REPORT●遠藤正賢(ENDO Masakatsu) PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
N-VANの前身にあたる「バモス」「アクティトラック」は軽バン唯一のミッドシップレイアウトがユニークなポイントとしていたが、「N」シリーズの一員であり、新型「N-BOX」をベースとするN-VANは、軽バンとしては数少ないFF(フロントエンジン・フロントドライブ)パッケージを採用している。
だがN-VANは、単にN-BOXの後席を前にずらし商用バンにしただけの安直なモデルではない。助手席側をBピラーレスとし、前後ドアを開けた際の幅1580mm、高さ1230mmもの開口部を実現。バックドア周りもリヤコンビランプを極細に設計しつつ、FFパッケージならではの低床フロアをフル活用し、開口幅1230mm、高さ1200~1300mm、地上高525mmを確保することで、荷物の積み下ろし作業効率を大幅に向上させた。
そしてN-VAN最大の特徴は、後席のみならず助手席にもダイブダウン機構を備えることで、軽自動車最長となる2635mmもの奥行きを持つ完全フラットな荷室スペースを生み出したこと。350kg(一部グレードは300kg)の最大積載量を確保しつつ、380×310×280mmの段ボール箱を最大71個積載可能とした。
このように積載性を革新的なレベルで高めた結果、N-VANはメインターゲットである運送業や電気工事業などのプロユーザーはもちろん、釣りや自転車、バイクを趣味とする個人ユーザーが、普通貨物車に分類される高額な4ナンバーの1BOXバンでなくとも、軽貨物車のN-VANで2m超の長尺物を車内に積んで運べるようになった。
特にホンダのバイクに限れば、CRF125Fやモンキー125、クロスカブ110といった原付二種を余裕で運搬できるうえ、寸法的にはCBR1000RRのような大型ロードスポーツも積めるというから、トランスポーターの購入・維持に苦労していたバイク好きにとってN-VANは、救世主的存在と言っても過言ではない。
既報の通り、ボディタイプはN-BOX譲りの円形に光るフルLEDヘッドライトと2トーンのフルホイールキャップが特徴の「+STYLE FUN」のほか、商用バンらしいベーシックなスタイルの標準仕様、唯一のロールーフとなる「+STYLE COOL」の3種類。
ボディ・シャシーは荷物を載せるリヤ周りと、助手席側がBピラーレスとなるサイドシルを中心に専用設計されている。中でもリヤサスペンションはトーションビームのサイズ・板厚ともにアップし、さらにプログレッシブスプリングを採用。ダンパーは前後とも低フリクションタイプとすることで、積載量を問わず高い直進性と静粛性、快適な乗り心地を実現した。
6速MT車も含む全車に標準装備(レスオプション設定もあり)される、ミリ波レーダーと単眼カメラによる予防安全技術「ホンダセンシング」は、衝突被害軽減ブレーキ、誤発進抑制機能、歩行者事故低減ステアリング、先行車発進お知らせ機能、標識認識機能路外逸脱抑制機能を全車に搭載。
さらに、オートハイビームを「+STYLE FUN」「+STYLE COOL」の全車、ACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(車線維持支援システム)、後方誤発進抑制機能をCVT車の全車に実装する。
N-BOX譲りの快適な走りと安全性、N-BOXを上回る積載性とタフネスを兼ね備えたN-VANの価格は126万7920~179万9280円。バイク好きにとって最高のトランスポーターが今、No.1二輪車メーカーのホンダから誕生した。