REPORT●浜先秀彰(HAMASAKI Hideaki)
1997~98年のカーナビ市場はメディアがCD-ROMからDVDへと変わり、モニターの大画面化が進むなど、各メーカーともにハイグレード化へと向かっている時期だった。そのため価格はDVDナビ本体+7型モニターの組み合わせで23万円前後となり、カーナビは値段の高い一部マニア向けのアイテムになりつつあった。市場を引っ張っていたのはカロッツェリアのサイバーナビだったが、一方でパイオニアは今後カーナビはカーライフに欠かせないアイテムになるのだから、もっと多くの人に向けた商品にならなくてはいけないと考え、ファミリー層を意識した新スタイルのカーナビを開発。「楽に使える」、「楽しいカーライフ」をコンセプトに据え「楽ナビ」と名付けた。
AVIC-500はなんと18万8000円という低価格を達成。そして快適操作を実現するためにボイスコントロール機能や高性能CPU、詳細市街地図など上級シリーズであるサイバーナビ譲りのスペックを多数搭載していた。だが一方で、ボディは当時標準的だった1DINサイズでなく大振りでトランク取り付け用のサイズ。画面も16:9のワイド比率の7インチではなく4:3の標準比率の5.6インチと、トレンドよりも数年遅れたスタイルとしていた。これは「コストを極力下げるが本質の部分はしっかりと押さえる」という考えに基づくもので、見た目よりも実を取る、といった今までのカーナビには見られない潔い割り切りを持っていた。
開発陣の熱い想いがこもった初代楽ナビだったが、残念なことに思うような人気を得ることができなかった。そこで短期間のうちに更なる改良を施し、1年後の1999年にリリースの「AVIC-520」ではリモコンのデザインを大幅に改良。とりあえず押せば操作が始められる「お出かけボタン」を新設したのだ。すると一段と「楽に使える」ようになった楽ナビは大ヒットモデルに! その後、現在に至るまで基本コンセプトを守り続け、多くの人に愛されるブランドへと成長していった。