モーターファンにて連載されていたコラム「福祉の車窓から」。福祉車両の機能的な進化、携わっている人々の考え、そして共に走り楽しむことの心地よさを伝えるべく、その全編をWEBにて再録します。


※データ等は収録時のものになっています。ご注意ください。(2016.12.26)

 我が家の朝のワンシーン。上の子からの「うんちでたー」というかけ声と、下の子の呼吸が落ち着かずサチュレーション低下によるアラートが同時に聴こえて来る朝。扱いの順番を間違えると大変なことになります。さて、知人から「1回目のお題だがな、ブランキージェットシティの歌詞なら“息の仕方を忘れる”だよ。それはそれとして知らなかったけれど、おまえんとこ、大丈夫か?」などと連絡が……そうなんです。早くも反響があり、媒体の威力というのをまさに実感しております。これも準備期間もなくスタートする介護、しかも24時間というところに要因が。医療・福祉に携わっていただけるスタッフの皆さんにお会いする以外、外界との接触が断たれる傾向にあり、友人・知人であっても、家へと出向いていただく以外はなかなか顔を見られるでもなく、疎遠になりがちというのも特徴です。不義理なり。という介護人の気持ちも代弁していきたい……。


 


 ところでいきなりですが、お金の話です。何ごとも唐突! ここでもそれで行きましょう。お金と言えば、自動車雑誌をお読みになる皆さんですから、やはり気になるのは小耳に挟む、自動車税などの減免(減額、免除)でしょうか。


 


 本音を言うと、医療機関で福祉車両が必要かもという話が出たとき、いの一番に浮かんだのは「あ、これってもしかしてアメ車みたいな大排気量車でも税金気にせず乗り放題? うちも某Aチームみたいな大排気量のバンに乗れたりするの」というもの。まあいろいろとレギュレーションはあるのですが、確かに減免の制度はあります。我が家の娘も障害手帳が出て、等級としても適合することから、役所にて減免の申請……聞いてみると、自動車税は2.5リッター相当の金額まで。アレ? 私の記憶では排気量とかそういうのは関係なく、全額免除。

 あ〜、時代は変わるのねと、思いつつ調べてみると、自治体によって差があることがわかりました。そこで47都道府県について減免の違いを調べてリスト化(別図参照のこと)。一定程度以上(下欄参照)の障害のある方が、自ら運転する自動車、もしくは、その通学、通院、通所、生業のために家族(生計を一にしている方)が運転する自動車で、3ナンバー5ナンバーなどの自家用車についてまとめています。


 


 ざっといって、福祉車両扱いとなる8ナンバーについては基本全額免除です。いきなり車イスが載せられる車両はいらないけれど、ひとまず介護でクルマを使うのよ。というシチュエーションになりつつある親御さんや配偶者の方の介護はじめの皆さんは、リストが参考になるかと思います。大雑把に言って東北地方は、ほぼ全額免除。私の生まれた地域も今でも全額免除でした。このほか2.5リッター以下相当分まで免除で、グリーン税制の重課税分まで負担してくれる自治体と、重課税ではみ出た分は本人負担のところ。さらに2リッター以下までというところ。使用用途の割合によってさらに免税分が減るところなど。これは登録自動車ですから、市町村税となる軽自動車についてはまたレギュレーションが変わってきます。もちろん、自治体によって障害の箇所と等級でも減免の区分が異なることもあります。山梨県、徳島県が来年度から全額から一部免除に変更となるなど、大きくいうと2.0〜2.5リッター程度までの自動車税については免除するという方向で落ち着く課程にあるようです。皆さんの地域はいかがでしたでしょうか。

装具制作中のようす vol.1 PTさん立ち会いのもとにカーシートのベース選び

下の子の装具のひとつであるカーシート(チャイルドシート)。その1度目の仮合わせを装具の制作業者とPT(PHYSICAL THERAPISTO=理学療法士)とともに行いました。下の子は現状では座る姿勢を維持しがたく、首も据わっておらず、かつ仰向けで長時間いられないため、リクライニングができて横向きに座ること(涅槃像的な姿勢や、そこから足を引き上げた姿勢)ができる補助器具が必要です。そのあたりを考慮しつつ、ベースフレームの上に設置する補助クッションなどの形状と個数を、固定するか移動可能なものにするか、そして成長によって移動する固定ベルトの通し方や位置などを含めて検討していきます。ちなみにシートの角度や姿勢は医師がPTに助言をあおぎつつ指示。この後はクッションなどをざっくり作ってもらい2度目の仮合わせを医師/PT立ち会いで行い、再調整。そして本番の制作……すでにココまでで半年以上、「完成時には子供も大きくなっちゃうよ」と思いつつ、「まあ、このゆっくりしたスピードもありかな」と思いはじめている親がいるといったところです。

著者紹介:古川教夫


クルマとバリアフリー研究家。基本は自動車雑誌編集&ライター&DTP/WEBレイアウター。かつてはいわゆる徹夜続きの毎日だったが、現在は娘さんの介護をしながら9割9分の在宅ワーク。『ドレスアップナビ』(https://dressup-navi.net/)のアンカーや、ライフワークであるロータリー関連の執筆活動等を行いながら、介護経験から見る福祉制度と福祉車両の世界をつづる。2017年2月に福祉車輌取扱士の資格を取得。
情報提供元: MotorFan
記事名:「 大排気量のアメ車や欧州車は福祉車両として使えるのか!?【福祉の車窓から 第3回】