REPORT●近田 茂(CHIKATA Shigeru)
少し昔話をすると、このクラスの市場は2スト・4ストが入りみだれ、Vツインあり3気筒あり、4気筒まで……。デザインも多彩でそれはもう活気に溢れていた。やがてバイクブームは一旦衰退したが、このところ、ふつふつと人気再燃の兆しが明確になってきているから面白い。背景には各バイクメーカーからの新型車投入が目立って来たことが大きいだろう。もちろんこのクラスの人気要素として高速道路も使えて車検いらずの経済性は侮れない。多くのユーザーにとって負担の少ない賢い選択となり長く愛用しやすい点も重要なチャームポイントになるからだ。
各メーカーの代表的スポーツモデルは根強い人気をキープしてきた「Ninja250」。最新技術満載で贅沢な仕上がりを披露したホンダ「CBR250RR」、リーズナブルなスズキ「GSX250R」、そして今回改めて試乗したヤマハ「YZF-R25」。その他人気は分散傾向にあるがフルフェアリングのスーパースポーツに的を絞って少し考察してみよう。
一見一人乗りと見間違う段付きシートの採用は、かつてのレーサーレプリカを彷彿とさせるが、どれもサーキットで超高性能を競うようなコンセプトではなく、あくまでストリート用であることをわきまえている。搭載エンジンは全て水冷の横置き直列(並列)ツイン。スズキはOHC2バルブだが、他の3車はDOHC4バルブエンジンを搭載。しかも皆ショートストロークタイプでスズキは唯一のロングストロークエンジンだ。
各車の出力とトルクを比較すると大差はないのだが、スズキのデータは控えめ。ただピークパワーの発生回転数に注目して欲しい。DOHCの3車は1万2000rpmを超えるのに対してスズキは8000rpm。最大トルクの発生回転も6500rpmと他車よりも明確に低い。
詳細なメカ解説は割愛するが、スロットルのレスポンスや加速感等、出力特性そのものに大きな違いがある。もっと言うと常用域ではスズキの方が高トルクを発揮するケースもあり、それは手軽さと扱いやすさにも直結する。
一方DOHC勢のエンジンをブン回す楽しみは格別。高回転・高出力を満喫できる小気味良さと、それを使いこなすシーンでエキサイティングな乗り味が存分に楽しめる。これは善し悪しや優劣の話ではなくあくまで基本的なキャラクターに違いがあると言うことなのだ。
上記のエンジンの特性を踏まえた上で、各車のキャラクターをまとめると次のようになる。
●ヤマハ・YZF-R25
・しっかりと発揮される低速トルクと実用的に優れたレスポンスの良さは秀逸。
・普段の扱いやすさとスポーティな操縦をエンジョイできる万能ぶりが魅力的。
●カワサキ・Ninja250
・ 高速域まで伸び感に優れる出力特性はサーキットを走るようなシーンでもエキサイティングな乗り味が楽しめる。
・元気の良いライダーが乗るに相応しい。
●ホンダ・CBR250RR
・エンジンもサスペンションも上質な装備を誇る。
・価格も含めて格上の存在として輝ける魅力がある。
・出力特性はエキサイティングだが柔軟で大人びた印象も。
●スズキ・GSX250R
・エントリーユーザーにもお薦めしたい逞しくも優しい乗り味が魅力的。
・市街地走行や一般的なツーリングに使いやすく実用的な燃費性能面にも秀でている。
自分のニーズに見合ったキャラクターを賢く選択したい。
思えば筆者がバイク雑誌出版の業界入りした頃(1976年)、250スポーツの市場はあまり元気が無かった。でもスズキRG250とカワサキZ250FTという250㏄専用設計の力作2台の登場を機に250スポーツ人気は上昇気流に乗り始め、80年代は過激なまでに賑やかなマーケットに上り詰めた。どのカテゴリーにおいても4社揃い踏みのバトルが展開されて市場を活性化した。緩やかながらも上昇気流に乗り掛けているという印象は当時と似た傾向があると思えるのだ。各社から意欲的なライバルが出現すると俄然注目度が増すことは間違いない。
11月のイタリア・ミラノで開催されたEICMA 2018では早くもヤマハが次期YZF-R3を公表。倒立フロントフォークを新採用しスポーツ寄りにシフトしたキャラクターが注目されたが2019年には新型YZF-R25の国内投入も間違いないだろうと言われている。ここにスズキからGSX-R250が参入すれば4社揃い踏みとなり、この250スポーツ市場はますます目が離せないものとなるだろう。