日立化成の感光性フィルムは、微細回路の形成に必要な銅箔との密着性に優れる点などがグローバル市場で高く評価され、金額ベースで世界トップシェア(2017年度、同社調べ)。同社は感光性フィルムをHCJH、山崎事業所(茨城県日立市)、日立化成工業(中国江蘇省蘇州市、HCSZ)など、世界10拠点*1で製造・加工している。そのうちHCJHは最も生産量が多く、東南アジア各国をはじめ、韓国や台湾などアジアの顧客向けに感光性フィルムを製造・販売している。
顧客から、感光性フィルムが銅箔に密着しているかの確認(細線密着性評価)や、感光性フィルムを用いて形成した回路形状の確認(微細配線形成性評価)、プリント配線板の不良原因分析などを依頼された場合、従来は各種評価装置を有する山崎事業所またはHCSZまで顧客の基板を輸送する必要があり、評価に時間がかかっていた。
*1 10拠点のうち4拠点は感光性フィルムの生産および切断加工拠点、他の6拠点は顧客の要求に応じた幅に感光性フィルムを切断する加工拠点
そこで日立化成は、HCJH内に「技術センタ」を開設し、プリント配線板の回路形成に必要な一連の装置や、回路形成性の確認や回路幅の測定ができる走査電子顕微鏡、感光性フィルムに含まれる物質を測定する赤外分光(IR)測定装置などの各種評価装置を導入した。これにより、顧客の基板を日本や中国の拠点に輸送する手間が省け、プリント配線板の開発期間の短縮や、プリント配線板の回路を形成する工程における歩留まりの改善策のタイムリーな提供が可能になる。
さらに、直描露光機*2やハイブリッドエッチングマシーン*3など感光性フィルムを用いて回路を形成するための最新装置の導入により、次世代のプリント配線板を開発する顧客に対しても、最適な材料の提案など、より幅広いソリューションの提供が可能となる。
名称 Hitachi Chemical (Johor) Sdn. Bhd.
所在地 マレーシア ジョホール州
設立年 1991年
資本金 150百万マレーシアリンギット
事業内容 配線板用感光性フィルム、電気絶縁用ワニスの製造、販売
今後、日立化成はこの「技術センタ」を活用し、東南アジア各国をはじめ、韓国や台湾などアジアの顧客に感光性フィルムのさらなる拡販を進め、グローバルシェア拡大を図る。 また、将来的には顧客に「技術センタ」へ来場してもらい、顧客と日立化成との間で議論しながら製品開発を進め、顧客の課題のさらなる早期解決や新たな技術テーマの創出を目指す。
*2 直描露光機 : フォトマスクを使わず、レーザーで直接回路パターンを描画する露光機。フォトマスクの上から光を当てて回路を形成する方法(図1参照)と比べて、基板の小型化に必要な、より高精細なパターンを描画できる。
*3 ハイブリッドエッチングマシーン : 感光性フィルムで覆われていない銅箔を溶解・除去する(図1、⑤の工程)ために用いる装置。従来のエッチングマシーンに比べて、基板表面の液だまりを減らせるため、微細回路形成に必要な、より均一なエッチングが可能。