REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●ゼネラルモーターズ・ジャパン、遠藤正賢
キャデラックXT5クロスオーバー、SRXの後を継ぎ10月28日に日本上陸! キャデラックといえば今も昔も、アメリカ車の頂点に位置する高級車ブランドであると同時に、アメリカン・ドリームの象徴であり続けているが、その様相は21世紀を境に大きく変化を遂げている。
20世紀末より欧州への輸出を本格化させたキャデラックは、2002年デビューの初代CTSより新たなデザイン哲学「アート&サイエンス」を標榜し、各車に極めてシャープかつ前衛的な内外装を与えるとともに、各車とも従来よりコンパクトかつスポーティなパッケージングへと一新。
また開発にあたっては、ドイツ・ニュルブルクリンクでその走りを鍛えるなど、従来の大柄でおおらかなアメリカ車、また本場アメリカでの「年寄りが乗るクルマ」というイメージを根本から覆すものへと生まれ変わった。
筆者が初めて運転したキャデラックは2007年発表の二代目CTSだが、当時その余りに上質かつソリッドな内外装と走りに感動する一方、居住空間まで極めてタイトなうえ、分かりやすくアメリカンテイストを感じ取れるのはストレートに格好良さを追求したインパネとメーターのデザインのみとなったことに、一抹の寂しさを覚えたことを今でも鮮明に覚えている。
そして、2015年の現行CT6本国デビューに先駆け、キャデラックは「Dare Greatly(大胆な挑戦)-その挑戦が、世界を変える」という新たなブランドコンセプトを掲げているが、独自の「アート&サイエンス」デザインに欧州車顔負けの走りといった、初代CTS以降に確立されたキャラクターは、最新のキャデラックにも確実に受け継がれている。昨年10月に日本での販売を開始したばかりという、現時点で最も新しいキャデラック、XT5クロスオーバーの実車に対面した時、その思いは確信に変わった。
エクステリアは、鋭いエッジを多用した「アート&サイエンス」のテイストを踏襲しながら流線型のデザインも織り交ぜられたことで要素が減り、より洗練されたデザインへと進化している。
こうした方向性は、インテリアにおいて一層顕著だ。インパネ中央のスイッチ類は小さく最小限にまとめられ、メーターも3眼から2眼となり、ステアリングもセンターパッドが小型化されたことで、洗練の度合いを大きく増している。
特に、今回試乗した上級グレード「プラチナム」のメイプルシュガー/ジェットブラックアクセント内装は、ベージュの色合いが明るく上品なだけではなく、インパネ正面やピラー、ルーフライニングのスェードと、インパネ天面やシートに用いられたセミアニリンレザーの触感が非常にきめ細かい。このインテリアが欲しいがために、XT5を買うユーザーがいたとしても、何ら不思議には思わないほどだ。それほどまでに、XT5のインテリアには人を圧倒する魅力がある。
| |
インテリアが進化したのはデザインや質感だけではない。従来はデザインの犠牲になる傾向が顕著だった居住性・積載性も大きく改善された。日本仕様のXT5には後席までカバーする「ウルトラビューパノラミック電動サンルーフ」が全車標準装備されるため、後席のヘッドクリアランスこそ身長176cm・座高90cmの筆者が座ると2~4cm程度だが、ニークリアランスは20cm以上の余裕があり、充分にくつろいで過ごすことができる。
【Specifications】
<キャデラックXT5クロスオーバー プラチナム(F-AWD・8AT)>
全長×全幅×全高:4825×1915×1700mm ホイールベース:2860mm 車両重量:1990kg エンジン形式:V型6気筒DOHC 排気量:3649cc ボア×ストローク:95.0×85.8mm 最高出力:231kW(314ps)/6700rpm 最大トルク:368Nm(37.5kgm)/5000rpm 車両価格:754万9200円