ドイツのサプライヤーであるヘンケルは、自動車関連では接着技術で存在感を示している。近年大手自動車メーカーや新進企業による新たな電気自動車のモデル事業が急速に開始されており、ヘンケルも、その幅広い技術基盤と長年の専門的知識を活用し、従来のエンジンからのパワートレーンの電動化への変換を推進している。

 燃料消費についての厳しい規制とCO2削減目標は自動車業界の課題である。このため何百もの新たなEVモデルがデザインされ、次々と売り出されている。今、バッテリーと電子部品の一体化およびその保護は極めて重要な問題であり解決には広範囲にわたる技術と深い専門知識が必要であるが、ヘンケルは業界トップの問題解決のパートナーとして、デザインから部品統合まで顧客をサポートすることができる。




 ヘンケルはバッテリー産業における課題は主に3つあると特定している。1つ目は、バッテリーの価値である「容量」である、この重大な課題解決のためには何百、何千ものバッテリーパックの構成材料に接着剤をつける組立て工程で、高速に硬化し短いサイクルタイムが実現できることが必要となる。ふたつ目は、運転の「安全性」という課題であるが、例えばバッテリー材料についてはUL94燃焼性基準といった難燃性要件に従ったものでなければいけない。最後の課題は、EV性能のため「メインテナンス性」を確保することであり、このためにはバッテリーパックのハウジング材が後で開閉出来るようにシールする技術が必要となる。




「我々の革新的な接着剤製品と工学技術サービスは、費用効率の良いバッテリー組立て作業を最大限にサポートし、運転の安全性とバッテリー寿命の確保において大切な役割を果たしている」とヘンケルのeモビリティ&パワートレイン統括であるFrank Kerstanは述べている。「我々は、アプリケーションや地域に応じ製品を製造提供できる、また大規模な製造プロセスでのノウハウのように、包括的な技術をもって、顧客をeモビリティの第一線でサポートしてゆく。




 こうした取り組みにより2019年にはOEM数社で、ヘンケルの技術を活用してデザインされ、組立てられたEVモデルが相当数販売され始めている。」


図1のように、ヘンケルは、8つの従来のソリューション提案に加え新たなソリューションを組み合わせ、重要な技術に焦点をあてたソリューションとサービスを行うことを目指す。

図1

バッテリーアッセンブリー用接着剤:


ヘンケルは、特に何百、何千ものバッテリーの大量な組立てに適した多数の接着剤を提供している。例えば、Loctite AA 3525は、必要に応じ、紫外線を用いると15秒以下で固まる。また、Teroson MS 9396は、バッテリーセル同士の接着やバッテリケースのシールに特化している。この使いやすい1液タイプの変性シランは、非溶剤で非シリコン製の環境にやさしいものだ。耐熱性も100℃までと高く、200%の伸び率という優れた性能は、バッテリーセルの安定性と安全性を確保している。






ギャップフィラー:


この新規開発の特殊な熱伝導性シリコンフリー製品は、最も厳しい環境下において3 W/m・Kの放熱性能を発揮する。基板に塗布し硬化させ、ギャップの安定性とロバスト性を長期にわたり保証する。独特なレオロジーにより、急速塗布が可能で、組立て時の圧力も低減できるため、バッテリーセルやバッテリーモジュールへの負荷を軽減する。さらに、新しいフィラー技術により摩耗性が特徴的に低いため塗布機のメンテナンス頻度を少なくできる。






熱伝導性接着剤:


バッテリーセルとバッテリーモジュールの安全で効率的な熱管理のためには、 Loctite UK 6800 やLoctite EA 9794といった熱伝導性接着剤を使うことでは、熱を効率的に冷却プレートへ伝導できる。Loctite UK 6800は2液ポリウレタン製品で1.9 W/m・Kの熱伝導性を持つ。熱膨張率の異なる基板にも10 MPaのせん断強度と44%の高度な伸び率により優れた接着性を発揮する。




液状ガスケット:


ヘンケルはバッテリーパックハウジングの漏れ防止および様々な温度変化に対応するソリューションを提供している。例えばTeroson MS 939 FRはUL94 の難燃性の基準を満たしており、信頼の高い高性能な液状ガスケット技術である。さらに、Loctite SI 5970は耐オイル性や自動車燃料耐性を必要とする場合に優れたソリューションである。


保守性の課題についても、 Loctite AA 5884 (アジアでは:5883)は紫外線で速硬化するポリアクリルガスケットで、修理のためにバッテリーパックのハウジングを開けることが出来ると同時に圧縮時の確実なシール性も持ち合わせている。






バッテリー用構造接着剤:


バッテリーパック構造の一体化には、動的負荷や衝突性能における問題が課題となる。ヘンケルは、アルミニウムや異種金属のバッテリーフレームにはTeroson EP 5065 や Loctite EA 9466といった2液タイプの高強度エポキシ接着剤を提供している。






金属の前処理:


量産時の課題の観点からは、ヘンケルの表面処理技術を使うことでエネルギーと水使用量が削減でき、結果としてプロセスコストとメンテナンスコストを削減できる。バッテリーハウジングは主としてアルミニウム製だが、これは塗装前にコスト効率の良い方法で処理する必要がある。ヘンケルは数々のOEMに承認された前処理剤を提供している。例:Bonderite M-NT 400、Bonderite M-NT 160 / 161 、Bonderite M-NT 5200。また金属の種類が複数の場合に使用できる、ヘンケルの特許品Bonderiteの2ステッププロセスはエネルギーの節約ができ、堆積汚泥を著しく減少させる。






導電性塗料:


市場での成功に必要なもうひとつのカギは、リチウムイオン電池の充電と放電の性能の改善である。ヘンケルは、アルミニウム正極におけるインターフェースの欠点を克服するための、導電性塗料を開発している。Bonderite L-GP EB 012 とBonderite S-FN 15000の技術は内部の電気抵抗を低くでき、燐酸鉄リチウム (LFP) とリチウムニッケルマンガンコバルト(NMC) のバッテリー用活物質の集着性を向上させる。






含浸サービス:


ヘンケルのロクタイト含浸ソリューション (LIS) サービスは、低粘度ポリマー樹脂の流動性を利用して、微小気孔および空隙(「漏れ」)を充填し、駆動システムのアルミダイカスト ハウジングなどの部品において一般的な自動車用オイルを完全に永久的に密封する。ヘンケルではIATF 16949、ISO 14001、OHSAS 18001 の完全認定を受けている 30 の LIS サービスセンターを世界中で運営している。




 EVバッテリー構造体のためのヘンケルの幅広い製品技術は、OEM、大規模なバッテリーやバッテリーパックのデザインと製造現場、プロトタイプの納入元などのニーズを事前に把握し、アプリケーションへの優れた専門知識陣、世界中での研究開発とテストそして強力な戦略的連携(例、RLE Internationalなど)により支えられ、顧客の技術チームのパートナーとして特別な立場にある。自動車の著しい電動化の課題を解決するために、eモビリティの将来性を前述のとおり推進している。



情報提供元: MotorFan
記事名:「 EVにヘンケル。バッテリー関連で使われているヘンケルの製品技術