REPORT●北秀昭(KITA Hideaki) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
パワフルな125ccエンジンを搭載し、ポテンシャルの高い豪華な足周りを備えたモンキー125が登場する! という情報を聞いた時、モンキーカスタム歴20数年の筆者は思わず「う~ん」と唸り、こう思った。
「そんなことしたら、豪快にカスタムする必要がなくなってしまう」と。
後日、東京モーターショーや東京モーターサイクルショーで参考出品された125ccエンジン、前後ディスクブレーキ、倒立フロントフォーク等を装備したモンキー125を見て、それは確信に変わった。
モンキーといえば、筆者のように「カスタムしてなんぼ」というイメージを持っている人も多いはず。また、巷には「モンキー=可愛いフォルムの8インチが最高」という“8インチ支持派”も多数存在する。
「125cc化や足周りの強化など、カスタムして楽しい」「8インチのプリティな外観が魅力」のモンキーなのに…。いきなりパワフルな125ccエンジンに加え、強靭な倒立フォークや前後ディスクブレーキを与えられたモンキー125に、果たして「存在意義」はあるのだろうか?
「イジッてなんぼのモンキーなのに、もしも最初から“全部”揃ってたら、面白くなくなるんじゃない?」と、昔ながらのモンキーカスタマーである筆者は素朴に思ったわけだ。
そんな思いを、先日モンキー未経験者の20代のA君に話した。すると彼は、モンキー125を見て、下記のような感想を述べた。
【エンジン系】
・125ccボア&ストロークアップキット:12万円
・強化クラッチキット:8万円
・φ24ビッグキャブレターキット:3万円
・5速ミッションキット:5万円
・オイルクーラーキット:3万円
・スポーツマフラー:2万円
【足周り系】
・160mmロングスイングアーム:3万円
・ステムキット:3万円
・正立フロントフォーク:2万円
・フロントディスクブレーキキット:5万円
・前後10インチアルミホイール:2万円
・スポーツリヤショック:2万円
合計 50万円
上記はあくまでも概算。最低限のカスタムパーツ代だ。メーター類やハイスロットル、CDIなど細々としたものを含めると、70~80万円になると思われる。カスタムはすべて自分でやったので、工賃は含まれていない。また、これらの価格に車両代金は含まれていない。
なお、今回発売されるモンキー125の価格は
ちなみに、昨年生産終了となったモンキー(50cc)は
モンキーって50ccでもかなりの金額だったのだと改めて痛感。だとしたら、モンキー125ってヤツは、超お買い得なモデルなのかもしれん。
今回は皆さんより一足早く、モンキー125を公道で試乗できる機会を頂いた。4MINIカスタマーという“一部のコアな人”という視点から、最終型のモンキー(50cc)や、筆者所有のゴリラ125との比較を交えたインプレをレポートしよう。
身長173cmの筆者がモンキー125にまたがってみる。シート高は775mm。コンパクトで軽量な「おもちゃ感」「超お手頃感」のあるモンキー50とは違い、モンキー125は、まさに「オートバイにまたがっている」という印象だ。
50ccモンキーのホイールベースはわずか895mm。シート高は660mm。車重は68㎏で、最小回転半径は1.4m。一方、前後に12インチホイールを履くモンキー125 はホイールベースが1150mm。シート高は775mm。車重は107㎏(ABS装着車)。最小回転半径も1.9mに拡大されている。
約30kgの車重差はやはり大きく、バイクを起こした時にも一定量の重量感がある。モンキー50に比べると、体感的にも二回り大きく感じるが、ポジションにも余裕あり。10インチ+正立フロントフォーク+160mmロングスイングアームにロングホイールベース化したゴリラ125と比べても、一回り大きな印象だ。
アイドリングは洗練された、実にスマートなもの。アップマフラーが奏でる排気音は非常に静か。ゴリラ125にある武骨なチューニングエンジンならではの振動やメカノイズもまったくなし。
1速にシフトし、低回転域にてスタート。クラッチミートの感覚はややロングなイメージだが、違和感はまったくなし。回転を上げずに低回転域で2速へシフトアップ。この時すぐに気付くのが、モンキー125のトルクの太さ。レーシング仕様のポート形状に設定した、高性能シリンダーヘッドや高圧縮ピストンを装備したゴリラ125の場合、低回転域ではややシビアなスロットルワークが要求されるが、モンキー125はトルクの太さでその点をクリアしている。
つまりモンキー125はチューニングエンジンにありがちな“神経質さ”が一切ない。バイクビギナーでも扱いやすいようセッティングされているのが容易に体感できる。3速にでもシフトしておけば、街中ではスクーターのように走ってくれるのが大きなポイントだ。
筆者はかつてモンキー用アフターパーツメーカーで有名な、スペシャルパーツ武川製のコンプリート125ccエンジン+PCφ20の小口径キャブレター仕様のモンキーに乗ったことがあるが、モンキー125は、まさにこれと似た走行フィール。具体的には、パワフルなんだけど滑らか。
幹線道路に入り、ミッションを4速にシフトアップ。スロットルを全開にすることなく、法定速度+αのスピードで、周りのクルマの流れに乗った余裕の走りが堪能できる。モンキー125の9.4psのエンジンパワーは追い越しなど、中高速域での加速も申し分ない。
