REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)、遠藤正賢、日産自動車、ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル
最大トルク640Nm。0-100km/h加速は3.4秒。R35GT-Rより速い新型EVレーシングカー「NISSAN LEAF NISMO RC」を初公開--新型RCのバッテリーとモーター、出力では、レーシングスピードでどのくらいの距離を走れるんですか?
松村 コースの加減速によりますね。富士スピードウェイ本コースのホームストレートでアクセルを踏み続けると、当然エネルギー消費が多くなるので向いていないです。ただ、普通の人が走る分には、速すぎてずっと全開で走るのはなかなか難しいので、かなりの時間を走れるのですが。レーシングドライバーが全開にし続けて20数分間走れるように設計されていますので、1周1分30秒くらいのコースでF3の周回数と同じ程度なら25分ほど走れます。
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ちなみに袖ケ浦フォレストレースウェイでは、R35GT-Rより速いです。いま履いているのはミシュランのパイロットスポーツカップ2ですが、あのタイヤで1分10秒。同じサイズ(235/40ZR18 95Y)のスリックタイヤを履くと1分8秒ですから、コースレコードになります。ドライバーは松田次生ですが、そのくらいのポテンシャルはあります。また2モーターにした関係上ハイギヤにしますので、最高速も220km/hですね。そして0-100km/h加速3.4秒は、スーパーカーに近い領域ですよね。
--松田選手の感想はどうでしたか?
松村 前後駆動力配分50:50のフル加速モードで走らせた時は「これは危ない」とコメントしていました。なぜかというと、速さよりもトルクですね。640Nmのトルクはエンジンで言えば7L級ですから、それがAWDなので、発進加速時は戦闘機が空母からカタパルトで離陸する時のようですね。なぜならゼロ回転で最大トルクが出るのがモーターなので、その分だけ強烈なGです。ですが、タイヤがそんなにトルクを吸収できないんですね。
ガソリン車なら、ちょっとホイールスピンさせるくらいで発進した方が回転が落ちないので、寒い冬ならタイムが出るんですが、EVはトルクがいきなり出るので、ハイグリップタイヤを履かないと不利です。ですからイベントでは、完熟するまではパワーを絞らないと危ないですね。また旋回中にグリップを失うと、アンダーステアになるかオーバーステアになるか分からないので、前後駆動力配分を45:55にして、旋回が楽で充分タイムを出せるようなセッティングにしています。
--今回サブフレームを25%軽量化したとのことですが、具体的な変更点は?
松村 初代はリヤ側がスチールなんですよ。今回はそれをCFRP化して前後全く同じものにして、ダンパーユニットのレイアウトも基本は同じです。ダブルウィッシュボーンのアームのレイアウトは前後で違いますが、プッシュロッドの動かし方などは前後で互換性を持たせています。モーターもリダクションギヤも、前後逆向きにしてギヤやLSDの回転方向を変更すれば、前後どちらにも搭載できます。これであれば将来の可能性としては、万が一壊れたとしても、インバーターは市販品と同じですから、ニスモで交換する際のメンテナンス費用がうんと下がるんですね。
--普通のレーシングカーはレギュレーションに合わせてクルマを作りますが、リーフニスモRCはそれがないので…。
松村 ですからこれはレーシングコンセプトですね。競うためのクルマなら2輪駆動になるでしょうから。元々ガソリン車とはちょっと違いますので、出て反響があると、競うこともあるのかなと。でもそれは鶏と卵ですね。ですからワンメイクレースは一つの解になるでしょう。
バッテリーも、30分弱レースした場合、急速充電すれば1時間くらいで戻って来られますから。今までのバッテリー密度からすると、どんどん重くなってクルマにならなかったのが、だいぶリーズナブルに作れるようになりました。
--充電方式はチャデモですか?
松村 はい、充電システムは市販車と同じですから、家でも充電できます(笑)。サーキットにはまだ急速充電器はありませんが、徐々に増えるでしょう。
--空力に関する変更点は?
松村 ボディが大きくなったのでCd値は増えていますが、リヤウィングの効率が非常に良く、まだ風洞には入れていませんので計算上ですが、L/Dは40%くらい良くなって、フロント側のダウンフォースも54%増えています。
--今回は6台作って、日本に何台か置いておいて、残りを海外で使う予定ですか?
松村 グローバルでいろんな所からぜひにと言われているのですが、細かいことはまだ決まっていません。
--要望があればもっと作れるのですか?
松村 作ろうと思えば作れますよ、難しいことは何もありませんので。