新開発タイヤの採用やサスペンション各部の見直しを行い、より上質な走りを手に入れた2019年モデルの新型NSX。NSX同様、MR+AWDを採用するスーパースポーツである、ランボルギーニ・ウラカン スパイダーとの比較を試みた。


REPORT◉大谷達也(OTANI Tatsuya) PHOTO◉神村 聖(KAMIMURA Satoshi)

 NSXとウラカンの共通点はエンジンをミッドシップする4WDスーパースポーツカーであること。なるほど、2台と同じカテゴリーに属するのはおそらくランボルギーニ・アヴェンタドールくらいだろう。




 では、NSXとウラカンが似ているかといえば、さにあらず。それどころかどちらも最新のテクノロジーを数多く採用しているにもかかわらず、スポーツカーとしての演出手法は正反対といってもいいくらいだ。ウラカンの魅力は、なんといってもランボルギーニが脈々と受け継いできたワンフォルム・デザインにある。ボディの前端からルーフまでを一直線で描き上げたスタイリングは実にユニークで、ひと目見ただけでランボルギーニと認識できる。彼らの個性がこのフォルムに凝縮されているといっても過言ではない。


 


 一方のNSXにもスーパースポーツカーらしいプロポーションが与えられているが、全体から受ける印象はウラカンに比べて大人しい。ただし「だからNSXはダメ」というつもりは毛頭ない。むしろクリーンかつシンプルな造形は知的な印象をもたらしているほか、ある意味でウラカンよりも未来的に思える。マイナーチェンジに伴って施されたチンスポイラー周りのデザイン変更はNSXのワイド&ローな印象を強調するもので、デザインの完成度はより高まったといえるだろう。

NSXが搭載する3.5ℓV6ツインターボエンジン。

 ウラカンのもうひとつの特徴が、ランボルギーニの遺伝子を正しく受け継いだ排気量5.2ℓの自然吸気V10エンジンである。レッドゾーンが8500rpmから始まる超高回転型ユニットは回せば回すほど迫力あるエキゾーストノートをあたりに轟かせ、ドライバーの聴覚だけでなく魂までも激しく刺激する。しかも、高回転域で計算し尽くされたバイブレーションを生み出すこともスポーツカーファンにはたまらない魅力であるはず。トップエンドで全身にドーパミンが溢れ出るような快感が得られるスーパースポーツカーという点において、ランボルギーニは最右翼に位置するといっていい。




 対するNSXが搭載するエンジンは3.5ℓV6ツインターボで、見かけ上のスペックではウラカンに見劣りする。エンジン単体のパフォーマンスもNSXは507㎰/550Nmと、ウラカンの610㎰/560Nmに及ばない。NSXのレブリミットは7500rpmで、普通に考えれば立派な数値だが、それでもウラカンの8500rpmと比べると分が悪い(NSXのシステム出力とトルクは581㎰/646Nm)。




 では、NSXのエンジンが刺激に欠けるかといえば、そんなことは決してない。たとえば、フルスロットルにすると音もなく瞬時にレブリミットまで吹け上がる様はV6あることもターボエンジンであることも信じられないほど。吸気音のシューッという音色はジェットエンジンを思わせ、実に未来的だ。またレスポンスが鋭く、回転の上昇に伴うトルク変動を感じさせない点は、SH-AWDのモーターアシストが利いている証拠だろう。いずれも、オーセンティックな味わいのウラカンに対して、極めて強い先進性を感じる。

方向性は違えど、それぞれスーパースポーツを名乗るに相応しい出来

 ハンドリングや乗り心地の面でも2台は好対照の関係にある。




 ウラカンのほうが乗り心地はやや硬めに思えるが、これは路面からの微振動を正確に伝える傾向が強いからだろう。これに比べるとNSXはサスペンションになにかのフィルターがかかっているかのようで、細かなバイブレーションはきれいに消し去られている。ただし、2台ともボディ剛性は十分に高いので、硬めの足まわりでも不快に感じられないことは特筆しておきたい。