先ほども少し触れたが、全域でのトルクの太さがゴリラ125とは決定的に異なっている。これはボア径φ52.4×ストローク長57.9mmというモンキー125の「ロングストロークエンジン」ならではの特性による違いだろう。ちなみにゴリラ125はボア径φ54×ストローク長54mmのスクエアストローク仕様である。
なおモンキー125のエンジンは、基本的にグロムと共通。なので各社外パーツメーカーからは、今後「モンキー125用専用」として様々なパーツがリリースされると予測(すでにグロム用は181cc化キットや強化クラッチ、クロスミッションなどがラインナップしている)。
パワフルなモンキー125は足周りも充実。ポテンシャルの高い倒立フロントフォークやリヤサスペンションで、直進安定性やコーナリング特性も良好だ。125ccのパワーを受け止める前後のディスクブレーキの制動力もGOOD。試乗したモンキー125には、ブレーキのロック=転倒を抑止してくれるビギナーでも安心のABSを装備しているのがポイント。リーズナブルなABS非装着車も選べるのが嬉しいところだろう。
●維持費 ☆☆☆
原付二種にカテゴライズされる125ccのポイントは、50cc並みに維持費が安いこと。年1回の自動車税は2400円(50ccは2000円)。任意保険は自動車保険に格安で付帯している「ファミリーバイク特約」が利用できる。
●燃料費 ☆☆☆
1リッターあたり71.0km(60km/h定地走行)という低燃費。上記はメーカーカタログの低地燃費値だが、ストップ&ゴーを繰り返す市街地での実走行でも、小排気量4ストロークエンジンならではの燃費の良さが期待できる。
●通勤・通学の便利度 ☆☆☆
モンキーよりも格段に大きな車体とはいえ、他の125ccクラス(特に14インチ以上のホイール径の車両)と比べると取り回しは非常にラク。渋滞時のすり抜けもしやすいのが特徴だ。107kg(ABS搭載車)という車重は、非力な方でも押し歩き可能。
●ツーリング ☆☆
パワフルな125ccエンジン+強靭な足周りの採用により、交通の流れの速い幹線道路などもクルマの流れに乗って走れる。ポジションにも余裕があり、長距離走行も疲れにくいのがポイントだ。個人差にもよるが、ツーリング好きな筆者的には片道300km走行もこなせそう。
●足着き性 ☆☆
モンキー125のシート高は775mm 、50cc時代よりシート高が高いので☆一つ減。ただし、他の125ccクラスと比べると圧倒的に足着きは優れ、筆者の身長は173cmだが、膝にユトリを持ちつつ両足は地面のベッタリの状態。幅広で分厚い、とっても乗り心地の良いシートも好印象。
●積載性 ☆
リヤキャリアが無くなってしまったので星は一つ。サイドカバーの内側に工具箱が納められた収納ボックスを装備。ただし、このスペースはかなり狭い。
かつて50ccだったモンキーは日本ではもちろん、海外でも人気の高かった。ただしその人気はグローバルな人気を誇るスーパーカブとは異なり、まだまだ一部のマニアによるものだ。
モンキー125には、「日本が生み育てたすばらしい二輪文化を、グローバルに拡大したい」というメーカーの想いが込められている。モンキーという1つの文化を継承・拡大するレジャーバイクとして、外観、走り、装備など、すべてにこだわって開発されたホンダが誇るレジャーモデル。それがモンキー125なのだ。
結論から言うと、モンキー50とモンキー125は、まったくの別物である。それは“一部のコアな人”であるモンキーフリークならば、実車を見た瞬間に感じ取ったはずだ。
だからこそ、「もう1つのモンキー」として、そのフォルムに虜になったモンキーフリークも多いに違いない(事実、初期ロットはすべて予約で完売だという)。
モンキーフリークたちが、こぞって予約した(に違いない)モンキー125。8インチホイール採ではなくとも、誰が見たって可愛い。イジらなくても楽しい。でもイジッたらもっと楽しい(はず)。かつてのモンキー同様、様々な可能性を持ったモデル。それがこの新しいモンキー125なのだと私は考える。
通称名 モンキー125
車名・型式 ホンダ・2BJ-JB02
全長×全幅×全高 (mm) 1,710×755×1,030
軸距 (mm) 1,155
最低地上高 (mm) 160
シート高 (mm) 775
車両重量 (kg) 105【107】
乗車定員 (人) 1
最小回転半径 (m) 1.9
エンジン型式・種類 JB02E・空冷 4ストローク OHC 単気筒
総排気量 (cm3) 124
内径×行程 (mm) 52.4×57.9
圧縮比 9.3
最高出力 (kW[PS]/rpm) 6.9[9.4]/7,000
最大トルク (N・m[kgf・m]/rpm) 11[1.1]/5,250
燃料消費率 (km/ℓ) 国土交通省届出値 定地燃費値(km/h) 71.0(60Km/h定地走行テスト値)<1名乗車時>
WMTCモード値(クラス) 67.1(クラス1)<1名乗車時>
燃料供給装置形式 電子式<電子制御燃料噴射装置(PGM-FI)>
始動方式 セルフ式
点火装置形式 フルトランジスタ式バッテリー点火
潤滑方式 圧送飛沫併用式
燃料タンク容量 (ℓ) 5.6
クラッチ形式 湿式多板コイルスプリング式
変速機形式 常時噛合式4段リターン
変速比 1速 2.500/2速 1.550/3速 1.150/4速 0.923
減速比 1次/2次 3.350/2.266
キャスター角(度)/トレール量(mm) 25°00´/82
タイヤ 前 120/80-12 65J/後 130/80-12 69J
ブレーキ形式 前 油圧式ディスク/後 油圧式ディスク
懸架方式 前 テレスコピック式(倒立サス)/後 スイングアーム式
フレーム形式 バックボーン