ただし、センターオフセット量が7%縮小されたほか、アルミ製ナックルアームの採用により軽量化。さらにL字型ロアアームが用いられ、入力分担の効率化と高剛性化、フリクション低減が図られている。
一方、新開発のCセグメント車用プラットフォーム採用に伴い、全面的に変更された箇所もある。それがリヤサスペンションとボディだ。
リヤサスペンションは、先代のトーションビーム式からマルチリンク式に変更されるとともに、すべてのアームを高剛性サブフレームに取り付ける構造となり、横力を受けた際のトーイン特性が改善された。また、新型ハッチバックに対しタイプRは20インチタイヤの装着に合わせ、すべてのアームとブッシュ類の剛性が高められている。
ボディは、先代FK2型がベース車に対し、応力の集中しやすい骨格のコーナー部を中心に構造用接着剤を用いつつ、サブフレームを含むフロント周りの骨格を全面的に強化していたが、タイプRを含む全モデルが同時開発され、ボディ全体の骨格部材を組み立ててから外板パネルを溶接するインナーフレーム構造が採用された新型FK8型では、構造用接着剤による補強のみ追加。それでも先代よりねじり剛性は約38%高く、約16kg軽く仕上がっている。
各部の寸法も変更されており、全長は170mm、ホイールベースは100mm延長され、全高は25mm下げられる一方、全幅およびフロントトレッドは5mm縮小。だがリヤトレッドは65mmも拡大されており、先代と同等以上の旋回性能を確保しつつ高速域の直進安定性を高めようという狙いが見て取れる。
こうしたディメンション変更が空気抵抗の低減にも効果を発揮したことで、タイプRの伝統ともいえる大型のエアロパーツはよりダウンフォースの増加を狙ったものに。また、アルミ製に変更されたボンネットにはインテークダクトが追加され、後述の10psアップしたエンジンの冷却に配慮したものとなった。
これらの結果、タイヤが路面をよりしなやかに捉えるようになり、頸椎・腰椎とも椎間板ヘルニアが持病となっている筆者が乗ってもその症状を悪化させない乗り心地に進化した。そして旋回速度は、並のスポーツカーを全く寄せ付けず、最早スーパースポーツの領域に足を踏み入れていると言っても過言ではない。
ホンダの「タイプR」が第一義とするのは、あくまでも絶対的な速さ。だとするならばこの先は、ルノー・メガーヌR.S.やフォルクスワーゲン・ゴルフGTIとFFニュル最速の座を争うのではなく、4WD化とともにエンジン性能をさらに高め、スバルWRX STIやフォルクスワーゲン・ゴルフRを直接のライバルとするより他にないだろう。
【Specifications】
<新型FK8型ホンダ・シビックタイプR(FF・6MT)>
全長×全幅×全高:4560×1875×1435mm ホイールベース:2700mm 車両重量:1390kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ターボ 排気量:1995cc ボア×ストローク:86.0×85.9mm 圧縮比:9.8 最高出力:235kW(320ps)/6500rpm 最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2500-4500rpm JC08モード燃費:12.8km/L 車両価格:450万360円
<先代FK2型ホンダ・シビックタイプR(FF・6MT)>
全長×全幅×全高:4390×1880×1460mm ホイールベース:2600mm 車両重量:1380kg エンジン形式:直列4気筒DOHC直噴ターボ 排気量:1995cc ボア×ストローク:86.0×85.9mm 圧縮比:9.8 最高出力:228kW(310ps)/6500rpm 最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2500-4500rpm JC08モード燃費:13.0km/L 車両価格:428万円