAB型との違いは前後バンパー、リヤコンビネーションランプ&ガーニッシュ、サイドモールの幅とメッキ加飾の有無など。BA1は追加グレードだけど、変更点は多岐にわたっている。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 マニアな元祖デートカー。ホンダ・プレリュード2.0Si BA1 正統派に見えて、プレリュードにもヘンなのがあるじゃん!