確かに、10を超える都道府県警が可搬式移動オービスを導入し、一定期間の試験運用の後、本格的な取り締まりをスタートさせていることは、各メディアでの報道や、警察の公式ツイッターなどで告知されているとおりだが、その具体的な運用方法については、肝心なことは一切、ベールに包まれていたと言っても過言じゃない。
特に問題なのが、「反則行為(青切符レベルの速度違反)に対しても、後日呼び出しによる検挙を行うのか?」ということ。現状では、違反ドライバーの写真を撮り、それを証拠として後日、違反者を警察署あるいは警察本部に呼び出し、事情聴取を行って検挙するというのは、過去の最高裁の判例により、非反則行為(赤切符レベルの速度違反)=犯罪に対してのみ許されていたハズだが、このケースではきっちり反則行為に適用されている。
では、警察はついに最高裁の判例を覆し、半ば強引に、オービスによって反則行為まで取り締まろうというつもりなのだろうか。いや、たぶん、そういうわけではないと思われるふしが、実はあるのだ。
というのは、もう1度、この取り締まり方法を見直してみると、固定式オービスがいわゆる無人取締機なのに対して、移動オービスはそばに必ず警察官がいて速度違反を犯したクルマと機器に示された違反速度をしっかり現認しているという違いに気づくはずだ。この「警察官の現認」は裁判でも有力な証拠となる。つまり、警察官が現認していれば、後日、違反者を呼び出して写真を見せ「これはあなたですね。私も見ていました。違反速度は〇〇km/hです」と言うことで、ほとんどの違反者に素直にサインさせることができるというわけだ。
もちろん、撮影した写真を正式な証拠として提示すると「肖像権がどーのこーの」という問題が浮上してくると思われるが、たぶん、写真は状況証拠的な扱いで、あくまでも現認を盾に検挙するという方法をとっていると推測できる。要は、基本は従来のネズミ捕りとなんら変ることなく、現場でサインさせていたものを警察署でサインさせることにした、というだけのことなのだ。
確かに、違反者が無断で写真を撮られたことに対して最高裁の判例を盾に意義を申し立てる可能性はあるが、たぶん、それでも警察は、それを切り抜ける自信があるのだろう。あるいは絶対的な反証もないのに反則行為くらいで裁判を起こす人はいないだろう、と高をくくっているのかも知れない。
すべては推測に過ぎないが、オービスで反則行為を取り締まるという前代未聞のその所業は、愛知県警の独断であるとはとても思えない。もしかしてすべてが警察庁の指示によるものなのでは? となると、全国に広まるのは時間の問題かも知れない。
いずれにしても、この件に関しては警察が「捜査上の秘密」ということでだんまりを決めている以上、我々は行く末を見守っているしかない。
ただし、警察にとってこのやり方は、あながち願ったり叶ったりというわけでは、実はないのだ。
それはまた、次回に!