REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)、鈴木慎一(SUZUKI Shin-ichi)、日産自動車、ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル
--すでに昨シーズンのマシンでテストされているそうですが、走らせた感触は?
高星 することがガソリン車とは違いますね。単純に走らせることはさほど難しくないのですが、その中でいろいろな操作があるので、それが難しいですね。
--頭を使わなければ勝てないレース、ということですか?
高星 するべきことを無意識にできるようになるまでが難しいですね。
--バッテリーの温度や残量を計算したり…。
高星 使った残量を言えば残量はエンジニアが計算してくれるので、ドライバーは1周の間にどれだけ使ったかを意識すれば大丈夫ですね。それを守っていれば、温度が上がることは基本的にありませんから。あらゆる操作も全部音で知らせてくれるので、音に対する反応速度を合わせられるか、といった難しさはありますね。
--ガソリン車と比べてどうですか?
高星 単純に比べられないですね。速く走らせなければならないのは一緒ですが、予選ではタイムを出す一方、F3では決勝レースの最後はプッシュしていればよいのですが、フォーミュラEには行きたいけど行けないもどかしさがあります。ですからセルフコントロールが大切になってきますね。自制しなければ単純にゴールできませんから。フォーミュラEのマシンはF3よりも決して速くはないので、そういった意味でのドライビングの難しさについては大丈夫なんですが、問題は操作系ですね。全くの別物と考えた方が良いくらいです。
--フォーミュラEとF3とスーパーGT GT500とで、乗ると自然に頭が切り替わるものですか?
高星 ガソリン車とガソリン車、フォーミュラカーとハコ車は問題ないです。ですが経験のない場合はガソリン車からフォーミュラEにスイッチすることはできないですね。余りにも違いすぎるので。フォーミュラEは電気を、バッテリーの残量を気にするので、全開区間を短くしなければならないんですよ。ですからコーナーを立ち上がった時にいかにアクセル全開にする位置を5m、10m先にして、なおかつタイムを落とさないようにしなければならないので、その考え方が違います。
--それでフラストレーションはたまったりしないんですか?
高星 本当に、自分をコントロールできないと、ストレスしかたまらないですね(笑)。ですから、いかに自分を冷静にさせられるか。頭に血が上ったらずっとイライラするだけですね、楽しくないしゴールもできないしで。
--「ファンブースト」の使いどころも難しそうですね。
高星 使ったらバッテリーの残量がなくなってしまいますからね。全戦市街地コースで狭いので、、オーバーテイクするためにも使いたいのですが、元々ストレートを目一杯加速するわけではなく、かなり早めにアクセルペダルをリリースしなければならなくなるので、抜きにいける余裕ができますね。行くことは簡単だけど、そこから先でどうクルマを制御するかが難しいです。また、フォーミュラEのマシンにはシフトパドルがない代わりにニュートラルや回生ブレーキは手で操作しなければならないので、その難しさもあります。
--日産のマシンのトランスミッションには複数段のギヤが入っているんですか?
高星 いや、少なくとも昨シーズンのルノーのマシンには、ギヤチェンジはないですね。1速です。シフトチェンジできるトランスミッションを使っていたのはシーズン2くらいではないでしょうか?
--リザーブドライバーということですが、全部のレースに帯同するんですか?
高星 いえ、何も決まっていません(編集部注:11月30日時点)。フォーミュラEがどんなレースかを知りたいので、行けるレースは行きたいと思います。スーパーGTやニュル24時間とバッティングしないことが条件にはなりますが。
--リザーブドライバーは、時々セカンドドライバーと交代して乗るのでしょうか?
高星 いえ、2人のドライバーのいずれかに何かあった時に、交代で乗ることになります。ですから私の仕事は何もないほうが、日産としては望ましいことですね。
--でも、個人的には乗りたいでしょう?
高星 乗りたいとは思いますが、誰かが怪我してその代わりに乗るのは望んではいません。ですから今いるドライバーと勝負して、シートを勝ち取っていきたいと思います。
--でも、テストは制約されているんですよね?
高星 12月2日のニスモフェスティバルで乗る機会はあるものの、クルマに対し走行距離で決められており、あまりテストができないようなので、実車に乗る機会は少なそうですね。シミュレーターに乗る機会が多くなりそうです。
--シミュレーターはどこにあるんですか?
高星 フランスのe.damsにあります。ミドルフォーミュラの名門チームで雰囲気もいいので、そういう所にいられるだけでも自分にとってプラスになりますので、この機会を活かしたいと思います。
--日本のチームで日本のドライバーが参戦してほしいと思いますね。日本でも注目度が上がるでしょうし。
高星 日産が日本のメーカーとして初参戦で、それに対し日本のファンがどういう想いでいるかも分かっているので、その期待に応えられるように、まずはスーパーGTで結果を残したいと思っています。