TEXT:川島礼二郎(KAWASHIMA Reijiro)
車両の安全基準を定めた「道路運送車両の保安基準」が改正され、2018年6月15日以降の新型車に対して、電柱などの側面衝突の乗員保護基準が設けられた。こうしてクルマそのものの側面衝突に対する安全性が増したものの、チャイルドシートが旧態依然としていては、万一の事故時に子供を守ることはできない。そのためチャイルドシートも進化している。チャイルドシートの新安全基準 "i-Size " では、従来の前突・後突試験に加え、側面衝突試験を導入した、より高い安全性を担保する必要がある。
ご紹介するのは "Joyson Safety Systems Japan" が販売するチャイルドシート「Childguard 1.0」が搭載している独自技術である "ダブルAIRPAD "。チャイルドシートに乗せられた子供は、側面の生存空間が少なく、特に危険性が高い。この側面衝突に対応するために開発された "ダブルAIRPAD" は、子供の側頭部に二重で装備されている。側突時にはPAD内の空気を逃がしながら効果的に衝突エネルギーを吸収することで子供を守る、という仕組みだ。
エアパッドを包んでいるのは、自動車用エアバッグにも採用されている強くて柔らかい織布である66ナイロン織布にシリコンコーティングを施したもの(エアバッグ基布)を使用している。この基布の特徴は、高速展開を可能にする低通気性と、エアバッグの急激な膨張と衝突に耐えられる高い強度だ。平時は、クッションとして子供に快適性を提供する。
また衝突時に縫い目から空気を逃がす機構も白眉だ。上記のエアバッグ基布に、発泡材を内蔵し端部を縫製し、予め膨らませた状態のパッド形状にする。このエアバッグ基布はシリコンコーティングされているので、縫製した縫い目部からしか空気が逃げない。衝撃を受けると内蔵の発泡材が潰れようとするが、縫製部からしか空気が抜けないため、内蔵の発泡材内は急に底付きぜず、徐々に空気が抜けて発泡材が潰れていき、エネルギーを効果的に吸収する。
最後に、この"ダブルAIRPAD"を装備する「Childguard 1.0」についてご紹介しよう。乗せ降ろししやすいローテーション(回転)機能を備えながらも、低重心設計により安全性と安定性を高めることで、快適な乗り心地を提供するとして、好評を得ている。もちろんISOFIX対応であり、ミスユースを防ぐインジケーターを装備している。
さらに、子供の乗せ降ろしでストレスとなるハーネスの着脱操作を簡単にする独自機構も搭載している。子供自身に着用させやすい専用タングと小型軽量バックルを自社開発。片手でピタッとセットできるマグネット内蔵タングと自立させたバックルによりタングの挿入、ロック解除もスムーズにワンタッチで操作できる。
さて、実に誠実に設計されたに違いない「Childguard 1.0」だが、実は旧タカタにより設計・生産されたモデルである。側突基準未導入の当時の日本にあって、タカタが持つ確かな技術を投入した入魂の一台であると言えよう。事業を引き継いだ"Joyson Safety Systems Japan "でもそれを理解しており、現在も販売を継続しているのだ。