なお、鉄道、防衛、受変電等の領域で進めているSCiBを活用した蓄電池応用システム事業については、従来どおりTISSで継続していく。
東芝では、優れた安全性と長寿命、低温性能、急速充放電等の特性を兼ね備えたSCiBの製造・販売を2008年3月から行っている。SCiBはその性能を評価され、ハイブリッド車(HEV)や無人搬送車(AGV)、鉄道向け蓄電池システム等、幅広い分野で採用されている。
SCiBの需要は拡大しており、設備投資とアライアンスにより製造能力を拡充している。国内では、現在の製造拠点である柏崎工場に加え、横浜事業所内に新たな製造拠点を新設、海外では、スズキ、デンソーとの合弁によるインドでの工場設立に加え、米国ではジョンソンコントロールズパワーソリューションズ社との協業を開始することで合意している。東芝グループが長年にわたり培ってきた量産オペレーションに関するノウハウ等を最大限に活用し、今後事業を拡大していく。
また、東芝グループが保有する技術・開発リソースを活用し、チタンニオブ系酸化物を負極材に用いた、高エネルギー密度の電池の開発等を加速していく。
加えて、東芝グループの幅広い事業分野を生かし、エネルギー分野など、TISS以外の事業領域におけるSCiBの特性を生かせる成長市場にも注力し、事業機会の拡大を促進し、2030年に4千億円規模の事業にすることを目指す。
東芝は、ビルソリューション事業領域において、昇降機事業、照明事業、空調事業をそれぞれ担う東芝エレベータ、東芝ライテック、東芝キヤリアの株式を吸収分割によりTISSより承継し、同3社を東芝の直接傘下に移管する。ビルソリューション事業は、東芝代表執行役副社長の秋葉慎一郎氏が担当するとともに、「グループ経営統括部」を設置し、同事業を統括する体制とする。これにより、3社の連携を一層強化するとともに、組織階層を削減し意思決定の迅速化を図り、ビルソリューション事業の運営体制を強化する。
なお、TISSは、ビル・施設向け受変電システムおよびIoTソリューション事業について、従来通り3社と連携して同事業に注力していく。
昇降機事業では、グローバル市場が堅調に伸長し、また海外成熟市場および国内では昇降機の老朽化更新の需要の拡大が見込まれており、海外成長市場でのアライアンスの強化、海外成熟市場および国内でのリニューアル事業の強化により、販売を拡大していく。また、他社に先行して、建物全体のBIM(Building Information Modeling)データを活用した利便性の高いクラウドサービスにより昇降機のライフサイクル全体を計画・運用・管理する環境を構築し、新規受注拡大を図るとともに、保守やリニューアルへの展開を目指す。
照明事業では、経営効率の向上とモノづくり力の強化のため、製造拠点の再編を実施するとともに、国内シェア2位の施設照明、国内シェアトップの舞台・スタジオ照明、グローバルシェアトップの自動車用電球や、成長領域であるソケット型LED等、競争優位性のある領域に資源を集中して、事業を強化していく。
空調事業では、環境意識の高まりによって各国の省エネ規制が強化される中、得意とする業務用空調を中心に製品ラインアップを拡充し、米国キヤリア社との連携強化、独自の販売網を持つ中国での事業強化など、グローバル市場での一層の拡販を実現していく。また、中国の開発・製造建屋建設、富士工場の新技術棟建設、インドでの現地生産開始など、積極的な投資により開発・製造能力の拡充を進めている。