……しかし、ひとつだけどうしょうもなくこの国がイヤになってくることがある。許せないことがある。
「あのねぇ、もういい加減、追い越し車線を淡々と走るのヤメにしない?」
とにかく、走行車線が空いているのに追い越し車線を走り続けるクルマが多い! 多すぎる!
筆者はこれまで50ヵ国ほどの道を走っただろうか? 追い越し車線という概念のない北米は別として、日本みたいに追い越し車線を淡々と走り続けるクルマを海外では見たことがない。イギリスやフランスやドイツみたいな自動車先進国だけの話ではない。東欧でもロシアでもアフリカでも中央アジアでも、である。
なぜ日本は、これほどまでに走行車線、追い越し車線の使い分けの意識が低いのだろうか? 自動車業界人ではない知人となんとなくこの話題になったとき「へぇ、走行車線に戻るほうがいいのかぁ。そういう考え方もあるんだね」などと返答されてズッコケそうになった経験がある。
自動車専門誌を出版している弊社の営業担当者ですら「○○(私の先輩でもある某自動車誌編集長の名前)ちゃんってさ、追い越したあとイチイチ走行車線に戻るんだよ。わけわかんねぇよな」などとのたまう始末だ。
断言しよう。追い越しがすんだら走行車線に戻る! これはもう鉄則なのだ。制限速度の100km/hで走っているんだから戻る義務はない、とかそういう話はもうヤメ! まったく別の問題なのだから。制限速度内で走っていたら何をしてもいいんですか? 人を轢いてもいいんですか?
走行車線を走っていて、前方の追い越し車線に隊列ができているのを発見する。でも走行車線は空いているもんだから、そのまま一定速度で走っていると追い抜いてしまう。左側追い越しで違反? いやいや、こちらは制限速度で正しく走行車線を走っていただけだから、「追い越し」ではなく単なる「追い抜き」だ。以前、この状況で白バイに停められたことがあるが、説明したら無罪放免だった。そもそも、白バイが後ろにいたのは気づいていたし。
そうやって追い越し車線のプチ渋滞を追い抜き、その先頭がチンタラ漫然運転車両だったのを見るにつけ、「なぜここまで緊張感がないのか? そしてなぜここまで我が国は漫然運転に寛容なのか?」とやるせなさを感じてしまう。むしろ、これだけ後ろに列ができているのに、それでも追い越し車線を走り続けられる鋼のようなハートには感心すらしてしまったりもするが、まぁ本当のところは「何も考えていない」だけであろう。
だが、こうしたプチ渋滞がひとつ、ふたつと増えることで本格的な大渋滞を引き起こしてしまうことは今さら言うまでもない。
この記事を読んでくださっているみなさんには釈迦に説法であろう。だが、アナタのとなりにいる人は、“追い越し車線淡々ドライバー”である可能性が高い。もう、草の根活動しかない。追い越し車線淡々走行が、いかにスムーズな流れを妨げ、渋滞を引き起こす原因になっているのか説明してあげていただきたい。
今日からみんなで啓蒙活動だ!