このX線CT装置は、X線を素材に貫通させて検査測定を行うことができるため、ワークの内部構造や欠陥の評価がさらに高精度化される。CTの仕組みは、人体のレントゲン写真と同じく、被検査物にX線を照射し、透過したX線をイメージセンサで受光し、その強度に基づきデジタルデータへ変換を行う。そのため、金属やプラスチック、カーボン等、可視光線を通さず、内部が観測できない材質であっても、内部の測定が可能。たとえば鉄・SUS系の材料であれば15mmの深さまで貫通測定が可能となるため、μ-MIMで製作するようなサイズ部品のほとんどの内部の様子を測定することができる。
さらに今回導入したX線CT検査システムでは、被検査物を回転させることにより、3次元のCTスキャンデータを得ることができる。すなわち、単純な外形の3次元データのみならず、通常は測定不可能な内部の3次元構造をデータ化して評価することが可能となる。したがって任意箇所の断面図の取得や、設計データ(CADデータ)との比較解析、寸法測定など数多くの検査測定を、ワークを破壊せずに測定、評価できるようになった。
例えばμ-MIMにより得られた数ミリ以下の外径の内歯歯車など、他の測定機器では不可能であった形状の測定が可能。 更に歯車形状に対しては新規に開発された歯車評価ソフトとの組み合わせで、規格に沿った等級を出すことも可能だ。
ギア部品はモジュールが小さくなればなるほど、測定評価の難易度が増していく。プローブすら入らない微小のギアにおいては、接触式で測定評価を行うこと自体が不可能になっていくからだ。また、ギアの評価においては実際に機械に組み込んだ際に噛み合わせがどうなっているか、といった点からの評価も重要になる。このような評価を行うためには、遮蔽物や形状に関係なく測定部位を観察する技術が必要で、X線CTスキャンのような装置による測定が重要だ。
他にも破断面からの画像測定では加工による変形が懸念されるような軟らかい材料や微細構造部品にも適しているという。