REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
スーパーバイク世界選手権で次々と記録を打ち立てているカワサキレーシングチーム。カワサキではリッタークラスのスーパースポーツモデルである「Ninja ZX-10Rシリーズ」に、レースマシンからのフィードバックを投入した『Ninja ZX-10RR』『Ninja ZX-10R SE』『Ninja ZX-10R KRT EDITION』3 モデルを新たにラインナップした。
これら3車の特徴は、ズバリ、強さと優しさを兼ね備えた“扱いやすいが故に速いモデル”だということ。
スーパーバイク世界選手権を始め、鈴鹿8耐などの“ 市販車をベースにしたレース ”にカワサキがこだわっているのは、世界で戦うトップライダーのみが扱うことのできる速さではなく、“誰が乗っても扱いやすく、そして速い ”という点だ。
「サーキットにおいて誰が乗っても扱いやすく、乗りやすいということを追求していけば、結果として速いマシンが出来上がる」
この開発者コメントが示す通り、Ninja ZX-10R シリーズは正に“RIDEOLOGY“ の集大成とも言えるモデルに仕上がっている。
量産バイクレースの最高峰であるスーパーバイク世界選手権(SBK)。このレースで、カワサキレーシングチームのジョナサン・レイ選手は、ZX-10Rで2015年&2016年のチャンピオンを獲得。2017年にはZX-10RRで再度チャンピオンを獲得し、SBK史上初となる3連覇を達成。
「Ninja ZX-10RR」は、3シリーズの中ではもっとも贅沢かつパワフルな最高峰モデル。「Ninja ZX-10R KRT EDITION」は、3シリーズの中ではもっともリーズナブルなベースモデル。「Ninja ZX-10R SE」はその中間的な存在だ。
・Ninja ZX-10RR:292万6800円
・Ninja ZX-10R SE:265万6800円
・Ninja ZX-10R KRT EDITION:206万2800円
「Ninja ZX-10RR」は、チタニウム製コネクティングロッド、サスペンションセッティングのファインチューン、マルケジーニ社製鍛造ホイール、シングルシートの採用など、エンジンや足周りに改良を加え、ベースモデルのサーキットポテンシャルをさらに向上させた特別なモデル。
世界500台限定生産の証として、トリプルクランプ上部にシリアルナンバープレートも装着するなど、シリーズ3モデルの中ではレーシーかつ豪華なつくりが特徴だ
・カラー&グラフィックの変更
・エンジン、シャーシ両方の性能を高めるチタニウム製コネクティングロッド
・軽快感が大きく向上し、俊敏なハンドリングを実現するマルケジーニ製の専用アルミ鍛造ホイール
・サーキットでのラップタイム短縮に貢献するピレリ製ディアブロ・スーパーコルサSP(タイヤ)
・サーキット走行を前提にしたセッティングのショーワ社製バランスフリーフロントフォークとBFRC lite リヤサスペンション
Ninja ZX-10RRは、フィンガーフォロワーロッカーアーム(下記参照)に加え、フォーミュラマシン、ハイパフォーマンスカー、航空宇宙産業向けのエンジンやドライブトレインなどの開発と製造を専門とする「Pankl社」が設計した、超高性能チタニウム製コネクティングロッドを採用。
軽量&高強度なチタニウム製コネクティングロッドを使用することで、レブリミットが600rpm向上。「Ninja ZX-10R KRT EDITION」や「Ninja ZX-10R SE」 に比べ、最高出力をさらに1PS 高め、150kW (204PS)としているのがポイントだ。
また、レブリミットを引き上げることで、より広いパワーバンドを獲得。Ninja ZX-10RRの扱いやすいキャラクターを強化。
加えてコネクティングロッド 1 本あたり102g の軽量化により、クランクシャフトの慣性モーメントを5%低減。エンジンレスポンスとハンドリング性能の向上、またコーナー進入時にフロントタイヤへ荷重をかけやすくなっているのが特徴だ。
Pankl 社のチタニウム製コネクティングロッドがハンドリングにもたらすメリットを最大限に活用するため、Ninja ZX-10RRは前後サスペンションのセッティングを独自に変更している。
Ninja ZX-10Rシリーズには、新たに「フィンガーフォロワーロッカーアーム」を採用。これにより、バルブ作動部分の質量を、タペット方式と比較して20% 減少。フィンガーフォロワーには「DLC(ダイヤモンドライクカーボン)コーティング」が施され、耐摩耗性を確保しているのもポイントだ。
カムシャフトは、バルブの開閉速度を速めるアグレッシブなカムプロフィールを採用し、ピークパワーを約3PSアップされている。
Ninja ZX-10Rシリーズは、フィンガーフォロワーロッカーアームの採用とその他のアップデートにより、エンジンパフォーマンスを向上。最高出力は200PSから、204PS(他の2モデルは203PS)まで高められている。
Ninja ZX-10Rシリーズは、レーシングフルエキゾーストマフラーへの交換で、さらに出力アップも可能だ。
Ninja ZX-10Rシリーズは、従来モデルのフラットなトルクカーブをそのまま引き上げているため、出力を向上しながらも扱いやすい特性が維持できるのが特徴だ。
従来のNinja ZX-10Rシリーズでは、「Ninja ZX-10RR」のみに採用されていたハイリフトカムシャフト対応シリンダーヘッド。新型では、3モデルのすべてに装備。従来よりもさらにハイリフト化された、レースキットのハイリフトカムシャフトを装着できるクリアランスを設けている。
新しいNinja ZX-10Rシリーズは、すべてのモデルに赤く塗装されたシリンダーヘッドカバーを採用。フィンガーフォロワーロッカーアームの高性能でレーシーなイメージに貢献しているのが特徴。
・フィンガーフォロワーロッカーアームを採用し、高いパフォーマンスを発揮するエンジン
・クラッチ操作やスロットル操作を行わずに素早いシフトアップ/ダウンを可能にするKQS(カワサキクイックシフター)
・車体制御システムの正確さを大きく高めるボッシュ社製IMU
・予測型/フィードバック型を組み合わせた先進のトラクションコントロールシステムS-KTRC(スポーツカワサキトラクションコントロール)
・効率的なスタートダッシュを実現するKLCM(カワサキローンチコントロールモード)
・カワサキのスーパースポーツ向け高精度ブレーキ制御技術KIBS(カワサキインテリジェントアンチロックブレーキシステム)
・急激なエンジンブレーキを制御するカワサキエンジンブレーキコントロール
・3種類のモードから選択できるパワーモードセレクション
・速度や加減速の状況によって減衰力が変わる電子制御ステアリングダンパー
・高いブレーキ性能を発揮するブレンボM50モノブロックキャリパー
・コーナー進入での安定性を向上させるバランスフリーフロントフォークと、BFRC lite(バランスフリーリヤクッションライト)サスペンション
・サーキットにあわせ、ギヤの組み換えが可能なカセットトランスミッション
・エンジンスライダー
・フロントアクスルスライダー
・ニーパッド