臨機応変を実現するために力を注いだのが3列シート。チーフエンジニアである伊藤淳一氏によれば「3列シート車のユーザーを調べてみると、シートアレンジができるにもかかわらず、普段は2列しか使わない方が多く、3列目は特別なとき以外は使っていないことがわかりました。このクルマでは、必要なときに必要なカタチで、2列目・3列目を使っていただけるように、シートバックを倒すだけで誰でも簡単にシート操作ができるようにしてあります」という。
そうなのだ。道を行くミニバンをなんとなく眺めてほしい。3列目まで乗車している人なんてほとんどなく、いいところで2列目までの4名乗車、果ては運転席のみの1名乗車なんていう状況である。しかし、3列目シートを備えいざというときには7人が乗れるというフレーズは魅力にあふれている。しかもこのクルマは小さいのだ。「3列目はエマージェンシー」「子供用」なんてのはこのクルマに対するコンプレインとしてふさわしくない。
全長4180 × 全幅1695 × 全高1620 × 軸距2750mmがブーンルミナス。
全長3640 × 全幅1665 × 全高1535 × 軸距2440mmがブーン。
ううむ……すばらしい数字ではないか。ちなみにルミナスの車重は1170/1190kgと、これまた非常に軽い。パワートレインは1.5ℓに4速ATの組み合わせ、FWDとAWDが用意されていた。
実際のパッケージを眺めてみると、きわめて順当に作られているのがわかる。どのシートポジションも「無理にフットスペースを広く見せている」なんてことはなく、まあ普通に座るとこのへんだよねという配置に収まっていながら、3列目を含めてコリャ狭そうだなんて雰囲気はない(ただし、3列目における2列目下への足入れ性の良し悪しは写真からうかがえない)。強いてあげればセンタートンネルが少々目立ち、これはAWD仕様もそろえていて、プロペラシャフトを通す必要があったからだろう。
3列目の乗降性については2列目シートバックを倒して乗り込むタイプ。リヤドア開口部は935mmを確保し、さらに開度は約70度としたので、乗り降りしやすいとダイハツは訴える。リヤドアがヒンジタイプであるがゆえの軽量設計が、このクラスにはうれしいポイントだ。
2列目と3列目を倒すと広大な荷室面積が現れる。しかもフルフラットである。IKEAでソファを買ってこられるし、引っ越しで冷蔵庫を運ぶこともできそうだ。室内高にも優れているので、パンパンに詰め込むと相当な量になりそう。3列目シートのヘッドレストをホイールハウスに収められるのが心憎い。
運転席周りはクリーンな印象。中央配置のメーター類をはじめとして、コントロール類は車両センターにすべて備わっている。前席左右のウォークスルー性にも意を払ったようだ。
パッソセッテとブーンルミナス、なかなか意欲的なクルマだったと思うのだが……残念ながら2012年2月をもって終了。なのになんで急にこのクルマを取り上げたかというと、自宅への帰途に最近パッソセッテが停まっているのを見かけたから。このクルマなんだっけと思い出し、こんなに小さくて多人数のクルマって最近なくなっちゃったなあとしみじみ感じた次第である。気になる方は探してみてはいかがだろうか。