 ハンドリングはウラカンのほうが切り始めのゲインが高めで、いわゆるアジリティはより鋭く感じられる。それでも優れたスタビリティを確保できているのは、やはり4WDの恩恵か。これに比べると、NSXのハンドリングはとりたててアジリティが強調されているとはいえないが、リニアリティは極めて高く、ステアリングを切れば切っただけ曲がっていく感覚が強い。

スウェードとレザーをセンスよく組み合わせたウラカンスパイダーのインテリアデザイン。

曲線を活かして筋肉の隆起を想起させるホンダNSXのインテリア。

 それにも増してNSXで特徴的なのは、SH-AWDの効果によりコーナー進入時の荷重移動をほとんど意識しなくても思い通りにターンインしていく点にある。いっぽうのウラカンはセオリー通りフロント荷重にしてからステアリングを切り込むことでシャープなハンドリングが楽しめる。この点でもウラカンがオーセンティック、NSXが未来的といえそうだ。




 我々が長く親しんできたスーパースポーツカーの価値観に立脚したウラカンと、これまでになかった価値観を創造しようとするNSX。どちらがいい悪いではなく、乗り手の感性への訴え方に大きな違いがあると感じずにはいられなかった。


 


※本記事は『GENROQ』2019年2月号の記事を再編集・再構成したものです。


 

上質なレザーをあしらったスポーツシートはリクライニングも可能だ。

写真のレッドカラーのセミニアンフルレザーシートはMY19から選択可能となった。

走行モードは「ストラーダ」「スポーツ」「コルサ」の3つのモードから選択できる。

走行シーンに応じて車両特性を変更できる「インテグレーテッド・ダイナミクス・システム」の各モード制御が最適化された。

贅沢なカーボン・コンポジットローターを採用する。制動力、コントロール性ともに極めて高いレベルに達している。

MY19では新たにNSX専用となるコンチネンタル・スポーツコンタクト6を装着した。

ランボルギーニ・ウラカン スパイダー


■ボディスペック


全長(㎜):4459


全幅(㎜):1924


全高(㎜):1180


ホイールベース(㎜):2620


車両重量(㎏):1542(Dry)


■パワートレイン


エンジンタイプ:V型10気筒DOHC


総排気量(㏄):5204


最高出力:449kW(610㎰)/8250rpm


最大トルク:560Nm(57.1㎏m)/6500rpm


■トランスミッション


タイプ: 7速DCT


■シャシー


駆動方式:AWD


サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン


サスペンション リヤ:ダブルウイッシュボーン


■ブレーキ


フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク


■タイヤ&ホイール


フロント:245/30R20


リヤ:305/30R20


■環境性能


燃料消費率:15.1 (ℓ/100㎞:EU複合モード)


■車両本体価格(万円):3270.443
ホンダNSX


■ボディスペック


全長(㎜):4490


全幅(㎜):1940


全高(㎜):1215


ホイールベース(㎜):2630


車両重量(㎏):1800(※)


■パワートレイン


ハイブリッド方式:フルハイブリッドシステム


システム合計出力:427kW(581ps)


システム合計トルク:646Nm(65.9kgm)


エンジンタイプ:V型6気筒DOHCツインターボ


総排気量(㏄):3492


最高出力:373kW(507㎰)/6500〜7500rpm


最大トルク:550Nm(56.1㎏m)/2000〜6000rpm


電気モーター出力:Ⓕ27kW(37㎰)×2 Ⓡ35kW(48㎰)


電気モータートルク:Ⓕ73Nm(7.4㎏m)×2 Ⓡ148Nm(15.1㎏m)


■トランスミッション


タイプ: 9速DCT


■シャシー


駆動方式:AWD


サスペンション フロント:ダブルウイッシュボーン


サスペンション リヤ:ウイッシュボーン


■ブレーキ


フロント&リヤ:ベンチレーテッドディスク


■タイヤ&ホイール


フロント:245/35ZR19


リヤ:305/30ZR20


■環境性能


燃料消費率:12.4(㎞/ℓ:JC08複合モード)


■車両本体価格(万円):2370


※カーボンセラミックブレーキローター装着車は1780㎏
情報提供元: MotorFan
記事名:「 新型ホンダNSXの魅力はスーパースポーツカーの先輩であるランボルギーニ・ウラカンの対極にいるところだ