2011年にドイツの自動車メーカー5社によって策定された、システム電圧を48Vとする新たな車載電源規格「LV148」。これをハイブリッドに利用するという動きが欧州で始まっている。低電圧ゆえに、その効果は限定的と言われるが……


TEXT◎髙橋一平(TAKAHASHI Ippey )

 近年、48Vのシステム電圧を用いるというハイブリッドシステムが注目を集めている。2018年に発売となったメルセデス・ベンツS450への採用を皮切りに、欧州メーカーを中心に広がりを見せており、これまで静観の構えを示してきた国産メーカーにも変化の兆しがあらわれている。


 48Vハイブリッドのメリットは、導入におけるハードルの低さだ。すでに国産メーカーで広く普及している、高電圧を用いるハイブリッドシステム(以後、本項ではフルハイブリッドと呼ぶ)では、数百Vという電圧を取り扱うための絶縁部品や、漏電を防ぐためのインターロックシステムなどといった、厳重な安全対策が必要不可欠であり、そこには技術的、コスト的に越えるべき要素が少なくない。48Vならばこの部分に対する要求は緩く、極端に言うなら、12V電装に近いかたちで扱うことができる。


 もちろん、これまで国産メーカー勢がフルハイブリッドにこだわってきたことにも、それなりの理由がある。基本的には電気は高圧で用いるほうが効率的だからという説明が一般的だが、48Vを比較対象とするなら、もっとわかりやすい要素が存在する。モーターの最高出力だ。フルハイブリッドでは一般的なもので数10kW、大きなものになると100kW級も珍しくないのだが、48Vハイブリッドに用いられるモーターの最高出力は、大きなものでも20kWに満たない。これは同じ電流量で比較すると、電圧の高いほうが電力(=出力)は大きくなるという、電気においてもっとも基本な性質によるものだ。

ヴァレオによる未来予想:ヴァレオによる、2025年、2030年の全世界におけるパワートレーン分布予想。2030年では、全体の66%になにかしらの電動技術が用いられているが、BEV(純EV)その半数以下にとどまり、それ以外はエンジンに電動技術を付与したハイブリッドとなっている。そしてハイブリッドのなかで一番大きな勢力となっているのが、48Vマイルドハイブリッドだ。欧州では多くのメーカーが、ICEV、HEV、BEVの比率を30:40:30程度になると予測している。

 モーターの中心となるコイルは電気の通り道となる銅線の集まり。そして、その銅線に流すことのできる電流量は、電圧にかかわらず断面積で決まってくる。つまり電流量を増やすためには、太い(=断面積が大きい)銅線が必要となるわけだが、銅線の線径が大きく(=太く)なれば、幾重にも巻き重ねられるコイルも大きくなり、モーターの体格は大きくなってしまう。もちろん、それが許されるほど、現代の自動車のパッケージングに余裕はない。これは48Vでも高電圧のフルハイブリッドでも、どちらにも等しく降りかかってくる条件であり、モーターに許容されるスペースも、そこに流せる電流量にも差はない。電圧の違いがほぼそのままに最高出力の差となっているのはこのためだ。

情報提供元: MotorFan
記事名:「 48Vハイブリッドは、国産車でも導入されるのか? マツダは24Vだが……【2019年自動車業界予想】